壁の花令嬢の最高の結婚

氷 豹人

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第三章

砂糖菓子の夢3※

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 エデュアルトとの経験は、知らなかった世界にどっぷりと浸らせた。
 壁の花としてこの先、異性と触れ合うことがなくても構わない。
 男性の奴隷となり、一生を嫁ぎ先に費やして、良妻賢母の仮面を被る。夫は愛人にかまけ、妻は抗議も出来ずに耐え忍ぶのみ。そして父親そっくりな好色の息子に半ば虐げられて。世の中は何と理不尽だろうかと恨みを募らせながら。
 そんな惨めな想いをするくらいなら、男なんていらない。
 親兄弟の厄介者になろうが、修道院へ行こうが、そちらの方がだいぶとマシ。
 アメリアはそう考えていた。
 今日、このときまでは。
「あ、ああ! 」
 アメリアは堪えきれずに顎を仰け反らせ喘いだ。
 エデュアルトの手は、素肌となった太腿を辿り、秘部へと辿り着く。
 夜会で触れられたときと同じ、いや、それ以上に皮膚がちりちりと燃えた。彼の手はアメリアの官能を呼び覚ますように、緩慢な動きで薄い繁みを撫で回す。じゅくじゅくだったその部分が新たに湿り気を帯びた。
 彼の長く節張った指が探るように蠢く。
「あ、ああ。そこは」
 アメリアは息切れしつつ喉をひくつかせる。
 エデュアルトの指は未だ穢されていない洞の淵をなぞった。
「まだ怖いわ。もっとゆっくり……」
「わかってる。穢すつもりはない」
 言いかけた声を遮るエデュアルトは、硬い表情だ。
 彼の親指はアメリアの陰核をキュッと押し潰した。
「やっ! ああ! 」
 びくり、と跳ね上がる。
 体の芯が痺れて、知り得なかった感情が沸々と込み上げてくる。いやいや、と首を横に振れば、涙が散った。
「エデュアルト。駄目。我慢出来ないわ。早く」
 懇願に対し、エデュアルトは歯を食い縛って顔をしかめる。
「アメリア。俺はお前を綺麗な体でいさせたいんだ」
「どうして? 私はあなたと」
「媚薬のせいでおかしくなっているんだ」
 今のアメリアは、アメリアではない。
 子供の頃から変わらない無邪気な琥珀の瞳をくるくる丸め、エデュアルトの一言一句にいちいち苛立たしげに反発する。それがアメリアだ。
 切なく声を震わせ、色香を含んだ瞬きを繰り返す、大人びた女ではない。
「薬が切れたらきっと後悔する」
 アメリアにかけられた呪いが醒めれば、何故、このような遊び人と関係したのだほうと思い悩むはずだ。
 エデュアルトはそう疑わない。
 アメリアの真意とは、齟齬があった。
「お願い。初めてはあなたがいいの」
 それでもアメリアは懇願する。
 ふわふわした頭の中では、本能が大きく表に出ていた。
「アメリア」
 エデュアルトは辛そうに目を眇める。
 彼の中で、本能と理性が激しくやり合っていた。葛藤の後に、本能は理性を打ち負かした。
「あああ……」
 アメリアは淫らに悶えた。
 エデュアルトが、アメリアの広げた脚の間に頭を埋めた。
 陰核を潰す指はそのままに、亜麻色の髪と同じ色をした薄い和毛にこげを掻き分け、その中心にある薄桃色の花弁を舌先で押し開いた。生温かい息が、湿り気を柔らかく撫でる。
「あ、ああ……」
 アメリアは強烈な快感に、再び喘いだ。
 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が室内に響き渡る。
 アメリアはこれ以上いやらしい声を漏らさないよう、奥歯を噛んで堪えた。
 そうすると、エデュアルトは彼女に声をあげさせようとしているのか、さらに舌先を尖らせて、アメリアが湯浴みのメイドにすら触れさせたことのない深みを味わった。
 円を描くように焦らしながら、確実にアメリアを攻めていく。
 アメリアは啜り泣き、エデュアルトを求めた。
 手を伸ばせば、アメリアの想いを汲み取り、大きな手のひらが被さる。
 ゼイゼイと喘げば、落ち着かせるように首筋を吸われた。
 それなのに、繋がろうとはしない。
 キスもしてくれない。
 およそ恋人と呼べるような行為は避けられている。
 エデュアルトはアメリアを大切に扱ってはくれる。
 アメリアが心から欲しいものは与えずに。 
「あ、ああ! エデュアルト! 駄目……お願い……」
 かつてないほどの恍惚感。
 アメリアは体の奥底から湧き上がる大波に身を委ねた。

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