クトゥルフの雨

海豹ノファン

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ひとりになっても

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アテナSIDEーーー

私は見落としていた…私とデジェウスの徹底的な違いを!

私は先程まで間違いなくデジェウスを押していた。
しかしデジェウスは策に出たのか泣き落としに出る。

私は涙は通じないと放ったが部下達が鬼気迫った表情で駆けつけ、なんとデジェウスを庇い私を捕らえてしまう。

「これが儂とお前との徹底的な違いだ!儂には人脈と言う武器がある!人脈があれば実力が無くとも勝利を手にする事が可能なのだ!!」

デジェウスは勝ち誇った様子に笑いを上げる。
反して私は悔恨に駆られ、デジェウスとの人脈の差を思い知らされる。

部下達はデジェウスを守るように体勢が固められ、私は部下達に取り押さえられた状態。

「正義のデジェウス様を侮辱した罪は重いぞ!女、覚悟しろ!!」

デジェウスの兵士達が私を責めだす。
その様子をデジェウスは部下に勧められたワインを嗜み部下から差し出された玉座に座り責められる私を見て愉しむ。

どんなに優しくても、強くても人脈を得るのには経験と知恵が物を言う。

私は優しさは人一倍だったが嫌われ者だったが故に人脈を作る事は困難を極めた。

それと違いデジェウス、我が兄は心が歪んだ反面持て囃された事実は壮年になっても失われず、皇帝となるまでに神がかった人脈を武器に、信頼を得てきた。

私の強さ、優しさも人脈の前では無意味だったのだ。

サキュラSIDEーーー

私はカナとバアルの書斎に向かったが思わぬインスマスの大群に出くわす。

「どうやらボクも囮にならなきゃいけなくなったね!サキュラ!後は頼んだよ!!」

カナは敵陣に突っ込んで行った。

私は一人になってしまった…。
私一人で何が出来ると言うの…?

私の中に心の迷いが襲ってきた。
心の迷いと言う魔物に襲われ鋭い牙に噛み砕かれかけたのをある者が助けに来てくれる。

「ガニメル兄さん!!」

私を救ったのは私を生み、育てた私の最愛の人…。
私の過ちで命を落とす事になるが私をずっと思ってくれてた人…しかしそのガニメル兄さんはまた別の姿に変える。

変えると言うより、私はガニメルと言う幻を見ていたようだ、その正体は私が最も馬鹿にしてきた存在であり、そして最も信頼した強敵《とも》だった。

「海溝潤実!!」

私を思わぬところで助けてくれたのは海溝潤実。

「サキュラ!心の迷いに負けないで!サキュラなら一人でも打ち勝てる!だって私がついているんだから!!」

今の潤実はまさに私の姉と呼べた。
だって、心の迷いと言う魔物を私の代わりに戦ってくれているのだから!

「うん…負けないよ…お姉ちゃん!」

私は海溝潤実を助けたら改めてお姉ちゃんと呼ぼうと誓い、孤独と戦いながら書斎へと足を進めた。

中に入ると巨大な本がページが開かれた状態で宙に浮いていて、黒いペンが踊るように舞っていた。

舞っているのでは無い…書かれているのだ!

紙にはルルイエ語でガニメルの生まれ変わり、海溝潤実のその後辿る運命が描かれているのと、地球に起こる、起こそうとしている出来事が巨大な本とは裏腹に小さな文字でビッシリと描かれていた。

これらの本を一から書き直さなければならないと思うと気が遠くなりそうだ。

しかし私達を守る為に散っていった仲間達や海溝潤実の為にも私は逃げる訳に行かない!

「ペン…こんな大変な作業して辛く無い?たまには息抜きしましょう?」

私はドレスを脱いでペンを誘惑するように踊った。
するとペンが私の魔力に吸い込まれるように私に寄ってくる。

良い子良い子…私はそのペンに遊ばれ、逆に遊んでやった。

ペンは気力を吸い取られ、実質タダのペンとなる。

私は早速それを右手に持ち、運命を書き換える作業に出た。
最悪の出来事を二本線で引き、書き換える。
見落としてはならない。

誤字脱字の多いノファンには勤まらない大作業だ。

ウトウトと眠りこけそうになる…いけないいけない!眠ってはそれだけここを嗅ぎつけられ、私が捕らえられ、海溝潤実のように船の生贄に捧げられるリスクが高くなる。

これは時間と、自分との戦いだ!

ーーー

「か…書き上が…った…」

私は修正、書き直し、修正、書き直しを莫大なページをめくりながら書き続け、体力を大幅に削がれ、仰向けに冷たい床に伏した。

手からペンがこぼれ、そのペンは床に吸い込まれるように消える。

全て書き終えたかはわからない、まだ改善すべき文行はあるはずだ…しかし何事も五分五分が良い…何もかも完璧を求めると疲弊、矛盾が起こる。

完璧と言うもの自体あり得ないものだ。
偉大な人物も何かしら欠点があり、苦悩もある。

一生を幸せに過ごせる人なんていない。

だから不完全でも、最悪の出来事が免れればそれで良い。

しかし疲れた…私はインスマス達に捕まるだろう。
でも潤実お姉ちゃんは助かるように書いておいたからね…。

私はこのまま目を瞑り、全てを覚悟するように身体を地に預けた。

やがて本のページがひとりでに破かれ、一ページ一ページの紙に魂が宿ったかの如く紙が空を舞う。

パラパラ、パラパラと紙達は鳴き声を轟かせながら書き終えて疲れきった私を労うかのように。

瞬間、私の体は白く光りだし、書斎から何処かにテレポートされた。

バンッ!!

その後すぐに大勢のインスマス達が殺気立った表情で扉を乱暴に開ける。書斎の中には誰もおらず、そこには大量の巨大な紙きれが床の上に散乱されていた。

海溝潤実SIDEーーー

一体どれだけ時間が過ぎたかわからない…。
私は手足を拘束されて吸入針が刺されたまま?

いいや違う、私は吸入針を外され、拘束された状態からは解放された。
解放されたのだけど…多くのインスマス達にこき使われている。

デジェウスの許しが出て多くのインスマス達が私のあられの無い姿に理性を失い、私を発散の対象に狙いを定めたのだ。

「手離してどうすんだボケ!!」

「襲われたってどうせ誘惑してたんだろ?」

飛び交う罵詈雑言は矢継ぎ早に私に降り注がれる。

「奉仕しろよまだ終わって無いぞ!!」

私は手足は解放されたがその身は延々と拘束されたままだった。

「ゴホ…許して…失敗しないから…」

「許して欲しかったら手離すんじゃねえ!」

乱暴な態度で私を襲い続けるカメレオンのインスマス。
上の者にはやたらと媚びる、私の一番嫌いなタイプだ。

「カメレオンやるなあ♪」

他のインスマス達も私が襲われ続けるのを愉悦の眼差しで見守り、満足した者は次々と私に砲弾を撃ち込む。

私の地獄は続いていた…。

でも私は負けない…ドッシュ君も、カナちゃんも、サキュラも頑張っているんだから…私が挫ける訳にいかない!
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