アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第27話「『変態性』(キャラ)と『性癖』(スキル)」

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 五月十四日(土)十一時五十七分 旧・真希老獪人間心理専門学校(教室)

「三十分だけじゃあ三回しか抜けませんでしたよ。
 六回くらいはいけると思ったんだけどな。
「本当にこんなんでエーラの質? っていうのはわかるんですか?」
「三回しか、じゃなくて三回も、だけどねー。」
 シモダさんはなにやら苦笑いだ。
「勿論、君のエーラの性質は今のではっきりとわかったよ。君という人物、その根底にある変態性——『変態性キャラ』もなんとなく、ね。」
 『変態性キャラ』?
「エーラっていうのは、性的な欲求を満たすことが困難な者に対して発生するんだ。個人の性癖がマイナーであれば、それに比例してエーラの発生率も上昇する。ほら、マイナーなジャンルの性癖って、対人的にも個人的にも発散する場がなかなかないだろ?」
 確かに。
 足裏フェチや腋フェチなんて、プライベートの彼女相手には言い出しにくい性癖だ。
 赤ちゃんプレイにしろSⅯプレイにしろ、満たせるのはほぼほぼその手のお店に限られるだろうし。
 箱化やマトリョーシ姦に至っては、ネットでオカズになりそうな画像を探すのにすら手間取る。
「そういう、行き場のない性欲によって得られるのがエーラだ。だったら当然、性欲が発散されればエーラは一時的にとはいえ消える。普通はね。」
 普通は?
 シモダさんは両手を広げる。
「今回、君に自慰を行ってもらうにあたって僕は多種多様なジャンルのAⅤを用意した。有名AⅤ女優の単体作品に始まり——素人モノ、裏モノ、ロリモノ、痴女モノ、SⅯ、熟女、ハーレム、企画モノ、ⅭFNⅯ、居乳、貧乳、スレンダー、ポッチャリ、部位特化、スカトロ、ゲイ、レズビアン、寝取られ、逆寝取られ、etc.etc.……。」
 確かにありえない程様々なジャンルの作品が用意されていた。
 さながらAⅤの動物園だ。
「君は自身の手で己のオカズになり得るAⅤを選び、自慰に耽ったはずだ。それによって射精、性的欲求を満たした。それも短時間のうちに三回も、だ。にもかかわらず、君のエーラは消えていない。どころか、その勢力は、否、その精力は増していく一方なんだよ。」
 シモダさんは片手で棒状のものをしごく動作をする。
「つまり、君の根底にある性癖は所謂オナニー中毒ってことだねー。」
 オナニー中毒。
 それが、俺の?
「ちょっと待ってくださいよ。性癖がオナニー中毒って、いまいちよくわからないんですけれど……。オナニーって、自身の性欲を満たす為に行うんですよね? 別に性癖があって成立するんじゃないんですか?」
「確かに、それはもっともな話だねー。」
 シモダさんは片目を瞑って人差し指を立てる。
「たとえば、パンチラが好きな人物が、リアルでは中々お目に掛かれないパンチラを収めた画像ないし動画をネット上で探し、自らの陰茎を弄ってその性欲を鎮める。これが通常の、オナニーに対する意識だ。この場合、パンチラに対する欲求を動機に自慰を行っている形だねー。しかし。」
 シモダさんがビシッと指をさしてくる。
「君の場合、なぜか自慰行為そのものが自慰を行う動機に直結しているんだ。自慰行為をするために自慰行為をしている。特定分野のエロ画像をオカズのために集めることに熱中するあまり、エロ画像を集めることそのものが目的になってる、みたいな状態に近いケースだねー。」
「………。」
 まじか。
 オナニー中毒なのは自覚していたけれど、流石にそれは。
「しかも君は、自慰行為によって性欲を発散できていない。それはエーラが証明している確固たる事実だ。オナニーのためにオナニーをし、オナニーをすればするほど、オナニーによって満たされぬ性的欲求が加速し、またオナニーを繰り返す。永久機関だね。人類の抱えるエネルギー問題もこれで解決だ。」
 解決しない。
「君がオナニー中毒だっていうのは、僕たちも認識していたところだけど、まさかここまでとは思いもよらなかったよ。なかなかの逸材だ。」
 嬉しくない。
「普通のオナニー中毒では決してありえない永久反復。ウロボロスの輪。それこそが君が彼ら『パンドラの箱』に狙われる所以だったんだよ。ウケるよねー。」
 ウケねぇよ。
「俺のこの、オナニー中毒。それがさっき言っていた『変態性キャラ』とかってやつなんですか? なんなんですか、『変態性キャラ』って?」
 子供じみた笑顔を見せるシモダさんに、さっきから気になることを訊いてみる。
「性癖っていうのは、多種多様に存在する我々人類が各々個人の感覚、思想によって生まれた嗜好のことなんだ。その性癖を持ち得るに至った経緯、要因。それを、僕たちは『変態性キャラ』と呼んでいる。」
「え? じゃあ、俺のは……」
「そう。君のオナニー中毒は性癖ではあっても『変態性キャラ』ではない。残念ながら君がオナニー中毒になった要因については、まだなんとなくでしかわからないし、説明ができる段階ではないんだよねー。まぁ、なんで君がそんなオモシロオカシイ人間になっちゃったのかについては、これからも考えていかなければならないことではあるんだけれどねー。あははー。」
 面白くないしおかしくもない。
「ただ、君の『変態性キャラ』については判明していないけれど、そこから発展した君の『性癖スキル』については説明できる段階まではきている。」
「『性癖スキル』?」
 またわけのわからない単語が出てきたぞ。
「『性癖スキル』っていうのは、人々の深層心理、その根底にある『変態性キャラ』を満たす為にエーラを糧として発現する異能力のことさ。」
 異能力……だと?
「君もその身に受けただろ? ほら、右腕が切断されて元に戻ったっていう……」
「っ!」
 『パンドラの箱』の白髪男によって起こされた超常現象。
 それが、俺にも?
「……その異能力、『性癖スキル』、ですか? 未だに信じ切れてないんですよ。やっぱりあれは夢かなんかだったんじゃ、って。」
「しかし、そうとは言い切れないほどのリアルな感触が、君の右腕には残っているんだろう?」
 シモダさんがズバリ見抜いてくる。
「まぁ、いきなり超能力とか異能力とか言われても混乱するのはわかるし、百聞は一見にしかず、だ。今から君に『性癖スキル』の実在を証明してみせよう。」
 今から?
「それは——」
 俺がなにかを口に出そうとした瞬間、シモダさんの背後に突如として人影が現れ、シモダさんをバットで殴りつけた。
 シモダさんは後頭部から血を吐き出し、その場に頭から倒れた。
「………は?」
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