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高校生戦闘ヒーロー大会編
第15話 決勝戦中堅戦
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優美「…へ?」
控え室に備え付けられたモニターで試合を観戦していた優美は決着が宣言されたその瞬間、そんな声を漏らした。その声はいつもとは違い、とても震えた声であった。振り向き、大翔の方を見ると、大翔は備え付けられた椅子に座って俯いていた。その顔は、髪に隠れて見えなかった。
優美「!…舞花!」
突然、バトル会場に繋がるワープ装置から担架に乗せられた舞花が現れる。
大翔「大丈夫!?」
それを見た大翔も驚愕の声をあげる。スタッフの話しを聞くに、あまりにも大きなダメージを受けたために、体に大きな負荷がかかり気絶してしまったらしい。そうして、舞花は医務室へと運ばれて行った。
そうして、また大翔と控え室に二人きりとなった。相変わらず、大翔は椅子に座ったまま俯いている。ここで私は、一つの選択を迫られていた。このまま試合を続行するか、もしくは、この大会を危険するかだ。だけど、もう答えは出ていた。いや、もうこの答えしか残っていなかった。私達は、この大会を棄権しなくてはならない。もともと、大翔が試合に出ることは考えていなかった。言い方は悪いけど、言ってしまえば大翔は足りない人数を補填するためにこの大会に出たのであって、私達は先方戦と、中堅戦で勝負を決めるつもりだった。大翔は無能力者だ。無能力者が能力者に勝てる訳がない。無能力者と言うのは基本的に能力者に比べ、身体能力、魔力量ともに低いと言われている。元々の、生物としての差がある。しかも相手はチームO。恐らく、今大会最強のチームだろう。そこの大将ともなれば、今大会最強の選手と言っても過言ではない。もし次私が中堅戦で勝利したとしても、大翔が大将戦で勝てる確率は、限りなく0に近い…いや、0だろう。もしかしたら、大翔が死んでしまうかもしれない。だから残っていた選択肢は、この大会を棄権する。ただそれだけだった。ここまで、このチームで勝ち残って来た。それまで、いろんな困難があった。それでも、何とか乗り越えて来た。でも今、大翔の安全などを考えれば、この大会を棄権するしかない。頭では分かっている。でも、その決断をしようとすると、自然に涙が溢れてしまった。
不意に、何かが私を包み込む。
それは、大翔だった。泣いている私を見て心配してくれたのだろう。そっと、優しく抱き付いていた。すると、突然大翔は、こんなことを私に囁いた。
大翔「…この大会は、棄権しなくていい。中堅戦。絶対に勝ってきて。」
優美「…へ?」
そんな言葉に、私は驚いた。元々大翔も、試合に出るつもりは無かったはずだ。もし出られたとしても、命の保証が無いくらいには危険な試合になるだろう。それくらい。大翔にも分かっているはずだ。ここでそんなに強がったところで、なんの意味もない。だけど、大翔は昔から出来ない事を、冗談で言うことはあっても、こんな真面目な声で言うことは無かった。私を包んでいた手が離れ、大翔が私の目の前に立つ。
大翔「大将戦。僕、絶対に勝つから、だから…中堅戦、負けたら許さないよ。」
そう言いきって、大翔は優しく笑う。その目には、覚悟が宿っていた。本気だ。そんな大翔の言葉を聞いて、私の心は少しずつ晴れ、安心していく。気付くと私は、大翔に笑って、こう返していた。
優美「あったり前じゃん。絶対勝ってくるよ。」
もう後には引けない。大翔の覚悟を無駄にしない為に、絶対に勝利しなくては。そんな思いで、私は会場へと向かった。
スタジアムに突然どよめきが起こる。無理もないだろう。この大会を棄権する。そう、誰もが思っていたチームA。その中堅……いや、実質的な大将と言っていいであろう赤緑優美。その人物が今、バトル会場へと現れたのだから。これには神であるフィーシーも驚きを隠せていない様子であった。
フィーシー「…何故、優美達は棄権の道を選ばなかったのでしょうか……」
その口調はあまり関係の深くない者が聞けば落ち着いたものに聞こえただろう。しかし、フィーシーと接する時間が常人よりも多いバナボーは、その口調の中に潜む微かな困惑の念に気づいていた。
バナボー「さぁ……私にも全く分かりません。」
おそらく、このスタジアムにいる誰もが…いや、世界中の誰もが、困惑し、分かっていない。
フィーシー「……一度チームAの大将である大翔にあった事がありますが、その時の彼の印象としては、よく気遣いの出来る好青年と言った感じでした。ここまで勝敗の分かりきっている勝負をするような人物ではありません。もしや…何か彼に策があるのか……」
そう言う彼女の視線は、司会のキングへと向かっている。世界中が認める名司会者。数々の場面を目撃してきたであろう彼もこの事態には困惑し、モニター越しに優美へと確認を取っていた。様子を見るに、試合を続行するようだ。この誰もが予想しなかった事態の先で、何が待っているのか。どんな結末を迎えるのか。誰も分かるものはいなかった。
優美に試合続行の確認を行ったキングは、少し深呼吸をして、選手の紹介の為にすぐさま切り替える。かなり困惑しているようだったが、無理もない。私自身も、大翔がどんな考えを持って私に覚悟を伝えたのか分かっていなかった。ただ、今自分がやるべき事は、大翔の覚悟を無駄にしないため、この中堅戦に勝利する。それだけだった。
キング「さぁ!決勝戦中堅戦!ここでチームAの赤緑優美が敗北してしまうと、チームAの敗北が確定し、チームOの優勝が決まってしまいます!赤緑優美はここで勝利し、大将へとそのバトンを繋げるのか!それではまずチームAよりイクセスリィを救った英雄であり、支世高校の一年生!中堅戦を勝利することは出来るのか!赤緑優美!」
既に両チームは入場した後だ。私は相手の事を注意深く観察する。
キング「対するチームOからは、錬金術で様々な物を作り出す。今大会最強であろう錬金術師!アウクミー·ゴル!」
キングの選手紹介が終わると、私達は共に構えを取った。
キング「それでは両者………構え!」
私は、アウクミーの事を軽く睨む。すると、相手も軽く睨み返して来た。緊張はしない。ただ、今しなければいけないのは、大将である大翔へとバトンを繋ぐ事だ。
キング「……始め!」
優美「封魔拳!」
試合が開始した瞬間、双方は地面を蹴って相手へと攻撃を仕掛ける。双方の拳はぶつかり合い、アウクミーは後方へとぶっ飛ぶ。どうやら瞬間的な火力では、私の方が上のようだ。しかし、アウクミーが岩へとぶつかり大きな土煙が上がった瞬間、私は直感的に悪い予感を感じとる。
優美「!?」
その瞬間、土煙の中からアウクミーが姿を現し、攻撃を仕掛けて来た。
優美「あっぶな!」
間一髪。体を後に反って攻撃を避ける。しかし、何故か髪の毛の端が少し切れた。体勢を戻し、バックステップで距離を取ると、何故か先ほどまで持っていなかった剣をアウクミーは持っていた。
優美「成る程……錬金術師とは会ったこと無かったけど、それが例の錬金術ってやつ?」
私はアウクミーに向かってそう問いかけた。
アウクミー「そ、あんたの推測通りだよ。まぁ、錬金術師って結構珍しいから会ったこと無いのも仕方ないよ。実際、錬金術の主な使い道としては、物質の変換だからね。戦いに使う事はまずない。でも…」
そうやってアウクミーはにやりと笑う。
アウクミー「戦い方を知らない人が多い。だからこそ、戦いに転用した時には情報と言う面で、アドバンテージを取れる。」
その瞬間、私の足元から地面を突き破って鋭い針がものすごい速さで伸びてくる。
優美「あっぶな!」
瞬間私は空中へと飛び上がり、その攻撃を避けた。おそらく、そのまま立っていたら串刺しだっただろう。歩けなくなるなんて、そんなもんじゃない。
優美「怪我しないからって、流石に殺意高すぎじゃない?」
そんな事を呟くと、今度は無数の矢が飛んでくる。
優美「ちょっあぶな!」
私はその全てをギリギリで回避していく。しかし、回避に手一杯で、全く反撃出来ない。
優美「一度に複数の矢を同時に打てるとか、武器の扱い上手すぎない!?と言うか、そんな量の矢なんて持ち込んで無かったでしょ!」
アウクミー「それが錬金術って物だからねぇ!それに、俺は子供の頃から武器を扱う訓練をやってるんだから、上手いのも当然だよっと!」
その時、放たれた矢の一本が私の体を捉える。その矢は、私の腹部に命中し、その瞬間、強い痛みに襲われる。
優美「カッ………ハァッ!」
痛みによって一瞬私の体が硬直したのをアウクミーは見過ごさず、次々と矢を打ち込む。全身に強い痛みが走り続け、その度意識が飛びかける。瞬間、私は霊力の操作を誤ってしまった。私の体は重力に引っ張られ、地面へと落ちて行く。勝利を確信したのか、もう矢による追撃が私を襲うことは無かった。私は、負けを確信した。…………………いや、確信してしまうところだった。私は薄れ行く意識の中で、ある光景を目にした。
優美「(アウクミーが……身体強化を…解いてる……?)」
そこで私は、過去に学んだ。あることを思い出した。
優美「封魔拳!」
私は再び霊力を操作し、落下位置を"アウクミーの近く"になるように調整して、地面に対して封魔拳を放つ。重力による速度が加わった封魔拳は、地面に当たると大きな土煙を上げる。私はその土煙の中で、あることをしてアウクミーから距離を取った。土煙が晴れると、アウクミーは困惑した表情で私を見る。
優美「霊刃!」
そこに私は間髪いれずに攻撃を仕掛ける。アウクミーはそれを避けようとバックステップで距離を取った。
優美「(かかった!)」
アウクミーが地面に着地した瞬間、着地した場所が爆発し、アウクミーの体が空中に浮き上がり、重力に従って地面へと落ちて、アウクミーは気絶した。
錬金術で物質の変換を行うには、"2種類"の方法が存在する。まず一つ目の方法。それは変換したい物質と、同じだけのポイントを持った者を用意する事。土、木、水、金属。この世の物にはそれぞれポイントがあり、変換したい物質と同じだけのポイントを用意出来れば、その物質へと変換することが出来る。だが、この方法は、少し時間がかかる上に、使用した物質は無くなってしまうと言う欠点がある。そこで、今回アウクミーが使ったと思われるのはもう一つの方法である『魔力でのポイントの補填』だ。これは物質の変換時に足りないポイントを魔力で補うと言う方法だ。この方法なら、直ぐに物質の変換を行うことが出来、使う物質の量も少なくすむ。だが、この方法には、一つの欠点があった。それは、物質の変換に魔力を使用すると言う点である。この欠点のため、アウクミーは身体強化に回すべきである魔力も、錬金術へと使用していた。今回は、その隙をついた。アウクミーの近くに封魔拳を放つことで、わざと土煙を上げ、アウクミーの視界を封じている隙に、周囲に墓を設置し、アウクミーに霊刃をわざと避けさせることで、墓を起動。一撃で気絶させることに成功した。
審判「アウクミー·ゴル!気絶によって戦闘不能!よって勝者!赤緑優美!」
これで、大翔にバトンを渡すことには成功した。後は、大翔の事を信じるだけだ。私は、しっかりとした足取りで控え室へと戻って行った。
控え室に備え付けられたモニターで試合を観戦していた優美は決着が宣言されたその瞬間、そんな声を漏らした。その声はいつもとは違い、とても震えた声であった。振り向き、大翔の方を見ると、大翔は備え付けられた椅子に座って俯いていた。その顔は、髪に隠れて見えなかった。
優美「!…舞花!」
突然、バトル会場に繋がるワープ装置から担架に乗せられた舞花が現れる。
大翔「大丈夫!?」
それを見た大翔も驚愕の声をあげる。スタッフの話しを聞くに、あまりにも大きなダメージを受けたために、体に大きな負荷がかかり気絶してしまったらしい。そうして、舞花は医務室へと運ばれて行った。
そうして、また大翔と控え室に二人きりとなった。相変わらず、大翔は椅子に座ったまま俯いている。ここで私は、一つの選択を迫られていた。このまま試合を続行するか、もしくは、この大会を危険するかだ。だけど、もう答えは出ていた。いや、もうこの答えしか残っていなかった。私達は、この大会を棄権しなくてはならない。もともと、大翔が試合に出ることは考えていなかった。言い方は悪いけど、言ってしまえば大翔は足りない人数を補填するためにこの大会に出たのであって、私達は先方戦と、中堅戦で勝負を決めるつもりだった。大翔は無能力者だ。無能力者が能力者に勝てる訳がない。無能力者と言うのは基本的に能力者に比べ、身体能力、魔力量ともに低いと言われている。元々の、生物としての差がある。しかも相手はチームO。恐らく、今大会最強のチームだろう。そこの大将ともなれば、今大会最強の選手と言っても過言ではない。もし次私が中堅戦で勝利したとしても、大翔が大将戦で勝てる確率は、限りなく0に近い…いや、0だろう。もしかしたら、大翔が死んでしまうかもしれない。だから残っていた選択肢は、この大会を棄権する。ただそれだけだった。ここまで、このチームで勝ち残って来た。それまで、いろんな困難があった。それでも、何とか乗り越えて来た。でも今、大翔の安全などを考えれば、この大会を棄権するしかない。頭では分かっている。でも、その決断をしようとすると、自然に涙が溢れてしまった。
不意に、何かが私を包み込む。
それは、大翔だった。泣いている私を見て心配してくれたのだろう。そっと、優しく抱き付いていた。すると、突然大翔は、こんなことを私に囁いた。
大翔「…この大会は、棄権しなくていい。中堅戦。絶対に勝ってきて。」
優美「…へ?」
そんな言葉に、私は驚いた。元々大翔も、試合に出るつもりは無かったはずだ。もし出られたとしても、命の保証が無いくらいには危険な試合になるだろう。それくらい。大翔にも分かっているはずだ。ここでそんなに強がったところで、なんの意味もない。だけど、大翔は昔から出来ない事を、冗談で言うことはあっても、こんな真面目な声で言うことは無かった。私を包んでいた手が離れ、大翔が私の目の前に立つ。
大翔「大将戦。僕、絶対に勝つから、だから…中堅戦、負けたら許さないよ。」
そう言いきって、大翔は優しく笑う。その目には、覚悟が宿っていた。本気だ。そんな大翔の言葉を聞いて、私の心は少しずつ晴れ、安心していく。気付くと私は、大翔に笑って、こう返していた。
優美「あったり前じゃん。絶対勝ってくるよ。」
もう後には引けない。大翔の覚悟を無駄にしない為に、絶対に勝利しなくては。そんな思いで、私は会場へと向かった。
スタジアムに突然どよめきが起こる。無理もないだろう。この大会を棄権する。そう、誰もが思っていたチームA。その中堅……いや、実質的な大将と言っていいであろう赤緑優美。その人物が今、バトル会場へと現れたのだから。これには神であるフィーシーも驚きを隠せていない様子であった。
フィーシー「…何故、優美達は棄権の道を選ばなかったのでしょうか……」
その口調はあまり関係の深くない者が聞けば落ち着いたものに聞こえただろう。しかし、フィーシーと接する時間が常人よりも多いバナボーは、その口調の中に潜む微かな困惑の念に気づいていた。
バナボー「さぁ……私にも全く分かりません。」
おそらく、このスタジアムにいる誰もが…いや、世界中の誰もが、困惑し、分かっていない。
フィーシー「……一度チームAの大将である大翔にあった事がありますが、その時の彼の印象としては、よく気遣いの出来る好青年と言った感じでした。ここまで勝敗の分かりきっている勝負をするような人物ではありません。もしや…何か彼に策があるのか……」
そう言う彼女の視線は、司会のキングへと向かっている。世界中が認める名司会者。数々の場面を目撃してきたであろう彼もこの事態には困惑し、モニター越しに優美へと確認を取っていた。様子を見るに、試合を続行するようだ。この誰もが予想しなかった事態の先で、何が待っているのか。どんな結末を迎えるのか。誰も分かるものはいなかった。
優美に試合続行の確認を行ったキングは、少し深呼吸をして、選手の紹介の為にすぐさま切り替える。かなり困惑しているようだったが、無理もない。私自身も、大翔がどんな考えを持って私に覚悟を伝えたのか分かっていなかった。ただ、今自分がやるべき事は、大翔の覚悟を無駄にしないため、この中堅戦に勝利する。それだけだった。
キング「さぁ!決勝戦中堅戦!ここでチームAの赤緑優美が敗北してしまうと、チームAの敗北が確定し、チームOの優勝が決まってしまいます!赤緑優美はここで勝利し、大将へとそのバトンを繋げるのか!それではまずチームAよりイクセスリィを救った英雄であり、支世高校の一年生!中堅戦を勝利することは出来るのか!赤緑優美!」
既に両チームは入場した後だ。私は相手の事を注意深く観察する。
キング「対するチームOからは、錬金術で様々な物を作り出す。今大会最強であろう錬金術師!アウクミー·ゴル!」
キングの選手紹介が終わると、私達は共に構えを取った。
キング「それでは両者………構え!」
私は、アウクミーの事を軽く睨む。すると、相手も軽く睨み返して来た。緊張はしない。ただ、今しなければいけないのは、大将である大翔へとバトンを繋ぐ事だ。
キング「……始め!」
優美「封魔拳!」
試合が開始した瞬間、双方は地面を蹴って相手へと攻撃を仕掛ける。双方の拳はぶつかり合い、アウクミーは後方へとぶっ飛ぶ。どうやら瞬間的な火力では、私の方が上のようだ。しかし、アウクミーが岩へとぶつかり大きな土煙が上がった瞬間、私は直感的に悪い予感を感じとる。
優美「!?」
その瞬間、土煙の中からアウクミーが姿を現し、攻撃を仕掛けて来た。
優美「あっぶな!」
間一髪。体を後に反って攻撃を避ける。しかし、何故か髪の毛の端が少し切れた。体勢を戻し、バックステップで距離を取ると、何故か先ほどまで持っていなかった剣をアウクミーは持っていた。
優美「成る程……錬金術師とは会ったこと無かったけど、それが例の錬金術ってやつ?」
私はアウクミーに向かってそう問いかけた。
アウクミー「そ、あんたの推測通りだよ。まぁ、錬金術師って結構珍しいから会ったこと無いのも仕方ないよ。実際、錬金術の主な使い道としては、物質の変換だからね。戦いに使う事はまずない。でも…」
そうやってアウクミーはにやりと笑う。
アウクミー「戦い方を知らない人が多い。だからこそ、戦いに転用した時には情報と言う面で、アドバンテージを取れる。」
その瞬間、私の足元から地面を突き破って鋭い針がものすごい速さで伸びてくる。
優美「あっぶな!」
瞬間私は空中へと飛び上がり、その攻撃を避けた。おそらく、そのまま立っていたら串刺しだっただろう。歩けなくなるなんて、そんなもんじゃない。
優美「怪我しないからって、流石に殺意高すぎじゃない?」
そんな事を呟くと、今度は無数の矢が飛んでくる。
優美「ちょっあぶな!」
私はその全てをギリギリで回避していく。しかし、回避に手一杯で、全く反撃出来ない。
優美「一度に複数の矢を同時に打てるとか、武器の扱い上手すぎない!?と言うか、そんな量の矢なんて持ち込んで無かったでしょ!」
アウクミー「それが錬金術って物だからねぇ!それに、俺は子供の頃から武器を扱う訓練をやってるんだから、上手いのも当然だよっと!」
その時、放たれた矢の一本が私の体を捉える。その矢は、私の腹部に命中し、その瞬間、強い痛みに襲われる。
優美「カッ………ハァッ!」
痛みによって一瞬私の体が硬直したのをアウクミーは見過ごさず、次々と矢を打ち込む。全身に強い痛みが走り続け、その度意識が飛びかける。瞬間、私は霊力の操作を誤ってしまった。私の体は重力に引っ張られ、地面へと落ちて行く。勝利を確信したのか、もう矢による追撃が私を襲うことは無かった。私は、負けを確信した。…………………いや、確信してしまうところだった。私は薄れ行く意識の中で、ある光景を目にした。
優美「(アウクミーが……身体強化を…解いてる……?)」
そこで私は、過去に学んだ。あることを思い出した。
優美「封魔拳!」
私は再び霊力を操作し、落下位置を"アウクミーの近く"になるように調整して、地面に対して封魔拳を放つ。重力による速度が加わった封魔拳は、地面に当たると大きな土煙を上げる。私はその土煙の中で、あることをしてアウクミーから距離を取った。土煙が晴れると、アウクミーは困惑した表情で私を見る。
優美「霊刃!」
そこに私は間髪いれずに攻撃を仕掛ける。アウクミーはそれを避けようとバックステップで距離を取った。
優美「(かかった!)」
アウクミーが地面に着地した瞬間、着地した場所が爆発し、アウクミーの体が空中に浮き上がり、重力に従って地面へと落ちて、アウクミーは気絶した。
錬金術で物質の変換を行うには、"2種類"の方法が存在する。まず一つ目の方法。それは変換したい物質と、同じだけのポイントを持った者を用意する事。土、木、水、金属。この世の物にはそれぞれポイントがあり、変換したい物質と同じだけのポイントを用意出来れば、その物質へと変換することが出来る。だが、この方法は、少し時間がかかる上に、使用した物質は無くなってしまうと言う欠点がある。そこで、今回アウクミーが使ったと思われるのはもう一つの方法である『魔力でのポイントの補填』だ。これは物質の変換時に足りないポイントを魔力で補うと言う方法だ。この方法なら、直ぐに物質の変換を行うことが出来、使う物質の量も少なくすむ。だが、この方法には、一つの欠点があった。それは、物質の変換に魔力を使用すると言う点である。この欠点のため、アウクミーは身体強化に回すべきである魔力も、錬金術へと使用していた。今回は、その隙をついた。アウクミーの近くに封魔拳を放つことで、わざと土煙を上げ、アウクミーの視界を封じている隙に、周囲に墓を設置し、アウクミーに霊刃をわざと避けさせることで、墓を起動。一撃で気絶させることに成功した。
審判「アウクミー·ゴル!気絶によって戦闘不能!よって勝者!赤緑優美!」
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