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第128話「自慰なる少年は決意を表明する」
しおりを挟む六月五日(日)十九時四十五分 真希老獪人間心理専門学校・男子寮
『廊下に来い。話がある。』
単刀直入過ぎる嵐山からのメッセージを受け取り、扱いていた肉棒が収縮するまで五分ほど待った後、部屋を出た。
正直そのまま最後までオナった方が早かったような気もしなくもなくもなくなくないが、そこについて細かく脳内検証を行う間もなく、嵐山は既に俺の部屋の前に来ていた。
「うぉっ! ビクったぁ」
嵐山はいつも通りの無表情で突っ立っていたが、お前、無表情クールキャラがモテるのは中学校までだぞ。高校に出たら求められるのはコミュ力なんだよ。いつまでもそれが通用すると思ってんじゃねぇぞ。……いや、こいつ今でも十二分にモテてるな。腹立たしい奴だ。
「………。」
「……なんだよ、話って。」
いつまでも黙りこくっている全男子の敵ことイケメンクソ野郎に、本題を促す。
こっちは大事な聖儀、もとい性儀の途中だったんだ。早く帰ってオナらせろ。
「……いや、その…なんだ……」
「なんだよ、歯切れ悪ぃな。」
「………。」
嵐山はしばらく頭を掻いていたかと思うと、深々と頭を下げてきた。
「はぁっ⁉」
「……俺が暴走したせいで、お前を危険な目に遭わせた。悪かった。」
いつになく弱弱しく、しかし感情を込めた声でそんなことを言ってくる。
「いや、お前何言ってんだよ。別にお前のせいじゃねぇだろ、俺が狙われてんのは。大体、最初に暴走したのは俺だったし。」
いきなり頭下げんのとかやめろよな。慌てふためくだろうが。
「お前に降りかかる危険、お前の暴走も、全部計算しなければいけないことだった。あの中じゃ俺が一番、戦闘経験があったから。だから、俺の責任なんだ。」
「いやいやいや! そりゃあ全部下田先生の仕事で下田先生の責任だろ! 知らねぇけど。お前両極端過ぎんだよ!」
嵐山の頭を掴んで無理矢理起こし上げる。
「俺は気にしてねぇってんだろ! そんなことでいちいち頭下げんな! 俺たち対等な友達だろうが!」
「………。」
嵐山はそっと俺の手を払った。
「お前の方が下だ。」
「なにぃっ⁉」
この野郎、急にムカつ……⁉
「? なんだよ?」
「あ、いや……」
嵐山、今笑ってた?
見間違いか?
「まぁいいや。そんなことより、お前ほんとに怪我はもういいのか?」
嵐山が俺の脇腹あたりを指さしてくる。
「ああ。言っただろ? この通り、もう全然へーき。」
着ていたTシャツを捲ってひびが入っていたあばらを見せる。
完治にかなり時間がかかるとか言われてた割には、事件から一週間も経たないうちの昨日にはもうすっかり治っていた。
一昨日までは僅かに痛んでいたんだが、いまや元通り、オナニーしても痛くない。
「流石は俺の『独り善がりの絶倫』。回復力まで向上するとは恐れいったよなぁ。」
オナニーによって疲弊した肉体を癒す効果が備わっている、と考えればそんなに驚くほどの事でもないのかもしれないけど。
「……そうか。」
「ただ、こっちは良いんだけれど……その、一つ問題が発生しちゃって。」
「問題?」
嵐山は首を傾げる。
……自分の口から説明すんの、やだなぁ……。
「あー…えっと、だな……木梨さんのことなんだけど……」
嵐山のこと、歯切れが悪いとか言ってらんねぇな。
「木梨? 木梨がどうかしたのか?」
察せよ。そういうとこだぞ。
「あーいや、……なんつうか、その……木梨さん、俺のこと、アレじゃん?」
「ああ、好きだな。」
はっきり言ってんじゃねぇよ!
そここそ歯切れの悪さだろうが!
「それがどうかしたのか? モテ自慢か? お前、モテなさそうだもんな。」
ぐっ。
ナチュラルに煽ってきやがる。
「モテる奴に俺の気持ちがわかるか……いや、そうじゃねぇ! そうだけれども! 違う! 俺が言いたいのはそうじゃなくて! とりあえず一旦落ち着け!」
「お前が落ち着け。」
嵐山の言葉も手伝って、今一度冷静さを取り戻す。
「そりゃあ確かに最初は浮かれたけどさ、このままだとマズいと思ったんだ。女の子に好かれるのは純粋に嬉しいけどさ、ほら、俺他に好きな人がいるわけじゃん。」
「ああ、心音な。」
だからそういうことをはっきりと……!
………。
「そうだよ。俺はまりあ様が好きだ。大好きだ。だから、この状況は非常にマズいと思って……考えたんだ。」
この状況を打破するための、たった一つの冴えたやり方。
「なにを?」
「それは……………」
嵐山からの問いに、これ以上口が開かない。
声が出ない。
覚悟を決めたはずなのに。
なのに、それがこんなに恐い事だなんて。
「ぐううううう………」
「なんだよ。」
嵐山の呆れたような声。
意を決し、決意を固め、ようやく言葉を口に出す。
「俺は! まりあ様をデートに誘う!」
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