【完結】恋愛小説家アリアの大好きな彼

氷 豹人

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果てしなく※

「あ……オジサマ……もう、出るわ……」
 アリアは堪え切れず、呻いた。
 体をくねらせ、限界寸前の膀胱がぱんぱんに膨れ上がり、アリアの尿道口がだんだん開いていく。身動きすれば、間違いなく床は水浸しだ。
「え? もうイクのか? 早くないか? 」
「が、我慢出来ないの。抜いて」
「このままイケよ」
「駄目……お漏らしなんて……」
「えっ! そっちか! 」
 ケイムは素っ頓狂な声を上げる。予想外の訴えに戸惑っているのが、耳元の息遣いで伝わってくる。
 恥ずかしいとか、もう、そういう段階ではない。アリアは、大惨事を避けるのに必死だ。
「待て待て」
「もう……駄目……」
「確か、ベッドの下に」
「ああ……あんまり動かないで……」
「わかった、わかったから。我慢しろよ」
「え……ええ……」
「一旦、抜くか? 」
「だ、駄目……少しでも動いたら……」
「お、おう。わかった」
 動きに細心の注意を払いながら、そろりそろりと手を伸ばしたケイムは、ベッドの下から目的のものを引っ張り出す。簡易の尿器がぬっと現れた。
 さすが貴族御用達だけあって、あらゆる物が揃っている。実際にこれを使う者がいるのかが、甚だ疑問ではあるが。
 アリアの股間に尿器を差し込むと、ケイムは彼女の内部に潜っていた自身を急いで引き抜いた。
 途端に水音が室内に響く。
 陶器を跳ねて、なかなか止まない。
 みるみるうちに、黄金の液体が容器に溜まっていく。
「あああああ! 」
 使用人にすら見せない姿。聞かせない音。たぶん、この先、誰かもわからない夫にすら見せない姿のはずだったのに。
 よりにもよって、十年来の初恋の相手に晒してしまうなんて。
 しかも、これが最後と決めた日に。
「もう会わせる顔がないわ」
 アリアは項垂れる。
 全て吐き出した後、ケイムは黙って部屋の隅にそれを置いた。
 情けなくて、涙が溢れてくる。せっかくのアイシャドウが、涙でぐしゃぐしゃで剥がれてしまった。
 ケイムは指先で剥がれた化粧を脱ぐってやると、極上の笑顔を向けた。
「大丈夫だよ、アリア。俺はむしろ興奮してるから」
「変態っ」
「何だ、その言い草は。せっかく、気を遣ってやったのに」
「人生最悪の日だわ」
 内臓を掻き回された挙句、膀胱を刺激されて、排泄の世話までさせるなんて。これでは、小さい子供と変わらない。
 鼻を啜りながらシュミーズに手を伸ばしたとき。
 真横から軽くペチンと手の甲を叩かれた。
「おい。まだ終わりじゃねえぞ」
 いつになく険しい眼差しのケイム。
 垂れがちな目は今は三角に吊り上がり、深く暗い海色の瞳は爛々と瞬いている。
「俺を放っておく気か? 」
「さ、さっきので終わりじゃ? 」
「お前は小便しただけだろ。俺はまだ済んでない」
「オジサマもお小水を済ませたいの? 」
「違う! 」
 アリアは押し倒され、背中から柔らかい羽毛のクッションに沈み込む。
 覆い被さるケイムの顔に影が落ち、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。
 いつものふざけた彼はいない。
「お前は男の何たるかを知らなさ過ぎる」
 わけもわからず非難されて、アリアは戸惑うしかない。
 それがケイムの怒りを余計に煽ったらしい。
「まだお前をイカせてないしな。俺のプライドを弄ぶな」
 獰猛な獣が犬歯を覗かせる。
 アリアは彼の何たるかをまだ知らない。
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