終末の天使

柳川歩城

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少しして祈を包んでいた羽が離れる。私は青年から離れてゆっくりと目を開ける。そこは生活感がある明るい空間だった。
???「少しそこで待ってろ。」
青年はそう言うとリビングの方へ向かった。祈は指示された椅子に座る。少しして段々と良い匂いが漂ってきて、青年はいくつかの料理を持ってきた。
???「すまない。今用意出来るのはこれくらいしかないんだ。」
そう言って祈の前に料理が並べられる。並べられたのはご飯とお味噌汁、焼き魚と言った一般的に朝食だとされている物だ。その匂いが祈の鼻孔をくすぐると、途端に祈のお腹が鳴る。祈は少し怯えた様子で青年を見る。そして料理を一口口に入れる、すると祈の目からは涙がこぼれ始めた。
???「どっ…どうした?」
青年は驚いた様子で彼女を心配する。祈は泣きながらそれに答える。
祈「いや…こんな美味しい物食べたのは…久しぶりで……」
祈の実母も、昔は手料理を作ってくれる事があった。だが最近では怒られることも増え、手を上げられ、料理を味わう暇も無かった。
???「そうか…」
それを聞くと青年は、祈の目の前に餡蜜を持ってきた。おそらく気を使ったのだろう祈は出された料理と餡蜜を泣きながらしっかり噛み締めるように味わった。

???「今からこの家の禁止事項を伝える。」
出された料理を食べ終わった後、祈は青年から説明を受ける。
???「一つ目はあまり物を壊したりするな。二つ目は俺に何も言わずに外出するな。最後はあの部屋に勝手に入るな。以上だ。」
それを伝え終えると男は先ほど指した部屋へと入って行く。私は小一時間ほどリビングでゆったりしていた。先ほどの料理や餡蜜の味を思い出しながら、今後どうしていこうか考える。そんな事を考えていると、祈はある違和感に気付いた。閉まっていたカーテンの奥が暗いのだ。祈は不思議に思い、カーテンを開ける。そこには真っ暗な闇が広がっていた。おかしい、家にいたときは早朝だった筈だ。祈はそう思い壁に掛けてある時計を見る。その時計は夜中の11時を指し示している。祈は半分パニックに陥り、青年にこの事について聞こうと部屋に向かう。先ほどの注意で入ってはいけないと言われた部屋に。部屋の前に着くと、祈はそのドアを開けた。するとそこには青年の姿はない。お手洗いにでも行って居るのだろうか。代わりに目に飛び込んで来たのは、ある女性や男性の絵である。しっかりと輪郭や特徴が捉えられており、名前も知らない人が描かれている筈なのに、絵に描かれていても分かるくらいのその美貌につい目を奪われてしまう。
???「入るなと言ったよな?」
祈の背後から怒りが混じった声が聞こえてくる。驚き祈が振り返ると、そこには青年の姿があった。
祈「すっ…すみません!あのっ…外が暗く、時計も夜中を指していたのでっ…パニックになっちゃって……」
祈は必死に弁明する。すると青年はため息を吐きながら言う。
???「そうだったな…伝え忘れていた。それは俺が悪い。すまなかった。」
そう弁明すると、青年は次に驚く事を言った。
???「ここはスイスだ。」
祈「へ?」
困惑する祈に向かって青年は問う。
???「この絵を見てどう思った?」
祈「あっ…いやっ…とても美味しい絵だな~と。」
???「そうか…」
青年はそれを聞くと、部屋に戻って行こうとする。しかし、祈にはもう一つ聞きたい事があった。
祈「すいません!」
???「なんだ?」
祈「あっ…あなたのお名前は何ですか?」
???「俺の名前か…?」
青年は少し考える素振りをして言った。
クネトコ「クネトコとでも呼んでくれ。」
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