クトゥルフの雨

海豹ノファン

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クトゥルフの夢

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トラテツが走って行った方向をサキュラは睨んでいる。
彼女もトラテツの元に向かうつもりだろうか?

なら私がするべき事は一つ。

「サキュラ!!」

私はサキュラを呼び止める。

「この白い石を持って行って!」

サキュラは少しの間私の手に持つモトミンという女の子の魔力石を見つめていたがやがて首を横に振った。

「魔力石は貴女が持っていなさい」

でも奈照さんやモトミンは治療、回復スキルは使えるが私達は使えない。

大きな事になる前に保険と言ったら可笑しいけど治療、回復スキルはあった方が戦いに有利なのは奈照さんの時も身を持って知ったから。

「でも、トラテツもサキュラも回復スキルは使えない!なら白い魔力石あった方が助かるでしょ?」

「クトゥルフを馬鹿にしないで」

急に怒気を現すサキュラ。

「え…」

サキュラが突然怒りだし、驚く私。
心臓がトクトク鳴る。
怒らせちゃったかな…。

「ごめんなさい、何かいけない事言ったかな?」

私は少し遠慮気味に聞く。

「火、電気、水、これらのスキルは治療、回復スキルでなくてもそれらを利用して癒せる手立てはあるわ、ただ治療、回復スキルの方が少し効果は高いだけの話」

サキュラは基本無機質な話し方だが不思議と威圧された気持ちになる。

「…まあ良いわ、私は貴女のそう言う所、好きよ」

ん?どう言う所なのかな?

「なんでもよ」

サキュラはそう言うと踵を返しトラテツの後を追いかけて行った。

…私も出来るならトラテツとサキュラを助けたい所だけど私は先にクトゥルフブレイクリーなる力を得に行かなければならない。

トラテツ、サキュラ、どうか無事でいて!

私は真剣に祈りながらサキュラの言ってた更に続く道を走って行った。

ずっとずっとずっと奥へ突き進んで行く。
しばらく薄暗い地下通路が続いていたがその時白い魔力石が語りかけていた。

『気にせんで良いよ、うるみん』

モトミンの声だ。
私はモトミンの魔力石を優しく撫で、「ありがとね…」と囁いた。

っとその時の事、『うるみん、待ち伏せだよ!』
とモトミンの慌てて叫ぶ声が。

「え…キャアッ!」

ドオン!!

赤い光が飛んで来たと思うとそれは私に直撃してきた。

「海溝潤実、ここから先は通さん!」

私の前に紫色のローブを纏った男が現れた。
男?背は小さく140センチほどしか無い。
しかし声は男だ。

しかし彼からは小さな背丈とは裏腹に黒くて危険なオーラが流れていた。

「俺は黒魔道士アンドレ、江戸華喧華様から遣わされた魔道士よ!」

『うるみん!大丈夫?』

モトミンはアンドレという魔道士から負わされた火傷を治療する。

「ありがとう、モトミン…」

私は立ち上がる。

「貴様…今の光は白魔道士の魔法!グヌヌ、俺は白魔道士が大嫌いなんだ!俺の黒魔法でチリヂリにしてくれる!!」

アンドレは怒号をあげて手と手の間に赤色の光を発する。

「食らえ!フレアー!!」

赤い玉は激しい火炎放射となって私に襲いかかる。

「ウォーターバリアからのっメイルストローム!!」

私はフレアーを防ぎ、メイルストロームをアンドレに放った。

「…!!瞬間移動《ヘイスト》!」

アンドレは瞬間移動の魔術を自らにかけ、避ける。

「槍百烈突き!!」

咄嗟にウォーターバリアを解除する、何故ならその方が身動きしやすいし動かない相手なら良いが素早く動く相手だとメイルストローム放つにも標準が定まらないからだ。

なら接近戦に持ち込んだほうが有効と言うもの。
しかし私の判断は甘かった!

「バインド!!」

アンドレは捕縛の魔術を私に放った。

「か、体が!」

私は槍を構えたまま動けなくなった。

「ククク、これで貴様は動けまい!!」

アンドレは私から槍を奪う。
そしてアンドレは念力のように手を私に向かい広げて、薄いパープル色の気を私に流し込む。

「か、体が勝手に…?」

すると私は手足をこれでもかと言うほど広げられ、そのまま壁に打ち付けられる。

グキグキッ!

「うぎっ!??」

手ならまだしも足を普段そこまで広げない感じに広げられたので苦痛が私を襲う。

手足を広げられて壁に打ち付けられたまま身動きが取れなくなった。

アンドレは槍を持って私に詰め寄る。

「グクク…お前は俺に無い白魔法を俺の前で見せびらかした…その罪は重いぞ!」

アンドレに脅迫される。

「ひっ!」

その瞬間、私はアンドレに隠された素顔を見た。
彼はなんとゴブリン族だった。
緑色の肌、ギョロリとした目、口は裂けて鼻が大きい。

ゴブリンとは小レベルのモンスターで大方初心者のクトゥルフも倒せる弱さだがやる事はエゲツなく、学習能力も意外と高い。

よりタチが悪いのは人間やエルフの女性をさらっては飼い慣らしてしまうところだ。

「安心しろ、お前を俺のモノにする気は無い」

喜んで良いのかはわからないが私が連れ込まれて何かされるリスクは回避出来た?

「しかしお前は俺と敵対する白魔法の使い手だ!じっくりとなぶり殺しにしてやる」

「わ、私は白魔道士じゃありません!」

今の回復、治療魔法はモトミンのもので私のモノじゃない!

その時、『やめなさいっ!』と声がした。

「ね、姉ちゃん?」

アンドレはたじろぎだす。
その時私にかかっていた黒魔術は解放されて自由になった。

宙を浮いていたので私はドスンと尻餅をつく。

「生きていたのか、姉ちゃん?」

その時私の前にモトミンが淡い光をたたえてアンドレの前に現れだした。

『アンドレ、こんな醜い姿になって…どうしたの?』

モトミンはアンドレを懐かしむように語りだす。
一体どうなってるのこれ?

「俺はお姉ちゃんが死んだものだと思ってた、それから俺はお姉ちゃんを殺した奴を倒す為に黒魔法を用いた」

アンドレは拳を強く握りしめ、語る。

「モトミン、どうなってるの?」
「ちょっと黙っててね」

今はこの子達のやり取りを黙って聞いた方が良さそうだ。

『黒魔法を使っては駄目よ、使ったら自分の身を滅ぼすわ』

「薄々は感じていたよ、でも殺したアイツらは素手で向かったって勝てそうな相手じゃ無かった」

『それから江戸華喧華に拾われたのね…』

モトミンは優しくも悲しい瞳をアンドレに向け、語る。

それでちょっとモトミンについて疑問を一つ…。
何故モトミン私の前では関西弁なのにアンドレと言う人の前では標準語なのか?

KEIさんは気がついてたかな?
今は彼女らの様子を見守ろう。

『約束して、もう黒魔法なんか使わないと…そして江戸華喧華から足を洗うと』

モトミンは小指をアンドレに差し出す。

「………」

アンドレは視線を逸らし俯いた。

「もう手遅れだよ、江戸華喧華から足を洗ったら確実に殺されてしまう…それに黒魔法に染まってしまってやめられなくなってるんだ」

なんと言う事だろう、この子は江戸華喧華から離れられなくなってる上に黒魔法に染まっていると言うではないか!

『手遅れでは、ない!』

そんな時また男の人の声がした。

『ガニメルさん!』

モトミンの表情が明るくなる。

「ガニメルさん!?」

私はモトミンが顔を向けた方向に同じく顔を向けた。

そこには水色の髪の見惚れてしまう程の美しい青年がいた。

「ガニメルさんっ、サキュラが慕っていた…」

ガニメルは私の小声に頷く。
ガニメルはそんな私を無視してアンドレの小さめの肩に手を置き、諭す。

『君はまだ若いんだ、やり直しは利く、海溝潤実、この子にお姉さんの魔力石を渡して貰って構わないか?』

ガニメルは私に問いかける。

「はい、アンドレさん…」

私もこの子に何とかしてあげたいと思っていたし断る理由なんてない。

江戸華さんが発言力強くて権力有るのは知ってるけどこうやって罪のない子を縛るのは何か違うと思う。

私がもう少し強かったら…でも私は弱いから何も出来ない。

ならどんな形であれ利用されてる子は手助けしないとと思う。

私はアンドレにモトミンの魔力石を渡した。

「ありがとう、それとごめんねお姉ちゃん…」

アンドレは気まずそうにしながら礼を述べた。

「ううん…仕方が無いよ、でもこれからお姉ちゃんとずっと一緒だね!」

私はアンドレに微笑みかけ頭を撫でた。

『うるみんごめんね、私が関西弁になってたのはキャラを隠す為なの、そうしたら初対面の子には関西弁になる癖がついちゃって…』

あぁ関西弁になってたのは照れ隠しのサインだったのか。

「初対面だと緊張しちゃうのは仕方がないね、私は話すら出来ないから…」

『海溝潤実、クトゥルフブレイクリーを体得出来るのは君だけだ!ゼウスの像に向かいなさい』

ガニメルが私に諭す。

「ありがとうございますガニメルさん!モトミン、アンドレさん、ずっと仲良くね!」

「はいっ!」

『頑張ってきてね!』

私は姉弟と分かれてゼウスの像へと走った。

トラテツSIDEーーー

わいは強烈などす黒い波長を感じた。
臭いとはちゃうけんど動物は鼻の他にも感覚は鋭いんじょ。あれは部屋の入り口から感じたけんわいはその通路を走んりょんじょ。しばらく突き進んで行ったらその波長を放っとる奴がおった。

体は太っとって人相の悪いおばはん…やっぱりじゃ!誰か言うたらクト雨主人公であり悪役の江戸華喧華じゃ!

わいはそいつに不意打ちを仕掛けようとライジングボルトを放った。

「どりゃーライジングボルト!!!」

バリバリバリ!!わいは身体中に電流を放ちそこから出来た稲妻を喧華にぶつける。

トバアアアアアアアァーーーーン!!!
わいの鋭い電撃は効いたはず…なんやて!?

喧華はわいの電撃を片手で受け止めた。
その直後、真横から何かが飛んできた…え?

と思った刹那衝撃が走ってわいは弾き飛ばされる。
大地に二回叩きつけられ、わいは痛みで気を失いそうになる。

喧華はわいを睨みつける。

「あんたはあの時のガキね…そこを通して頂戴!」

喧華は身体中からユラユラと紫色の炎が見える程の殺気を放ち、拳を鳴らす。

「何しに来たんな!!」

わいは喧華を前に恐怖心を殺し、身体中から電撃を纏ったような闘気を放ちながら構えをとる。

江戸華喧華SIDEーーー

私の前に生意気そうな小童が不意打ちをしてきたが私はそいつを逆に蹴り飛ばした。

この小童…あの時のガキね。トラテツと言ったかしら?13歳くらいの男の子…顔は好みなんだけど性格が気に入らない、生意気そうだし。

猫か虎みたいな尻尾、ちょっと小麦色の肌、虎柄の髪の毛、容姿はそんなところだ。トラテツはシャーと唸りながら私を睨み、体に電流を纏っている。しかしそいつは私の実力には到底及ばない。弱い癖に刃向かうものは私のインスマスで屠ってやるわ。
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