アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第58話「後金遡夜②」

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  五月二十二日(日)十時五十一分 真希老獪人間心理専門学校・トイレ

対象者ターゲットの名前を知っていること、そして自らが持つ情報のみを頼りに対象者ターゲットのSNSアカウントを特定することを発動条件に、対象者ターゲットのSNSアカウントのパスワードを把握する。それが俺の“性癖スキル”『電脳目明しシークレットシーク』だ。」
 俺のツイ●ターアカウントを見せびらかすようにする後金。
 いいからお前、もうそれ閉じろ。
「っていうか、超感覚系能力の“超感覚”の部分はどこなんだよ?」
「そんなの決まってんだろ?」
 後金は肩眉を下げ、メガネの位置を直す。
「SNSアカウントのパスワードを把握する部分だよ。」
 え?
「……そんだけ?」
「思ってたよりもしょぼいだろ? けど実際、超感覚系能力なんてこんなもんだぜ?」
 自嘲気味に口角を上げる後金。
 超感覚系能力は、人体に本来備わっている機能を遥かに超越した能力だと、梶先生から聞いていたのだが、蓋を開けてみればなんとも地味というか、触れ込みとはまるで違ったモノだった。
 なんかガッカリ。
「でも、ま。」
 後金は話を繋げつつスマホをポケットへとしまう。
 お前、ちゃんとログアウトしたか?
「一見地味だが、この能力で出来るのはパスワードの把握だけじゃねぇ。」
 今度は、反対側のポケットから別のスマホを取り出し、少し操作した後にその画面を俺に向ける。
「これは……。」
 向けられたスマホの画面には写真が映し出されており、その中に見覚えのある女性が立っていた。
 二人の女性の間でダブルピースを決めるこの女性は、最近テレビでよく見かけるアイドルグループのメンバーだった。
「SNSにアップされた写真か? いや……」
 だとしたら、おかしなことがある。
 彼女が所属するアイドルグループは三人組で、この写真にも女性が三人映っているのだが、彼女の両脇に立つ二人の顔には見覚えがなかった。
 他の芸能人というわけでもなさそうだし、なにより、メイクの仕方や立ち姿の雰囲気がテレビで見かける彼女となにか違う。
 ……まさか。
「気付いたか?」
 後金はあくどい笑みを見せると、スマホの画面を自身に向けた。
「この写真、彼女のツイ●ターにアップされた写真なんだけどさ、普通のファンは決して拝めない代物なんだ。なんせ、」
 そう言う後金の表情は、スマホの光をもろに浴びて、より悪役然とした雰囲気を放っている。
「この写真はアイドルとしての彼女・・・・・・・・・・のツイ●ターにアップされたものじゃなく、アイドルとしてではない・・・・・・・・・・・一人の人間としての彼女・・・・・・・・・・・のツイ●ターにアップされたものだからな。」
「特定したのか? 彼女のプライベートアカウントを……」
「その通り。」
 こちらに向かって指さす後金。
「いやぁ、見つけるのに苦労したよ。三か月もかかっちった。あ、ちなみに両脇にいるのは彼女の高校時代からの親友な。勿論、この二人のツイ●ターも把握済み。たまに彼女の写真上げてるから。」
 お前……マジか。
「っていうか、それこそどうやって見つけたんだよ? 三か月だって短い方だろ。」
 彼女は、あからさまに本名ではないだろう名前でアイドル活動を行っている。
 それでは、さっき後金が言っていた能力発動条件を満たしていない。
 というかそもそもアイドルのプライベートアカウントなんて探し当てること自体困難なはずだ。
 投げかけられた質問に、後金はメガネの位置を直して見せる(もはや見慣れた光景だ)。
「人間っていうのは面白いもんで、重要なものを隠すパスワードほど、自分の好きなものや多大に影響を受けたもので、かつ、人に周知されていないようなものを設定したがる。そしてそれは、アイドルだろうとまた然りだ。」
 後金は大仰に両手を広げる。
「だから俺はまず、①アイドルとしての彼女のツイ●ターアカウントのパスワードを能力を使って把握。これは実に簡単な作業だった。調べる段階にすらいっていない。そして次に、②把握したパスワードの内容から、彼女が普段から愛用している自転車のメーカー名を得る。そして、③同メーカー名に対して言及しているツイ●ターアカウントを虱潰しに調べていき、彼女と繋がっていそうな人を探していく。」
 さながらミステリ小説の探偵役に、その犯行の全てを看破された犯人役のごとく、俺に背を向けてゆっくりと歩き出していく。
「④ツイ●ター上での過去の会話を遡っていき、アイドルではない彼女と交友関係のあるアカウントを特定。この作業が一番しんどかった。実に心地の良いしんどさだった。ここに俺は三か月もかけたんだよ。そこから、⑤彼女と思しきアカウントを複数監視していき、そしてついに、⑥彼女のプライベートアカウントを特定。鍵がかかっていたが、プライベートアカウントの方は本名で登録していたからな。能力発動条件は十分に果たされていたんだ。」
 しばらく歩いていた後金はその足を止め、そしてゆっくりと振り返った。
「わかるか? 『電脳目明しシークレットシーク』の真価。俺はその気になれば、芸能人のプライベートすら把握できるんだぜ。」
 ……前言撤回。
 地味なんてもんじゃない。
 そら恐ろしい能力だ。
 そして、こいつ、後金遡夜の“変態性キャラ”も今わかった。
 【ネットストーカー】だ。こいつは。
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