2 / 6
2
しおりを挟む
舞踏会から三日後、私は王都を離れ、父の所領の中でも最も離れた北端の村「リュゼ」に身を移していた。
王都での騒動は瞬く間に広がり、社交界は今なお混乱の渦中にあるらしい。王太子の暴走、神殿の誤認、そして「真の聖女」の出現。そのすべてが一夜にして露呈し、誰もが自分の立場と将来を読み直しているという。
——その混乱の中心にいる私本人はというと。
「ふう……やっと落ち着いたかしら」
リュゼの村長宅を借り受けた私は、村外れの丘に建つ小さな家の縁側で、ゆっくりとお茶を啜っていた。鳥のさえずり、風に揺れる木々の音、遠くで羊が鳴く声。すべてが穏やかで、心を撫でてくれる。
加護を持つ者とはいえ、私は人間だ。無理に騒ぎの中に身を置く理由はない。むしろ、静かな場所で自分の力を整理し、改めて見つめ直す時間こそが必要だと感じていた。
「……あの時、どうして神の加護が顕現したのかしら」
私に宿る“七神の加護”——その存在は、私自身すら完全には把握していなかった。いえ、正確に言えば“感じていた”が、“知っていた”わけではないのだ。
幼い頃から、私は何かに守られているような不思議な感覚を持っていた。危険を事前に察知したり、人の嘘を自然と見抜いたり、ありえないほど幸運な出来事に恵まれたり——けれどそれらすべてが、神の加護によるものだと知ったのは、ほんの三日前のことだ。
七神。それはこの世界の創世を担った七柱の神々——火、水、風、土、光、闇、そして“理”。それぞれの神が持つ加護は、普通なら一生に一つ授かれば奇跡と言われている。
けれど私は、七つすべてを持っていた。
「……いったい、なぜ?」
私は問いを胸に留めたまま、手元の紅茶に口をつけた。すると、不意に扉の外から、ひょこりと顔を覗かせる影があった。
「リシェル様~! 今日も村の巡回、一緒に行ってくださいます?」
顔を覗かせたのは、村の少年・トニだった。栗色の髪をした元気な子で、ここに来てから私の案内役を買って出てくれている。
「ええ、もちろん。もう少ししたら一緒に行きましょうね」
「わーいっ! じゃあ、ヤギのとこ行って待ってます!」
元気よく走り去るトニの姿に、私はふと微笑みを漏らした。ここに来てから、私は「公爵令嬢」でも「聖女」でもなく、ただの“リシェル”として過ごしている。誰も私を特別扱いせず、ただ普通の客人として接してくれる。そのことが、何よりも嬉しかった。
しかし——その穏やかな日々が、長く続くとは限らなかった。
「リシェル様、大変だーっ!」
村を一通り回り終え、畑仕事の手伝いをしていたそのとき。息を切らしてトニが駆け込んできた。顔は青ざめ、手は震えている。
「落ち着いて。何があったの?」
「東の森に……魔獣が……! 大きくて、牙がすごくて……!」
魔獣。
それはこの世界において、最も危険な存在の一つだ。魔物とは異なり、魔獣は強い魔力と自我を持ち、人に対して執拗な攻撃性を示す。
「村の人たちが今、森の入り口で見張ってるけど……武器もないし……!」
「わかったわ。すぐに向かいましょう」
私は躊躇なく立ち上がる。魔獣を相手にするのは、普通の貴族令嬢では到底無理な話。けれど私は、普通ではない。
この身には、七神の力が宿っているのだから。
森の入り口に到着すると、数人の村人たちが粗末な槍を手に立ちすくんでいた。中には足を震わせている者もいる。
そして——森の奥から、確かに“それ”が姿を現した。
黒い毛並みに包まれた、巨大な狼のような魔獣。その眼光は紅く、口元には涎が垂れ、地を踏み鳴らすたびに小さな振動が走る。
「グルルル……ッ!」
——《黒牙の魔狼》。B級魔獣だ。人ひとりどころか、小さな村ひとつを壊滅させる力を持っている。
「皆さん、下がっていてください」
私がそう言った瞬間、魔狼が動いた。音もなく、風を切る速さでこちらに向かって跳躍する。
だが——その時。
「——《風の盾》」
私が静かに唱えると同時に、七神の一柱・風神の力が発動した。透明な風の障壁が魔狼を受け止め、弾き返す。
魔狼が地に転がりながらも再び構え直すが、私はさらに手を前に掲げる。
「——《火の槍》」
今度は火神の力。空間から燃え盛る赤い槍が現れ、一直線に魔狼の腹を貫いた。
「グアアアアアアア!!」
断末魔の咆哮と共に、魔狼の身体が崩れ落ちる。
——わずか、数十秒の出来事だった。
村人たちは、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
「……すご……」「何、今の……」「リシェル様、まるで伝説の魔法使いみたい……」
私は微笑みながら、少しだけ肩をすくめて答えた。
「ただの“神の加護”ですわ。少し、派手だったかしら?」
その日の夜。私は家の中で静かに瞑想をしていた。
魔獣を退けたとき、体の内側から何かが目覚める感覚があった。それは単なる加護ではない、もっと深く、もっと根源的な何か。
すると、ふいに声が響いた。
『リシェルよ……』
空間がゆらぎ、まばゆい光の中から、一人の“神”が姿を現した。銀の髪に淡い青の瞳、透明な衣をまとったその姿は、明らかに人のそれではない。
「あなたは……」
『我は“理の神”イゼル。そなたに宿る七柱の一柱である』
ついに——彼らが動き始めたのだ。神々が、私に語りかける時が来た。
『目覚めよ、リシェル。お前の運命は、王都の茶番で終わるものではない』
「……何が、始まるの?」
『世界の真実。そして、神と人と魔の戦い——その鍵は、そなたが握っている』
まるで夢のような光景の中、私は確かに理解した。
これから始まるのは、ただの“婚約破棄のざまぁ劇”ではない。
——神々の意思と力を背負い、世界の運命を動かす“物語”なのだと。
王都での騒動は瞬く間に広がり、社交界は今なお混乱の渦中にあるらしい。王太子の暴走、神殿の誤認、そして「真の聖女」の出現。そのすべてが一夜にして露呈し、誰もが自分の立場と将来を読み直しているという。
——その混乱の中心にいる私本人はというと。
「ふう……やっと落ち着いたかしら」
リュゼの村長宅を借り受けた私は、村外れの丘に建つ小さな家の縁側で、ゆっくりとお茶を啜っていた。鳥のさえずり、風に揺れる木々の音、遠くで羊が鳴く声。すべてが穏やかで、心を撫でてくれる。
加護を持つ者とはいえ、私は人間だ。無理に騒ぎの中に身を置く理由はない。むしろ、静かな場所で自分の力を整理し、改めて見つめ直す時間こそが必要だと感じていた。
「……あの時、どうして神の加護が顕現したのかしら」
私に宿る“七神の加護”——その存在は、私自身すら完全には把握していなかった。いえ、正確に言えば“感じていた”が、“知っていた”わけではないのだ。
幼い頃から、私は何かに守られているような不思議な感覚を持っていた。危険を事前に察知したり、人の嘘を自然と見抜いたり、ありえないほど幸運な出来事に恵まれたり——けれどそれらすべてが、神の加護によるものだと知ったのは、ほんの三日前のことだ。
七神。それはこの世界の創世を担った七柱の神々——火、水、風、土、光、闇、そして“理”。それぞれの神が持つ加護は、普通なら一生に一つ授かれば奇跡と言われている。
けれど私は、七つすべてを持っていた。
「……いったい、なぜ?」
私は問いを胸に留めたまま、手元の紅茶に口をつけた。すると、不意に扉の外から、ひょこりと顔を覗かせる影があった。
「リシェル様~! 今日も村の巡回、一緒に行ってくださいます?」
顔を覗かせたのは、村の少年・トニだった。栗色の髪をした元気な子で、ここに来てから私の案内役を買って出てくれている。
「ええ、もちろん。もう少ししたら一緒に行きましょうね」
「わーいっ! じゃあ、ヤギのとこ行って待ってます!」
元気よく走り去るトニの姿に、私はふと微笑みを漏らした。ここに来てから、私は「公爵令嬢」でも「聖女」でもなく、ただの“リシェル”として過ごしている。誰も私を特別扱いせず、ただ普通の客人として接してくれる。そのことが、何よりも嬉しかった。
しかし——その穏やかな日々が、長く続くとは限らなかった。
「リシェル様、大変だーっ!」
村を一通り回り終え、畑仕事の手伝いをしていたそのとき。息を切らしてトニが駆け込んできた。顔は青ざめ、手は震えている。
「落ち着いて。何があったの?」
「東の森に……魔獣が……! 大きくて、牙がすごくて……!」
魔獣。
それはこの世界において、最も危険な存在の一つだ。魔物とは異なり、魔獣は強い魔力と自我を持ち、人に対して執拗な攻撃性を示す。
「村の人たちが今、森の入り口で見張ってるけど……武器もないし……!」
「わかったわ。すぐに向かいましょう」
私は躊躇なく立ち上がる。魔獣を相手にするのは、普通の貴族令嬢では到底無理な話。けれど私は、普通ではない。
この身には、七神の力が宿っているのだから。
森の入り口に到着すると、数人の村人たちが粗末な槍を手に立ちすくんでいた。中には足を震わせている者もいる。
そして——森の奥から、確かに“それ”が姿を現した。
黒い毛並みに包まれた、巨大な狼のような魔獣。その眼光は紅く、口元には涎が垂れ、地を踏み鳴らすたびに小さな振動が走る。
「グルルル……ッ!」
——《黒牙の魔狼》。B級魔獣だ。人ひとりどころか、小さな村ひとつを壊滅させる力を持っている。
「皆さん、下がっていてください」
私がそう言った瞬間、魔狼が動いた。音もなく、風を切る速さでこちらに向かって跳躍する。
だが——その時。
「——《風の盾》」
私が静かに唱えると同時に、七神の一柱・風神の力が発動した。透明な風の障壁が魔狼を受け止め、弾き返す。
魔狼が地に転がりながらも再び構え直すが、私はさらに手を前に掲げる。
「——《火の槍》」
今度は火神の力。空間から燃え盛る赤い槍が現れ、一直線に魔狼の腹を貫いた。
「グアアアアアアア!!」
断末魔の咆哮と共に、魔狼の身体が崩れ落ちる。
——わずか、数十秒の出来事だった。
村人たちは、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
「……すご……」「何、今の……」「リシェル様、まるで伝説の魔法使いみたい……」
私は微笑みながら、少しだけ肩をすくめて答えた。
「ただの“神の加護”ですわ。少し、派手だったかしら?」
その日の夜。私は家の中で静かに瞑想をしていた。
魔獣を退けたとき、体の内側から何かが目覚める感覚があった。それは単なる加護ではない、もっと深く、もっと根源的な何か。
すると、ふいに声が響いた。
『リシェルよ……』
空間がゆらぎ、まばゆい光の中から、一人の“神”が姿を現した。銀の髪に淡い青の瞳、透明な衣をまとったその姿は、明らかに人のそれではない。
「あなたは……」
『我は“理の神”イゼル。そなたに宿る七柱の一柱である』
ついに——彼らが動き始めたのだ。神々が、私に語りかける時が来た。
『目覚めよ、リシェル。お前の運命は、王都の茶番で終わるものではない』
「……何が、始まるの?」
『世界の真実。そして、神と人と魔の戦い——その鍵は、そなたが握っている』
まるで夢のような光景の中、私は確かに理解した。
これから始まるのは、ただの“婚約破棄のざまぁ劇”ではない。
——神々の意思と力を背負い、世界の運命を動かす“物語”なのだと。
536
あなたにおすすめの小説
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
無実ですが、喜んで国を去ります!
霜月満月
恋愛
お姉様曰く、ここは乙女ゲームの世界だそうだ。
そして私は悪役令嬢。
よし。ちょうど私の婚約者の第二王子殿下は私もお姉様も好きじゃない。濡れ衣を着せられるのが分かっているならやりようはある。
━━これは前世から家族である、転生一家の国外逃亡までの一部始終です。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました
さくら
恋愛
王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。
ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。
「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?
畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。
婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ
鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。
平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」
婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。
彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。
二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。
……はずなのに。
邸内で起きる不可解な襲撃。
操られた侍女が放つ言葉。
浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。
「白の娘よ。いずれ迎えに行く」
影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。
守るために剣を握る公爵。
守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。
契約から始まったはずの二人の関係は、
いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。
「君を奪わせはしない」
「わたくしも……あなたを守りたいのです」
これは――
白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、
覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。
---
婚約破棄?ありがとうございます!では、お会計金貨五千万枚になります!
ばぅ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ!」
「毎度あり! お会計六千万金貨になります!」
王太子エドワードは、侯爵令嬢クラリスに堂々と婚約破棄を宣言する。
しかし、それは「契約終了」の合図だった。
実は、クラリスは王太子の婚約者を“演じる”契約を結んでいただけ。
彼がサボった公務、放棄した社交、すべてを一人でこなしてきた彼女は、
「では、報酬六千万金貨をお支払いください」と請求書を差し出す。
王太子は蒼白になり、貴族たちは騒然。
さらに、「クラリスにいじめられた」と泣く男爵令嬢に対し、
「当て馬役として追加千金貨ですね?」と冷静に追い打ちをかける。
「婚約破棄? かしこまりました! では、契約終了ですね?」
痛快すぎる契約婚約劇、開幕!
『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」
その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。
有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、
王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。
冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、
利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。
しかし――
役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、
いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。
一方、
「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、
癒しだけを与えられた王太子妃候補は、
王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。
ざまぁは声高に叫ばれない。
復讐も、断罪もない。
あるのは、選ばなかった者が取り残され、
選び続けた者が自然と選ばれていく現実。
これは、
誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。
自分の居場所を自分で選び、
その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。
「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、
やがて――
“選ばれ続ける存在”になる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる