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第一章
(あらゆる意味で)出会い⑤
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私は黙って布里谷くんを見つめ、布里谷くんもじっと私を見ていた。
おずおずと口を開いたのは私からだった。
「……あのう。ひょっとしてここ数日食べてなかったりする?」
「……実は」
力なく項垂れる布里谷くんはお風呂に入れられた大型犬みたいで思わず笑みが漏れる。
私は誤魔化すように咳払いして元の、幽霊話の確認をすることにした。
「んんっ! ……そっかそっか。何か色々怪しい話しちゃったけど、いい?」
「……怪しい話?」
「あーほら、幽霊とかうんぬん」
すると何故か布里谷くんは不思議そうな顔をした。
私が布里谷くんを見上げていると、布里谷くんはうーんと唸ったあと、数えるように言う。
「別に壺とか、水とかブレスレットとか、お札とか。そういう類のモノとか、売りつけられもしてませんし……あ。ひょっとして今からです?」
「え!? い、いやそんなことしないよ?」
私がぶんぶん手を振ると、布里谷くんもそうですよね、と言って頷く。
「じゃあ別に怪しくはないかと」
「……信、じてくれるの?」
「嘘を言ってるようには見えませんでしたけど……」
(……何か、すっごく真っすぐだなぁ……布里谷くん)
色々大変な目に遭ってそうなのに、それでも真っすぐに生きてる布里谷くんは何だか眩しく見えた。
私はというと、幽霊とかは視えるけど平々凡々で、人並みな人生を送って来たと思う。
毎日毎日、会社と自宅を行ったりきたりの繰り返し。
社畜じゃないけど土日出勤とか残業があって労働環境はあんまり良くない、プチブラックな会社で事務員をしているだけ。
晩酌以外の趣味はティーンズラブの小説を読むことくらいで、給料はそれなりだから貯金はあるけど……本当にそれだけだ。
(うーん。眩しい。幸せになってほしいものですなー)
一人で勝手に布里谷くんの幸せを願う。
でもまあ、取り敢えず今はご飯だ。
布里谷くんのお腹をいっぱいにしよう。私が作るわけじゃないけど!
「ううん。嘘じゃないよ。入ろっか」
「はい。ゴチになります」
「ふふっ。いいよ!」
(今日の晩酌、灯龍でよかった~)
居酒屋『灯龍』の店長は和風から洋食、イタリアンまで作れる。
かなり遅くまでやってることもあって、私も灯龍に寄ることが多い。
しかも今日あるもので、というお任せも出来るという夢みたいなお店なのだ。
晩酌が趣味の私にとって、色んなものが食べられる灯龍の存在はかなり有難かった。
「たくさん食べてってね。店長のご飯、おいしいから!」
「いやそれは……流石に悪いんで。オレ、よく食べますし」
「ええ? そんなに食べるの?」
「はい。なんで、自炊は必至でした」
そう言う布里谷くんの表情は真剣そのものだった。
今度こそ私は声を上げて笑ってしまった。
おずおずと口を開いたのは私からだった。
「……あのう。ひょっとしてここ数日食べてなかったりする?」
「……実は」
力なく項垂れる布里谷くんはお風呂に入れられた大型犬みたいで思わず笑みが漏れる。
私は誤魔化すように咳払いして元の、幽霊話の確認をすることにした。
「んんっ! ……そっかそっか。何か色々怪しい話しちゃったけど、いい?」
「……怪しい話?」
「あーほら、幽霊とかうんぬん」
すると何故か布里谷くんは不思議そうな顔をした。
私が布里谷くんを見上げていると、布里谷くんはうーんと唸ったあと、数えるように言う。
「別に壺とか、水とかブレスレットとか、お札とか。そういう類のモノとか、売りつけられもしてませんし……あ。ひょっとして今からです?」
「え!? い、いやそんなことしないよ?」
私がぶんぶん手を振ると、布里谷くんもそうですよね、と言って頷く。
「じゃあ別に怪しくはないかと」
「……信、じてくれるの?」
「嘘を言ってるようには見えませんでしたけど……」
(……何か、すっごく真っすぐだなぁ……布里谷くん)
色々大変な目に遭ってそうなのに、それでも真っすぐに生きてる布里谷くんは何だか眩しく見えた。
私はというと、幽霊とかは視えるけど平々凡々で、人並みな人生を送って来たと思う。
毎日毎日、会社と自宅を行ったりきたりの繰り返し。
社畜じゃないけど土日出勤とか残業があって労働環境はあんまり良くない、プチブラックな会社で事務員をしているだけ。
晩酌以外の趣味はティーンズラブの小説を読むことくらいで、給料はそれなりだから貯金はあるけど……本当にそれだけだ。
(うーん。眩しい。幸せになってほしいものですなー)
一人で勝手に布里谷くんの幸せを願う。
でもまあ、取り敢えず今はご飯だ。
布里谷くんのお腹をいっぱいにしよう。私が作るわけじゃないけど!
「ううん。嘘じゃないよ。入ろっか」
「はい。ゴチになります」
「ふふっ。いいよ!」
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かなり遅くまでやってることもあって、私も灯龍に寄ることが多い。
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「いやそれは……流石に悪いんで。オレ、よく食べますし」
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今度こそ私は声を上げて笑ってしまった。
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