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都の北門近く。
空気を震わせるような咆哮が響き渡り、人々の悲鳴が混じり合う。
黒い瘴気を纏った魔物たちが群れをなし、畑や家屋を蹂躙していた。
私は神殿騎士に囲まれながら前へ進む。
けれど胸は高鳴り、恐怖と使命感が入り交じっている。
「……怖いか?」
横に立つアレン殿下が、低く問いかける。
「……少し。でも、それ以上に……守りたいんです」
「そうか」
一瞬だけ彼の瞳が和らぎ、すぐに鋭さを取り戻す。
「ならば俺が剣を振るう。お前は後ろから、力を注げ」
私は頷き、両手を胸に組む。
聖女の力――まだ慣れないけれど、きっと役に立てるはず。
「リディア!」
後方から馬に乗った姿が駆けてきた。
エドワード殿下だった。
銀の甲冑に身を包み、必死の形相で私の名を呼ぶ。
「お前を守るのは俺だ! 前に出るな!」
「殿下……」
「笑わせるな」
アレン殿下が即座に切り捨てる。
「守るどころか、貴様は彼女を侮辱し、捨てた男だ。どの口で言う」
「俺は……間違っていた! リディアを失って気づいたんだ! もう二度と離さない!」
「だからといって許されると思うな」
二人の声がぶつかり合い、火花を散らす。
だがその時――魔物の咆哮が再び響いた。
会話を遮るように、巨大な狼型の魔物が兵を薙ぎ倒し、こちらへ突進してくる。
「リディア、下がれ!」
「リディア、こっちへ!」
二人の声が重なる。
私は迷わず、両手を広げた。
「――神よ、癒しと守りの光を!」
眩い輝きが私の身体から溢れ、前線に広がった。
倒れていた兵士の傷が瞬く間に癒え、恐怖に凍っていた心に勇気が満ちる。
「す、すげえ……!」
「本物の聖女様だ!」
兵士たちが歓声を上げる。
狼型の魔物が迫るが、その足は光に怯んで鈍った。
そこへアレン殿下が鋭い剣閃を放ち、一閃で首を落とす。
「リディア、よくやった」
血の飛沫も浴びぬように振るった剣を納め、彼は私を振り返る。
金の瞳が、誇らしげに細められる。
胸が熱くなる。
でもその横で、エドワード殿下も負けじと叫んだ。
「リディア! やはりお前は素晴らしい! 俺の隣にふさわしいのはお前だけだ!」
私は思わず息を呑む。
彼の必死な声は、かつて私が求めてやまなかった言葉そのものだったから。
「……っ」
心が揺れる。
けれど、その瞬間。
「聞き飽きた」
アレン殿下が私の腰を抱き寄せ、片腕で支え上げるように持ち上げた。
「きゃっ……!」
不意を突かれ、私は彼の胸にしがみつく。
「お前が望もうと望むまいと――俺はもう決めている。リディアを誰にも渡さない」
耳元に囁かれた低い声に、全身が震える。
呼吸が乱れて、声も出せない。
「っ……アレン殿下……」
「殿下!? 貴様……リディアを何だと思っている!」
エドワード殿下の怒声が飛ぶ。
アレン殿下は一歩も怯まず、私を抱えたまま彼を睨み返す。
「宝だ。二度と傷つけさせない。俺が命を懸けて守る」
「……っ!」
その言葉に、心臓が痛いほど跳ねた。
本気の声だった。
戦いは続いた。
私は光で兵を癒し、アレン殿下とエドワード殿下は最前線で剣を振るう。
二人の力量は拮抗していて、どちらも強い。
けれど戦場の合間、視線を向ける先は――いつも私だった。
「リディア、大丈夫か!」
「リディア、無理をするな!」
二人の声に囲まれながら、私は戦場を駆け抜けた。
やがて魔物の群れは退けられ、都に平穏が戻った。
人々は聖女の力を目の当たりにし、私を称える声で溢れた。
けれど戦いの後、私はふらりと膝をついた。
慣れない力の使用で、魔力が削られていたのだ。
「リディア!」
駆け寄ってきた二人の王子。
同時に差し伸べられる手。
「俺に掴まれ!」
「いや、俺だ!」
視線が交差する。
迷う間もなく、アレン殿下が私を抱き上げた。
「っ……!」
「悪いが、先に取らせてもらう」
驚きと羞恥で顔が熱くなる。
でも彼の胸の中は、不思議と安心できる温もりだった。
「リディア……!」
悔しげに歯を食いしばるエドワード殿下の声が追いかけてきた。
神殿に戻った後。
アレン殿下は私を部屋まで運び、そっと寝台に下ろした。
「……俺の言った通りだろう。お前は俺の後ろにいればよかった」
「でも、皆を守りたくて……」
「そこがまた、お前らしい」
彼は私の頬に触れた。
指先が優しく、心臓が跳ねる。
「リディア。もう一度だけ言う」
金の瞳が真剣に私を射抜く。
「お前を誰にも渡さない。必ず俺の隣に来てもらう」
耳まで熱くなる。
返事をしようとした、その時――
「リディア!」
扉が勢いよく開かれ、エドワード殿下が飛び込んできた。
息を切らし、必死な顔で私を見つめる。
「俺も……諦めない! リディア、お前は俺のものだ!」
空気が張り詰めた。
二人の王子の視線がぶつかり、私を巡る争いが――さらに激しさを増していく。
私は唇を噛む。
どちらかを選ぶなんて、今はできない。
空気を震わせるような咆哮が響き渡り、人々の悲鳴が混じり合う。
黒い瘴気を纏った魔物たちが群れをなし、畑や家屋を蹂躙していた。
私は神殿騎士に囲まれながら前へ進む。
けれど胸は高鳴り、恐怖と使命感が入り交じっている。
「……怖いか?」
横に立つアレン殿下が、低く問いかける。
「……少し。でも、それ以上に……守りたいんです」
「そうか」
一瞬だけ彼の瞳が和らぎ、すぐに鋭さを取り戻す。
「ならば俺が剣を振るう。お前は後ろから、力を注げ」
私は頷き、両手を胸に組む。
聖女の力――まだ慣れないけれど、きっと役に立てるはず。
「リディア!」
後方から馬に乗った姿が駆けてきた。
エドワード殿下だった。
銀の甲冑に身を包み、必死の形相で私の名を呼ぶ。
「お前を守るのは俺だ! 前に出るな!」
「殿下……」
「笑わせるな」
アレン殿下が即座に切り捨てる。
「守るどころか、貴様は彼女を侮辱し、捨てた男だ。どの口で言う」
「俺は……間違っていた! リディアを失って気づいたんだ! もう二度と離さない!」
「だからといって許されると思うな」
二人の声がぶつかり合い、火花を散らす。
だがその時――魔物の咆哮が再び響いた。
会話を遮るように、巨大な狼型の魔物が兵を薙ぎ倒し、こちらへ突進してくる。
「リディア、下がれ!」
「リディア、こっちへ!」
二人の声が重なる。
私は迷わず、両手を広げた。
「――神よ、癒しと守りの光を!」
眩い輝きが私の身体から溢れ、前線に広がった。
倒れていた兵士の傷が瞬く間に癒え、恐怖に凍っていた心に勇気が満ちる。
「す、すげえ……!」
「本物の聖女様だ!」
兵士たちが歓声を上げる。
狼型の魔物が迫るが、その足は光に怯んで鈍った。
そこへアレン殿下が鋭い剣閃を放ち、一閃で首を落とす。
「リディア、よくやった」
血の飛沫も浴びぬように振るった剣を納め、彼は私を振り返る。
金の瞳が、誇らしげに細められる。
胸が熱くなる。
でもその横で、エドワード殿下も負けじと叫んだ。
「リディア! やはりお前は素晴らしい! 俺の隣にふさわしいのはお前だけだ!」
私は思わず息を呑む。
彼の必死な声は、かつて私が求めてやまなかった言葉そのものだったから。
「……っ」
心が揺れる。
けれど、その瞬間。
「聞き飽きた」
アレン殿下が私の腰を抱き寄せ、片腕で支え上げるように持ち上げた。
「きゃっ……!」
不意を突かれ、私は彼の胸にしがみつく。
「お前が望もうと望むまいと――俺はもう決めている。リディアを誰にも渡さない」
耳元に囁かれた低い声に、全身が震える。
呼吸が乱れて、声も出せない。
「っ……アレン殿下……」
「殿下!? 貴様……リディアを何だと思っている!」
エドワード殿下の怒声が飛ぶ。
アレン殿下は一歩も怯まず、私を抱えたまま彼を睨み返す。
「宝だ。二度と傷つけさせない。俺が命を懸けて守る」
「……っ!」
その言葉に、心臓が痛いほど跳ねた。
本気の声だった。
戦いは続いた。
私は光で兵を癒し、アレン殿下とエドワード殿下は最前線で剣を振るう。
二人の力量は拮抗していて、どちらも強い。
けれど戦場の合間、視線を向ける先は――いつも私だった。
「リディア、大丈夫か!」
「リディア、無理をするな!」
二人の声に囲まれながら、私は戦場を駆け抜けた。
やがて魔物の群れは退けられ、都に平穏が戻った。
人々は聖女の力を目の当たりにし、私を称える声で溢れた。
けれど戦いの後、私はふらりと膝をついた。
慣れない力の使用で、魔力が削られていたのだ。
「リディア!」
駆け寄ってきた二人の王子。
同時に差し伸べられる手。
「俺に掴まれ!」
「いや、俺だ!」
視線が交差する。
迷う間もなく、アレン殿下が私を抱き上げた。
「っ……!」
「悪いが、先に取らせてもらう」
驚きと羞恥で顔が熱くなる。
でも彼の胸の中は、不思議と安心できる温もりだった。
「リディア……!」
悔しげに歯を食いしばるエドワード殿下の声が追いかけてきた。
神殿に戻った後。
アレン殿下は私を部屋まで運び、そっと寝台に下ろした。
「……俺の言った通りだろう。お前は俺の後ろにいればよかった」
「でも、皆を守りたくて……」
「そこがまた、お前らしい」
彼は私の頬に触れた。
指先が優しく、心臓が跳ねる。
「リディア。もう一度だけ言う」
金の瞳が真剣に私を射抜く。
「お前を誰にも渡さない。必ず俺の隣に来てもらう」
耳まで熱くなる。
返事をしようとした、その時――
「リディア!」
扉が勢いよく開かれ、エドワード殿下が飛び込んできた。
息を切らし、必死な顔で私を見つめる。
「俺も……諦めない! リディア、お前は俺のものだ!」
空気が張り詰めた。
二人の王子の視線がぶつかり、私を巡る争いが――さらに激しさを増していく。
私は唇を噛む。
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