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幾島真司(1)
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撲殺、毒殺、扼殺、圧殺、轢殺、銃殺、暗殺。
実際色々あるわけだけれども、やっぱり絞殺が一番かな。
二番は刺殺で、三番は殴殺。
銃殺は一番ないな。瞬殺だ。一瞬で事が終わってしまうっていうのは味気がなさすぎる。
似たような理由で暗殺も嫌だ。気付かないうちっていうのは最悪だ。
撲殺やら毒殺やらも、ない。道具を使われているっていうのが気に食わない。どうせなら直に手を下してもらいたいし。
そういう意味では他殺もない。他人に殺人を代行されての行為なんて以ての外だ。
でも、刺殺だけは別だ。刺殺だけは、例外的に二番目にランクインしている。
何故だろう。
何故かはわからない。
多分、他者を殺害するという行為の中では最もポピュラーな方法だからだろう。
だから、刺殺は二番目にあり、なのだろう。
殴殺が刺殺に劣っているのは、やはり他の二つの方法よりも体力的に疲れるからだろう。
いや、そもそも行為というのは疲れるものだろうけれど(経験がないからわからない)、それにしても、それにしてもだ。
逆に、そこまでの激しい運動を以てしての行為に及べるのであれば、それはより一層の深いものを、お互いの中で通じ合わせることが出来たという証に他ならないし、ただの単純な願ったり叶ったりでもあるわけで、だからこその、三番手なのだ。
願いが叶えば、想いが届けば、一番手にも匹敵しうるだろう。
その一番手、絞殺。
これは文句なしに一番だ。
理由なんてない。
ただ、なんとなく。
一番気持ちよさそうだから。
それだけ。
「幾島! 何ボーっとしてる!」
突如、数学教師・小林の怒声が思考を遮った。
「す、すみません……」
慌てて立ち上がる。
「全く、受験まであと半年切ってるんだ。少しは気を引き締めろよ。」
小林は再び黒板に向かい、クラス中が笑いに包まれる。
でも、それでも。席に座れば、クラスメートの笑い声も小林教諭の説明口調も全てが掻き消え、僕の周囲は閉ざされる。
誰も僕の感情はわからない。
誰も僕の話を聞かない。
なら。
僕は誰の感情も気に留めないし、誰の話も聞き留めない。
僕がおかしいのはわかっている。
異常だ。
でも、だからといって普通を強要される謂れはない。
いつからだろうか。
こんなことばかりを考えるようになったのは。
気が付けば愛しいあの人のことばかり考えている。
愛しい愛しいあの人と、行為に及ぶことばかり。
現在中学三年生の思春期真っただ中な少年男子としては至って真っ当で至極健全な権利を有する思考回路なのだろうが、内包されている要素は真っ当でもなければ健全でもない。
殺されたい。
殺されたいのだ。
愛しい愛しい雪姉ちゃんに。
撲殺されたい。毒殺されたい。扼殺されたい。圧殺されたい。轢殺されたい。銃殺されたい。暗殺されたい。
殴り殺されたいし、刺殺されたいし、絞め殺されたい。
ああ…。僕はあなたに今すぐ殺されたい。
授業の終わりを告げる鐘の音が、教室中に響き渡った。
実際色々あるわけだけれども、やっぱり絞殺が一番かな。
二番は刺殺で、三番は殴殺。
銃殺は一番ないな。瞬殺だ。一瞬で事が終わってしまうっていうのは味気がなさすぎる。
似たような理由で暗殺も嫌だ。気付かないうちっていうのは最悪だ。
撲殺やら毒殺やらも、ない。道具を使われているっていうのが気に食わない。どうせなら直に手を下してもらいたいし。
そういう意味では他殺もない。他人に殺人を代行されての行為なんて以ての外だ。
でも、刺殺だけは別だ。刺殺だけは、例外的に二番目にランクインしている。
何故だろう。
何故かはわからない。
多分、他者を殺害するという行為の中では最もポピュラーな方法だからだろう。
だから、刺殺は二番目にあり、なのだろう。
殴殺が刺殺に劣っているのは、やはり他の二つの方法よりも体力的に疲れるからだろう。
いや、そもそも行為というのは疲れるものだろうけれど(経験がないからわからない)、それにしても、それにしてもだ。
逆に、そこまでの激しい運動を以てしての行為に及べるのであれば、それはより一層の深いものを、お互いの中で通じ合わせることが出来たという証に他ならないし、ただの単純な願ったり叶ったりでもあるわけで、だからこその、三番手なのだ。
願いが叶えば、想いが届けば、一番手にも匹敵しうるだろう。
その一番手、絞殺。
これは文句なしに一番だ。
理由なんてない。
ただ、なんとなく。
一番気持ちよさそうだから。
それだけ。
「幾島! 何ボーっとしてる!」
突如、数学教師・小林の怒声が思考を遮った。
「す、すみません……」
慌てて立ち上がる。
「全く、受験まであと半年切ってるんだ。少しは気を引き締めろよ。」
小林は再び黒板に向かい、クラス中が笑いに包まれる。
でも、それでも。席に座れば、クラスメートの笑い声も小林教諭の説明口調も全てが掻き消え、僕の周囲は閉ざされる。
誰も僕の感情はわからない。
誰も僕の話を聞かない。
なら。
僕は誰の感情も気に留めないし、誰の話も聞き留めない。
僕がおかしいのはわかっている。
異常だ。
でも、だからといって普通を強要される謂れはない。
いつからだろうか。
こんなことばかりを考えるようになったのは。
気が付けば愛しいあの人のことばかり考えている。
愛しい愛しいあの人と、行為に及ぶことばかり。
現在中学三年生の思春期真っただ中な少年男子としては至って真っ当で至極健全な権利を有する思考回路なのだろうが、内包されている要素は真っ当でもなければ健全でもない。
殺されたい。
殺されたいのだ。
愛しい愛しい雪姉ちゃんに。
撲殺されたい。毒殺されたい。扼殺されたい。圧殺されたい。轢殺されたい。銃殺されたい。暗殺されたい。
殴り殺されたいし、刺殺されたいし、絞め殺されたい。
ああ…。僕はあなたに今すぐ殺されたい。
授業の終わりを告げる鐘の音が、教室中に響き渡った。
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