1 / 110
第1章 独身男の会社員(32歳)が踊ってみた動画を投稿するに至る長い経緯
プロローグ「深い闇の世界で呼ばれた声」
しおりを挟む俺の名前は渡辺純一、職業は会社員で32歳の独身男。
片親で育った一人っ子俺には特に交流のある身内などは居なかったが、そのかわり兄のように慕う人が近くに居た。
自分と同じような境遇だったからなのか隣に住んでいた俺を事あるごとに目をかけてくれ、いつからかその人のことを俺は師匠と呼んでいた。
何で師匠なのかは単純明解。
尊敬できる人だったからだ、憧れでもあった。
自分の目標、つまるところ俺は師匠のような大人になりたかった。
師匠が家庭を持つようになってからも俺はよくお邪魔させてもらっていて、そのつど美人の奥さんは満面の笑みで俺に豪華な手料理を振舞ってくれた。
夫婦揃ってまるで俺を家族のように接してくれて、いた。
訃報を知ったのは半年前、出張先で聞かされた。交差点で信号無視による横からの直撃だったらしい。交通事故の相手は盗難車両を酒気帯びで運転する無免許の未成年。
実名の伏せられた加害者によって3人が乗るステーションワゴンは見るも無残な姿になり、被害車両の搭乗者はうち2人が亡くなった。
奇跡的にも軽症で助かったのは後部座席に乗っていた神海恭子、師匠たちの仲睦まじい3人家族の中で唯一生き残った15歳の一人の女の子。
今から始まるのは俺とその娘との物語。
既に親を亡くしている師匠たちに信頼できる身内はいなかった。
師匠はよく俺と飲んでいる時に「俺の親戚どもは腐っている」と幾度か愚痴を溢していたのを覚えている。そして自分の身に何かあったら恭子の事を気に掛けてやってくれやと溢した愚痴のバツの悪さを誤魔化すように言っていた。
恭子は師匠達の葬儀の後、親類縁者の間で厄介者のように押し付け合いになりながらも、二人の残した僅かな遺産目当ての叔母の家で預かる事となっていた。
師匠の愚痴もあって恭子の事が気がかりだった俺は葬儀から半年も過ぎてしまっていたが、出張先から戻ったその足で恭子の姿を急ぎ見に行った。
結論から言うなれば、壮絶だった。
本当に腐っている人たちだ。家に部屋が余っているのにも関わらず恭子の部屋は遺産の一部で建てられた庭のプレハブ。恭子はいつもそこにいて、家に入るのは食事を取りに行く時だけ。
訪問した時に叔母である人に挨拶がてら恭子の様子を聞いてみると、「最近顔も見てないから知らない」と、そんな言葉が返ってくるだけでまるで他人の扱い。
それに対する怒りより恭子への焦燥感が先走る。
恭子の精神状態への不安と恐怖。
俺は急ぎプレハブに向かう。早くあの子を確認したかった。
ノックもせずに、汗で滑るドアノブをどうにか握りしめて扉を開けた。
「…………おじ、さん」
小さな机と衣類棚しかない部屋の真ん中で一人の女の子はぽつんと座っていた。
その子には表情と呼べるものなんて存在しなかった。視点の定まっていない瞳はまるで死人のようなそれ。
しかし明らかに見てわかる極限な状態にあっても確かに俺のことを認識していて、無表情だが小さくおじさんと呼んでくれた。
暗い闇の世界で恭子が俺を呼んだ。
そんな恭子に俺が掛けた声はきっと無意識に発せられたものだっただろう。
「俺のところに来ないか?」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…
senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。
地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。
クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。
彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。
しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。
悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。
――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。
謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。
ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。
この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。
陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる