大怪獣異世界に現わる ~雇われ労働にテンプレはない~

轆轤百足

文字の大きさ
178 / 357
最終魔戦

超絶的脅威

しおりを挟む
 宇宙生物の攻撃を受けてためだろう、魔王の城は今にも倒壊しそうなありさまであった。
 そして、その城の中庭に直径十メートルはあろう大穴が穿たれていた。底は真っ暗で何も見えない。
 そこが、青肌の美女に案内されてオボロとニオンがたどり着いた場所であった。

「……この穴は、ガンダロスが開けたもののようだね」

 ニオンは大穴を少し覗きこんだあと、女性に問いかけた。
 おそらく、ガンダロスはその得意の変形機能を用いて体の一部を旋回式掘削機ドリルのような物に変形させて、この大穴を開けたのだろう、とニオンは推測した。

「あの巨大なガンダロスは、ここで活動源エネルギーを供給するため、この都市を襲撃したのです。どうぞ中へ、有害なものは除去済みです」
「うむ、分かった」

 彼女の返答に、ニオンは頷く。
 星外魔獣コズミックビーストは、機械や装置などから放たれる電磁波やエネルギーを感じて襲撃してくる危険な存在。
 どうやら、それを引き寄せた何かはこの下のようだ。

「……まあ、そのなんだ。この下に、ガンダロスを誘き寄せたものがあるのか?」

 オボロも同じく、大穴を覗きこんだ。
 むろんオボロも星外魔獣が機械的なエネルギーに引き寄せられるのは理解している。

「……どうやら、この城の地下には莫大なエネルギーを発生させるシステムがあるようですね」

 そう言ってニオンは、穴の中に飛び降りた。

「ああ、おい! どういうことだ?」

 オボロも続いて穴の中に向かって飛びこんだ。深さは十五メートル程だろう、底に着地した二十トンを越える肉体は大いに暗い空間を揺るがした。そして、いくつかの機材らしき物が倒れたような音が響いた。

「……暗くて、見えんな」

 着地したオボロは暗い地下室の空間を見渡す。しかし光源がないため、何も見えない。

「核融合炉ですね。水素やヘリウムなどの軽元素を反応させて膨大なエネルギーを発生させる装置と言っておきましょう」

 ニオンの声が暗い空間に反響すると、パッと全体が明るくなった。彼が照明の電源を入れたのだろう。
 そして目の前に現れたのは、高さ八メートル程あろう円柱状の装置であった。その周囲にはコンソールやモニターのような物がある。

「人工太陽を発生させる装置とも言えますね。あきらかに現代には不似合いな技術です」

 そう言ってニオンは円柱状の装置を見上げる。
 このエネルギー発生メカニズムは、この世の基準ではありえない技術であった。
 ならなぜ、そんなものが存在できているのか、答えは一つである。

「転生者である魔族が前世の知識を利用して開発したのだろうね。今の文明レベルでは、こんなものはありえない」

 ニオンは、そう言って顔をしかめた。

「はい、その通りです。なぜ魔族達が、これ程のエネルギー発生装置を作り上げることができたのか、その理由が異界の知識です」

 そう言いながら、遅れてやって来た青肌の美女はニオンの傍らに佇んだ。
 そして、ニオンを見つめた。

「その頭脳と知識、やはりあの方から直に教授を受けただけのことはありますね」

 すると彼女は近くにあったデスクから何かを掴みとった。

「この融合炉を製作したのは、魔王軍幹部のハルと言う少女でした」

 女性がデスクから取ったものは、誰かの日記のようであった。そして話を続けた。

「彼女は以前の世界では、人工太陽の研究を行っていた天才少女だったのです。……でも、あるとき実験中に事故が起きて、彼女は放射線を浴びてしまったのです。高線量被曝により彼女は染色体を破壊され、細胞生成することが出来なくなりました。そして、彼女は身体中から体液を滲み出させて、苦痛にもがきながら死んだのです。……それへの復讐のせいか、彼女はこの世で人工太陽を開発させたのです」

 そう言って、青肌の美女は日記をデスクの上に戻した。
 思うところがあったのか、ニオンは終始無言で彼女の話を聞いていた。

「……とても哀れな話です。しかし、この人工太陽が思いもよらない存在を引き寄せたのも事実」

 女性は、やや険しい表情を見せる。 

「この装置により、もうすでに二体の怪物がこの国に飛来しています。甲殻こうかくマグマじゅうグランドドス、大凶獣だいきょうじゅうジェノラと呼ばれる個体です」

 それを聞いて、ニオンはカッと目を見開いた。

「その二体は、ただの宇宙生物ではないのだろう。銀河系を渡り歩く超絶的な存在。単独で惑星の文明を滅ぼす怪物の中の怪物。……星外超獣せいがいちょうじゅう」     
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、そして試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私が、 魔王討伐の旅路の中で、“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※「小説家になろう」にも掲載。(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...