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続編 愛くらい語らせろ
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俺の周りにいる女は、どいつもこいつも強かなやつばかり。一見すると大人しい可愛らしい、ふわっとした天使なのに。腹の中じゃ、どうやって俺を上手く利用してやろうかと算段している。
見合い終了間際、ミイにスマホを取り上げられて勝手知ったる連絡先を登録された。昔から強引な女だ。
勿論、日浦には内緒だ。
バレたら何されるかわかったもんじゃねえからな。
だからって、無闇に消去するのも良心が痛む。
別れ際のミイの、今にも泣き出しそうな顔が脳にこびりついている。
「また他所ごとか」
真上からの溜め息つきの呆れ声に、俺はハッと意識を戻した。
真正面でまともに視線がぶつかって、これは不味いと慌てて顔を背ける。が、遅かった。
「今更、照れるか?」
「う、うるせえな」
一ミリも表情筋は動いていないはずなのに、何故か日浦には見抜かれる。ホント、こいつには誤魔化しはきかない。
何だかんだとあった見合いが終わって、日浦んちに直行。ひと段落着く間もなく、いきなりベッドに押し倒されて、この問答。スーツくらい脱がせろ。
時計の針は午後六時半。そろそろ飯の支度しなきゃ。いや、出前にするか。それよりシャワー浴びたい。あらゆる意味で汗だくだ。
だから、図体でかいのが圧しかかってくんな。
「な、何だ?」
前触れなく、いきなり両頬を日浦の手で包まれ、鼻先すれすれまで顔面を引き寄せられた。
「昔の女と随分いちゃついてたな」
耳に息を吹きかけるな。ぞわぞわっと背筋を震えが走った。
「い、いちゃつくって何だよ」
「まさか、ヨリ戻そうとか」
「んなわけ、ねえだろ」
カチンときた。
全く信用されてない。
関係を持ってまだ三ヶ月ばかりだが、同じ職場の同僚としては約三年の付き合いだ。建前ばかりじゃ通じない。幾ら鉄仮面と蔑まされようと、喋るのは本音ばかりだ。
それなのに、こいつは……!
だんだん腹が立ってきて、その澄ましたおキレイな顔に張り手の一発でも見舞わないことには収まらない。
本能に素直に従い、日浦の頬めがけて手を振り上げた。
が、俺の手のひらは日浦の頬にヒットはしなかった。
宙空で握り込まれた手は、そのままヒョイと頭上で捻り上げられた。
痛い、痛いから!馬鹿力め。無駄に力が込められて動きを封じられる。
「や、やめろって」
「今頃、初心な反応か?」
上から目線で、ニタリと口端を曲げる憎たらしさ。
「は?誰がお前相手に。ちょっと油断しただけだ」
「俺相手に乱れたりしないって?」
「あ、当たり前だ」
言い返したら、日浦はますます口元をひん曲げ下衆っぽい笑い方をする。
「じゃあ早速、試してみるか」
「は?」
聞き返したことで遅れを取った。
掴まれた手を引かれたかと思ったら、日浦の逞しい胸へと引き寄せられていた。あっ、と出した声は日浦の唇の中へ。
キスなんて何度もしているが、チュッと軽く触れ合うだけのものは初めてだ。甘酸っぱい中学生かよ。
「いつまで強気でいられるかな」
「は?んなもん、ずっとだ」
今度は、遠慮も何もあったもんじゃない濃厚な唇の重なり。熱を含んだ舌先が輪郭をなぞる。そして引き結びを割る、その寸前で、日浦は離れた。
「四ノ宮さんとは、いつ、どれくらい付き合ったの?」
「高校二年んとき。三ヶ月だけ」
またしても唇が重なる。日浦は舌先を尖らせ、俺の口内に無遠慮に侵入してきた。歯列を舐めてから、いつもみたいに舌を絡め合う……と思ったら、あっさりと引いて、唇を離す。追いかけようとした俺の舌は所在なく半開きの口の中に取り残される。
「出会いは?」
「カラオケで、あっちからナンパしてきて」
「で、付き合ったんだ。軽いな」
「は?人のこと言えねえだろうがよ。お前だって散々……んん」
再び唇同士、重なる。
今度のキスは深く、片方の手で後頭部を掴まれ、互いの距離が狭まった。緩慢に動く舌は俺の口内を這い回し、喉奥まで進出しかねない。息が苦しくて一旦離れようと半歩下がれば、拘束されたままの腕を引かれ、体が密着する。
ひとしきり口内の粘膜を舐られ、ようやく解放された。
「体の関係は?」
「何でそこまで答えなきゃならねえんだよ」
「質問してるんだ」
「あったよ!」
やけくそで声を荒げた。
無表情だの感情ゼロだの散々陰口叩かれている俺だって、健全な十代の少年だった時期があるんだ。
「後ろ使うこと教え込んだのも、あの人?」
なんて質問しやがる。
似た者同士、若さ故の探究心は特に性に関しては活発で、俺が扉を開いてしまったのはミイが一因でもある。
「篤司」
適当な返事でお茶を濁すことは許されない。真摯な眼差しは良心を抉る。
「……ああ」
素直に答えたら、脳天に拳骨を落とされた。何で?
「昔の話なんか蒸し返すなよな」
ミイと別れた後も、一時期クセになり、風俗通いになった。
「そうだな」
ようやく拘束から解放された。
俺の手を掴んでいたその手は拳で顎を支えて、何やら考えに耽っている。こいつ、黙ってりゃイイ男に磨きかかるんだけどな。鼻につく甘ったるい声で「あっちゃん」が、何もかも台無しにしているんだよ。
「上書きしなきゃな」
「ひ、日浦?」
何か今、物騒な言葉を聞いた気がする。
見合い終了間際、ミイにスマホを取り上げられて勝手知ったる連絡先を登録された。昔から強引な女だ。
勿論、日浦には内緒だ。
バレたら何されるかわかったもんじゃねえからな。
だからって、無闇に消去するのも良心が痛む。
別れ際のミイの、今にも泣き出しそうな顔が脳にこびりついている。
「また他所ごとか」
真上からの溜め息つきの呆れ声に、俺はハッと意識を戻した。
真正面でまともに視線がぶつかって、これは不味いと慌てて顔を背ける。が、遅かった。
「今更、照れるか?」
「う、うるせえな」
一ミリも表情筋は動いていないはずなのに、何故か日浦には見抜かれる。ホント、こいつには誤魔化しはきかない。
何だかんだとあった見合いが終わって、日浦んちに直行。ひと段落着く間もなく、いきなりベッドに押し倒されて、この問答。スーツくらい脱がせろ。
時計の針は午後六時半。そろそろ飯の支度しなきゃ。いや、出前にするか。それよりシャワー浴びたい。あらゆる意味で汗だくだ。
だから、図体でかいのが圧しかかってくんな。
「な、何だ?」
前触れなく、いきなり両頬を日浦の手で包まれ、鼻先すれすれまで顔面を引き寄せられた。
「昔の女と随分いちゃついてたな」
耳に息を吹きかけるな。ぞわぞわっと背筋を震えが走った。
「い、いちゃつくって何だよ」
「まさか、ヨリ戻そうとか」
「んなわけ、ねえだろ」
カチンときた。
全く信用されてない。
関係を持ってまだ三ヶ月ばかりだが、同じ職場の同僚としては約三年の付き合いだ。建前ばかりじゃ通じない。幾ら鉄仮面と蔑まされようと、喋るのは本音ばかりだ。
それなのに、こいつは……!
だんだん腹が立ってきて、その澄ましたおキレイな顔に張り手の一発でも見舞わないことには収まらない。
本能に素直に従い、日浦の頬めがけて手を振り上げた。
が、俺の手のひらは日浦の頬にヒットはしなかった。
宙空で握り込まれた手は、そのままヒョイと頭上で捻り上げられた。
痛い、痛いから!馬鹿力め。無駄に力が込められて動きを封じられる。
「や、やめろって」
「今頃、初心な反応か?」
上から目線で、ニタリと口端を曲げる憎たらしさ。
「は?誰がお前相手に。ちょっと油断しただけだ」
「俺相手に乱れたりしないって?」
「あ、当たり前だ」
言い返したら、日浦はますます口元をひん曲げ下衆っぽい笑い方をする。
「じゃあ早速、試してみるか」
「は?」
聞き返したことで遅れを取った。
掴まれた手を引かれたかと思ったら、日浦の逞しい胸へと引き寄せられていた。あっ、と出した声は日浦の唇の中へ。
キスなんて何度もしているが、チュッと軽く触れ合うだけのものは初めてだ。甘酸っぱい中学生かよ。
「いつまで強気でいられるかな」
「は?んなもん、ずっとだ」
今度は、遠慮も何もあったもんじゃない濃厚な唇の重なり。熱を含んだ舌先が輪郭をなぞる。そして引き結びを割る、その寸前で、日浦は離れた。
「四ノ宮さんとは、いつ、どれくらい付き合ったの?」
「高校二年んとき。三ヶ月だけ」
またしても唇が重なる。日浦は舌先を尖らせ、俺の口内に無遠慮に侵入してきた。歯列を舐めてから、いつもみたいに舌を絡め合う……と思ったら、あっさりと引いて、唇を離す。追いかけようとした俺の舌は所在なく半開きの口の中に取り残される。
「出会いは?」
「カラオケで、あっちからナンパしてきて」
「で、付き合ったんだ。軽いな」
「は?人のこと言えねえだろうがよ。お前だって散々……んん」
再び唇同士、重なる。
今度のキスは深く、片方の手で後頭部を掴まれ、互いの距離が狭まった。緩慢に動く舌は俺の口内を這い回し、喉奥まで進出しかねない。息が苦しくて一旦離れようと半歩下がれば、拘束されたままの腕を引かれ、体が密着する。
ひとしきり口内の粘膜を舐られ、ようやく解放された。
「体の関係は?」
「何でそこまで答えなきゃならねえんだよ」
「質問してるんだ」
「あったよ!」
やけくそで声を荒げた。
無表情だの感情ゼロだの散々陰口叩かれている俺だって、健全な十代の少年だった時期があるんだ。
「後ろ使うこと教え込んだのも、あの人?」
なんて質問しやがる。
似た者同士、若さ故の探究心は特に性に関しては活発で、俺が扉を開いてしまったのはミイが一因でもある。
「篤司」
適当な返事でお茶を濁すことは許されない。真摯な眼差しは良心を抉る。
「……ああ」
素直に答えたら、脳天に拳骨を落とされた。何で?
「昔の話なんか蒸し返すなよな」
ミイと別れた後も、一時期クセになり、風俗通いになった。
「そうだな」
ようやく拘束から解放された。
俺の手を掴んでいたその手は拳で顎を支えて、何やら考えに耽っている。こいつ、黙ってりゃイイ男に磨きかかるんだけどな。鼻につく甘ったるい声で「あっちゃん」が、何もかも台無しにしているんだよ。
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