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第181話「彩芽祐樹⑩」
しおりを挟む六月十三日(月)十八時五十五分 真希老獪人間心理専門学校・食堂
【サイコパス】……!
「数年前から徐々に知名度を上げていき、貴志祐介著作の「悪の教典」で一躍その名を世間に広く知れ渡らせた反社会性パーソナリティ障がいの通称。それが【サイコパス】。」
饒舌に語る先生は両手を大きく広げる。
「高い知性を有し、社交性に長け、初対面の人とも臆することなく語り合える彼らは、自身の魅力を相手が求める形で饒舌に語る術を有しており、相対する人間はみな、彼らを素晴らしく魅力的な人物と捉え、中には偶像の如く崇拝する者まで現れる。しかし、それはあくまで彼らの表面上の人格のみに限った話で、彼らの#本質__・・__#はその真逆であるとも言える。」
そこで区切って、先生はまたもや立ち上がり、台所へと向かう。どうもコーヒーのおかわりを注ぎに行ったようで、すぐに黒い液体を並々に注いだカップを持って戻ってきた。
「実のところ【サイコパス】——反社会性パーソナリティ障がいの人は、酷く利己的で自己中心性の強い価値観を持っている。自分の事しか考えないんだ。自分は世界の中心だー、みたいにね。だから自分の自慢話ばっかするし、自分の言動で他人がどう影響を受けようとも一切合切気に留めないという側面もある。そんな人物がどうして魅力的に映るかわかるかい?」
広げている片手をこちらに差し向ける先生。
「……頭が良いから、ですよね?」
「そう。全くもってその通り。」
差し向けていた手を戻し、先生は人差し指を立てた。
「【サイコパス】に分類される人物は、非常に高い知能を持っている。そして、利己的な面もあることから、自分自身がどのような挙動を取れば、如何様に魅力的に見えるか、というのを考え、実行に移すことが出来るんだー。羊の皮を被った狼というか、そこが【サイコパス】の怖いところで、ほら、人って他人を判断する時はまず容姿から入るでしょ? 顔の作りや背の高さ、清潔感なんかの。【サイコパス】の人は他人を心地よくさせるのに長けているから、当然、近づかれても気が付かない。下手をすれば、もっと一緒にいたいとさえ思うようになる。」
先生はコーヒーを一飲み。続ける。
「そして利己的な面は更なる性質を引き出す。それが、自身の非を一切認めない傲慢さや結果至上主義な面だ。何か問題を起こしたとしても、それは自分以外の何かのせいだと本気で捉える傾向がある。その何か、は何でもいいんだ。他者でも物でも、なんなら運でもいい。とにかく自分は悪くない、と心の底から思っている。そして、結果至上主義。【サイコパス】の人は、結果こそが全てと考え、その道中、過程は全て興味の範疇外にある。故に、如何なる手段を用いようとも成果を出すことに奮闘し、奔走し、他者を利用する。」
他人の利用。
【サイコパス】の取る行動で、目立って取り上げられる性質だ。
「他者を踏み落とし、蹴落とし、使い捨ててより高みへと昇る。そのために病的に、慢性的に平然と嘘を吐き、欺き、誑かして拐かして他者を操る。【サイコパス】な人が口達者なことも相まって、やられている方はまず気付かないだろうねー。結果至上主義で完璧主義な面を持つ【サイコパス】は、他者が何も気付かずに自分の良い様に操られている様を見て高揚するそうだよ。全てが思い通り、だなんて、確かに自分こそが世界の中心だと認識している【サイコパス】からすれば、この上なく気持ちの良いものなのかもしれないねー。」
「そんな【サイコパス】」先生は背もたれに深くもたれかかる。
「彼らが何故、自身のために他者を陥れるような非道徳的な行為を行えるのか……それは、【サイコパス】の複数ある特徴の中でも、最も有名な性質が原因となっている。それが——
良心が著しく欠如していて、かつ、共感性が絶無、という点だ。」
大きく溜めて言い放った先生の一言は、【サイコパス】そのものを特徴づける、非常にわかりやすい一言だった。
彼らが“名前のない怪物”だなんて呼ばれる原因にして要因。人間ではない人間。
「他人が喜ぶ、他人が悲しむ、そういった感情の起伏、振れ幅に【サイコパス】は一切共感が出来ない。人の心に根底から寄り添えないのさ。そしてそれ故に、【サイコパス】は良心の呵責というのも訪れない。他人の感情含めたその一切に彼らは興味を示せない。だから、自分の目的を達成させるために他のあらゆるを利用しようとも、彼らの心が痛むことは、ない。」
翼のない天使、血の通っていない人間。
「一見するとカリスマ性に富んでいて魅力的に映る人物、しかしその裏で、他者に共感を示さず、心を通わせず、自分が世界の中心で自分以外のすべては自分の為に用意された道具と見做す傲慢さがあり、狡知に長けた巧みな話術と優れた空間演出能力によって平然と他者を欺き、陥れ、蹴落としていく彼ら【サイコパス】は、出は一体何を目的としているのか。何を求め、何のために暗躍しているのか。」
先生はコーヒーを飲み干す。
冷血なことこの上ない非人道的な人格の持ち主。彼らが求める真の目的とは。
「それは一重に、刺激さ。」
やっ…ぱり……
「刺激を求めるために自身の人格を魅力的に映るよう上塗りし、その表面上の人格をもってして他者を利用し、犠牲にしていく。あれれ~? おっかしいなぁ~、ついさっきまで、そんな人物の話をしてた気がするなぁ~」
わざとお道化て、先生は首を横に振る。
やっぱりそこに…繋がるのか……
「——と、いうわけで、話を“Pepper”に戻そうか。」
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