31 / 85
続編 愛くらい語らせろ
5
しおりを挟む
「おーい。痴話喧嘩は収拾ついたかぁ?」
いきなりドアが開いて、橋本が間延びしたように問いかけてきた。見計らったかのようなタイミング。聞き耳立ててたんじゃねえだろうな、てめえは。有り得る。
っつーか、痴話喧嘩ってどういう意味だよ。
橋本はドアに背中をくっつけ、腕を組み、ニタニタと口元を三日月型に捻じ曲げている。笑い方がエロオヤジそのもの。市局の王子様が台無しだぞ。
「あと五分で引き継ぎやからな」
だから、意味深なニタニタ笑いはやめろ。
「堂島ぁ。鏡見てから来いよ」
うるせえな。ちゃんと顔洗って来てるわ。髭の剃り残しもねえよ。
何故か日浦は俺の前に立ち塞がった。
同じくらいの身長といえど、こいつの方が僅か三センチばかし高い。しかも、肩幅もある。日浦を挟んで、橋本からのわけわからん視線が遮断された。
「はいはい。お邪魔虫は消えますから」
チラリ、と日浦の壁から姿を覗かせ、橋本は相変わらずニタニタ笑いを寄越してきた。そのまま降参のポーズで去って行く。
だから、何なんだよ。
鏡を見ろって?
馬鹿正直に鏡に近づけば、手入れしたばかりの細眉と父親譲りの三白眼が睨み返してきた。キラキラした特救内でびっくりするくらい平凡顔。うん、髭は剃り残しもないし、涎もない。平凡顔でも小綺麗にはしてるぞ。
親指と人差し指で顎を掴んで、角度を変えて鏡の中にて乱れがないか最終確認。うん、服装基準第五条、『服装は清潔に保ち、皺やほつれがあってはならない』には引っ掛からねえな。
ぬっと真後ろに日浦の顔が映る。おい、気配くらい出せよ。
不意打ちで鏡越しに目が合って、咄嗟に顔を背けてしまった。
濃厚なキスの後だとバレバレの、腫れぼったい唇。倍以上に膨らんで、しかも唾液で艶々している。普段凛々しい薄い唇ゆえ、顕著だ。婀娜っぽさが積み重なっている。
「不味いな」
日浦の熱を含んだ吐息が耳朶に吹きかかった。
「あっちゃん、色気あり過ぎ」
どっちが。
「あああああ。抱きたい」
やめろ。仕事中だ。
そもそも一昨日へそ曲げて終電ないのに帰ったのは誰だよ。風呂出て準備万端だった俺を放置してさ。その理由が俺に九割あったとしてもだ。
「ほら、行くぞ」
生まれつきだとかの赤茶けた髪を撫でてやる。三十六歳の男相手に何してんだと脳味噌の半分がいやに冷静だが、もう半分は本能が無意識に手を動かせていた。
だって、仕方ねーじゃん。
大型犬が耳垂れてシュンと俯いてる幻が見えるんだから。
こいつの髪、襟足長いからライオンみたいに野生的だけど、意外にさらさらと指通り良いから、幻が見えたら頭を撫でるって脳内にインプットされてるんだよ。
しかも、このまま絆されて、職場のトイレ、しかも朝の大交替直前に一戦なんて、マジで御免被るからな。
「……ううう。わかったよ」
前言撤回。
どこが大型犬だ。やっぱり、ケダモノだ。
どさくさ紛れに股間を揉むんじゃねえ。
いきなりドアが開いて、橋本が間延びしたように問いかけてきた。見計らったかのようなタイミング。聞き耳立ててたんじゃねえだろうな、てめえは。有り得る。
っつーか、痴話喧嘩ってどういう意味だよ。
橋本はドアに背中をくっつけ、腕を組み、ニタニタと口元を三日月型に捻じ曲げている。笑い方がエロオヤジそのもの。市局の王子様が台無しだぞ。
「あと五分で引き継ぎやからな」
だから、意味深なニタニタ笑いはやめろ。
「堂島ぁ。鏡見てから来いよ」
うるせえな。ちゃんと顔洗って来てるわ。髭の剃り残しもねえよ。
何故か日浦は俺の前に立ち塞がった。
同じくらいの身長といえど、こいつの方が僅か三センチばかし高い。しかも、肩幅もある。日浦を挟んで、橋本からのわけわからん視線が遮断された。
「はいはい。お邪魔虫は消えますから」
チラリ、と日浦の壁から姿を覗かせ、橋本は相変わらずニタニタ笑いを寄越してきた。そのまま降参のポーズで去って行く。
だから、何なんだよ。
鏡を見ろって?
馬鹿正直に鏡に近づけば、手入れしたばかりの細眉と父親譲りの三白眼が睨み返してきた。キラキラした特救内でびっくりするくらい平凡顔。うん、髭は剃り残しもないし、涎もない。平凡顔でも小綺麗にはしてるぞ。
親指と人差し指で顎を掴んで、角度を変えて鏡の中にて乱れがないか最終確認。うん、服装基準第五条、『服装は清潔に保ち、皺やほつれがあってはならない』には引っ掛からねえな。
ぬっと真後ろに日浦の顔が映る。おい、気配くらい出せよ。
不意打ちで鏡越しに目が合って、咄嗟に顔を背けてしまった。
濃厚なキスの後だとバレバレの、腫れぼったい唇。倍以上に膨らんで、しかも唾液で艶々している。普段凛々しい薄い唇ゆえ、顕著だ。婀娜っぽさが積み重なっている。
「不味いな」
日浦の熱を含んだ吐息が耳朶に吹きかかった。
「あっちゃん、色気あり過ぎ」
どっちが。
「あああああ。抱きたい」
やめろ。仕事中だ。
そもそも一昨日へそ曲げて終電ないのに帰ったのは誰だよ。風呂出て準備万端だった俺を放置してさ。その理由が俺に九割あったとしてもだ。
「ほら、行くぞ」
生まれつきだとかの赤茶けた髪を撫でてやる。三十六歳の男相手に何してんだと脳味噌の半分がいやに冷静だが、もう半分は本能が無意識に手を動かせていた。
だって、仕方ねーじゃん。
大型犬が耳垂れてシュンと俯いてる幻が見えるんだから。
こいつの髪、襟足長いからライオンみたいに野生的だけど、意外にさらさらと指通り良いから、幻が見えたら頭を撫でるって脳内にインプットされてるんだよ。
しかも、このまま絆されて、職場のトイレ、しかも朝の大交替直前に一戦なんて、マジで御免被るからな。
「……ううう。わかったよ」
前言撤回。
どこが大型犬だ。やっぱり、ケダモノだ。
どさくさ紛れに股間を揉むんじゃねえ。
11
あなたにおすすめの小説
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる