大怪獣異世界に現わる ~雇われ労働にテンプレはない~

轆轤百足

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潜みし脅威

間章・魔術に関する機密文章

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 『魔術』それは人類が五千年前から使い始めた神秘の力とされている。
 仮説ではあるが、その仕組みは魔力と言う特有の精神的エネルギーを用いて周囲に満ちている魔粒子を一ヵ所に誘導し圧縮して、さらに思考おもいを込めることで超常の現象を発現させることができる、と世論で公表されている。
 しかしこれは大きな誤りであり、魔術は神秘でも奇跡でもなく、ただの自然科学の利用である。
 ……人類が魔術に依存しすぎたがためか、科学的な分析が世に行われず、このような間違った解釈が認知されてしまったと思われる。




《魔粒子》

 魔粒子は高度な知性体の思考波のみに反応する思考反応粒子とも呼ばれる。そのため使用者の思考を具現化させる性質をもった物質とされている。
 しかし、その正体は異次元物質を含有した高機能性極小構造体(一種のナノマシン)であり、人の思考に反応する超小型の機械である。
 その組成からして半異次元物質はんいじげんぶっしつとも言えるだろう。
 異次元物質を含んでいるためか別次元への干渉作用があり、これによって異次元からエネルギーと情報を供給して魔術(使用者の思考の具現化)の発現を行っているのである。
 ……この異次元とは、おそらく神が存在している空間ではないかと思われる。
 またある種のセーフティのためか、発現させる魔術に見あった量の魔粒子の圧縮と詠唱がなされなければ、魔術は発現しないようにプログラムされている。(しかし一部ではあるが無詠唱でも魔術を発現させられる者が存在し、これは何らかの固有の遺伝子の働きによるものとされる)
 ただし、圧縮せずとも通訳機能のような働きはするようだ。
 



《使用者の人格の判別》

 ……魔粒子は善くも悪くも人の思考に反応するためか、扱ってる魔術で大方使用者の人格が理解できる。
 強さや力を求める者は、強力な攻撃魔術を会得できるが、逆に治癒の技術は中々身に付かず、発現できるようになっても効力は非常に弱い。
 逆に他者に対し深い愛情を抱く者は、優れた治癒魔術を使用できるようになるが、攻撃のような人を傷つける魔術は一切身に付かない。




《魔粒子の制御》

 魔力と呼ばれる精神的エネルギーを用いて、魔粒子を誘導し圧縮するとされているが、無論のことこの理屈も間違いである。
 実は、魔術を操れる者の細胞内には特殊な小器官が存在しており、この器官が魔粒子に作用する力の場を形成して誘導や圧縮を行っている。(この制御には高い集中力が求められる)
 その小器官はオド=ナトロムと呼ばれ、約七百年前に司令官が発見して命名した細胞内器官である。
 オド=ナトロムの量には個人差があり、その数値が高ければ強大な力の場を発生させることでき、膨大な魔粒子を圧縮し強力な魔術を行使することができる。
 逆に、数値が少なければ小規模の魔粒子しか圧縮できないため、弱い魔術しか使えない。
 世論で認知されている魔力量とは、このオド=ナトロムの数値と言えるだろう。
 オド=ナトロムは機能させ続けると徐々に疲労状態となっていき、それが魔術の使用者の疲弊と言う形であらわれてくる。言うなれば、これが魔力が尽きた状態である。
 また、魔術を操れない者は最初から体内にオド=ナクロムを持っていない。つまり、これが魔力を持たない者である。



《魔術の将来性》

 このまま人類が科学技術に手を出さなければ、変わることなくあらゆる分野の主力となり続けると思われる。
 しかしその原理状、致命的な弱点を抱えている。
 魔術の強弱問わず、その根源は魔粒子と言う同一のものであるため、魔粒子の圧縮が阻害されれば魔導士達は目も当てられないものになるだろう。
 ……公表こそされてはいないが、魔術を無力化する技術は確立済みである。
 いずれにせよ、いつ魔術が不要の遺物になってもおかしくない状態であろう。
 






         執筆者:スチームジャガー研究局副局長 兼 アズマ銀河連合軍技術分析官 マエラ・ハミルトン
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