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王都ルシエルの朝は、いつも穏やかだ。
噴水の水音、白い鳩の鳴き声、遠くで響く教会の鐘。
けれどこの日だけは、胸の奥がざわついて仕方がなかった。
――王命による召喚状。
それは、私の過去を再び引きずり出そうとするものだった。
「アリア、あの書状の内容を、俺も確認した」
朝の執務室。
窓辺に立つカイン様の横顔は、いつもより険しい。
青い瞳が書状を睨むように見つめていた。
「……“再審議”という言葉が気になります」
「ああ。おそらく、レインフォード家の継承権を狙っている」
レインフォード家――それは私の生家。
だが、数年前に父が病没し、領地は王家に吸収された。
もう、私に権利などないはず。
なのに、なぜ今さら……?
私が不安を覚えていると、カイン様は静かに私の手を取った。
「アリア、これはお前が悪いわけじゃない。だが……一つ、話しておかねばならないことがある」
その声音に、心臓が跳ねる。
彼が椅子を引き、向かいに座ると、静かに言葉を続けた。
「俺は、ただの“英雄”じゃない」
「……え?」
「ルグラン王家の、第二王子だ」
――息が止まった。
言葉の意味を理解するまで、数秒かかった。
けれど、彼の真剣な表情が冗談ではないと教えてくれる。
「カイン……さまが、王族……?」
「幼い頃に王位継承争いを避けるため、身分を隠されて育てられた。今は名目上、侯爵として表に出ているが、実際には国政にも関わっている」
「……そんな、大事な方が、なぜ私なんかを……」
「“なんか”ではない」
彼の声が、強く響いた。
「お前は、俺がこの国を選んだ理由だ。
和平の使者としてお前の国を訪れた時、初めて民を思って涙を流す貴族を見た。……あの日から、ずっと心に残っていた」
彼の瞳がまっすぐに私を見つめている。
その光に包まれて、思わず視線をそらせなかった。
「……そんな風に言ってくださるなんて、恐れ多いです」
「恐れる必要はない。俺はもう決めた。
お前を、王妃として迎える」
「――っ!?」
まるで時が止まったようだった。
そんな重大な言葉を、どう受け止めればいいのか分からない。
ただ、胸の奥が熱くなって、涙が滲んだ。
「……カイン様、本気で……?」
「ああ。お前を“守る”だけでは足りない。これからは、共に歩みたい」
そう言って微笑む彼の顔は、優しくて、どこか寂しげでもあった。
けれど、その温もりに触れると、不思議と怖くなかった。
昼下がり。
庭園のベンチで紅茶を飲んでいると、リース執事が静かに近づいてきた。
「アリア様、少しお時間をいただけますか」
「ええ、もちろん」
彼は深刻な顔で言った。
「今朝、王城からの密使がもう一通。――“アリア様の母君”に関する資料が発見されたとのことです」
「母……?」
私は息を呑んだ。
母は私が幼い頃に亡くなったと聞いていた。病気だと。
けれど、リース執事は首を振る。
「どうやら、それが事実ではない可能性がございます」
頭が真っ白になる。
彼が差し出した古びた封筒には、見覚えのある印章――レインフォード家の紋章が刻まれていた。
震える手で開くと、母の筆跡でこう書かれていた。
“アリアへ。
もしこの手紙を読む日が来たら、あなたはもう安全な場所にいるでしょう。
だが覚えておきなさい。あなたの血には、王家の“第一の花”の印が流れている。
その血を狙う者が現れたなら――必ず、ルグランを頼りなさい。”
「……王家の、第一の花……?」
私は呆然とつぶやいた。
「“第一の花”とは、王権継承の象徴です」
カイン様が背後から静かに言葉を重ねる。
「つまり、アリア。お前の母は、王族の血を引いていたということだ」
「――そんな……!」
驚愕で息を飲む。
けれど、すぐに理解した。
だからこそ、父は急に病に倒れ、領地は取り上げられたのだ。
“王家の血”が、自国の王にとって邪魔だったから。
手が震える。
それを見たカイン様が、そっと手を包んだ。
「だからこそ、彼らはお前を呼び戻そうとしている。お前の血を、政の道具にするために」
「……そんなの、もう嫌です。あの国に戻るなんて」
「戻さない。俺がいる」
その言葉に、涙が溢れた。
彼の腕が私をそっと抱きしめる。
胸に顔を埋めると、心臓の鼓動が聞こえた。
「アリア。俺はこの国の王子であり、お前の味方でもある。
だが、この件はおそらく国を巻き込むことになる。覚悟はあるか?」
「はい」
即答だった。
もう、逃げるのは嫌だった。
その夜。
私は眠れずにいた。
月明かりがカーテン越しに差し込み、静かな屋敷がやけに広く感じる。
そんな時、扉をノックする音。
「アリア、起きているか?」
「カイン様?」
寝巻のまま扉を開けると、彼が静かに立っていた。
「外に出よう。少し風に当たった方がいい」
庭園に出ると、夜風が頬を撫でる。
星空が広がり、彼の銀髪が光を受けて揺れた。
「……俺も昔は、お前と同じようにすべてを失ったことがある」
「え?」
「王子として生まれながら、母が平民出身だという理由で、王位継承から外された。
けれど、母は“それでも人を愛せ”と言ってくれた」
彼の瞳が、少しだけ遠くを見ていた。
「だから、お前を見た時、思い出したんだ。必死に誰かを想うその姿を」
「……カイン様」
言葉が出なかった。
ただ、胸が熱くて苦しいほどだった。
彼が私の頬に触れ、穏やかに微笑む。
「この先、何があっても――お前を、手放すつもりはない」
その一言で、世界が少しだけ明るく見えた。
翌朝、王城からの第二報が届く。
そこには――
『アリア・レインフォード殿の身柄を拘束するため、特使を派遣する』
という冷たい一文。
リース執事が顔をしかめる。
「……これは、ただの召喚ではありません。彼らは本気でアリア様を連れ戻すつもりです」
カイン様は静かに書状を握りつぶした。
そして、誰にも聞こえないほどの声で言った。
「……ならば、こちらも動くしかないな」
彼の瞳には、決意の炎が宿っていた。
ルグラン王国の第二王子として、そして――私の“夫となる人”として。
私はその横顔を見つめながら、心の中で小さく誓った。
――もう、誰にも奪わせない。
噴水の水音、白い鳩の鳴き声、遠くで響く教会の鐘。
けれどこの日だけは、胸の奥がざわついて仕方がなかった。
――王命による召喚状。
それは、私の過去を再び引きずり出そうとするものだった。
「アリア、あの書状の内容を、俺も確認した」
朝の執務室。
窓辺に立つカイン様の横顔は、いつもより険しい。
青い瞳が書状を睨むように見つめていた。
「……“再審議”という言葉が気になります」
「ああ。おそらく、レインフォード家の継承権を狙っている」
レインフォード家――それは私の生家。
だが、数年前に父が病没し、領地は王家に吸収された。
もう、私に権利などないはず。
なのに、なぜ今さら……?
私が不安を覚えていると、カイン様は静かに私の手を取った。
「アリア、これはお前が悪いわけじゃない。だが……一つ、話しておかねばならないことがある」
その声音に、心臓が跳ねる。
彼が椅子を引き、向かいに座ると、静かに言葉を続けた。
「俺は、ただの“英雄”じゃない」
「……え?」
「ルグラン王家の、第二王子だ」
――息が止まった。
言葉の意味を理解するまで、数秒かかった。
けれど、彼の真剣な表情が冗談ではないと教えてくれる。
「カイン……さまが、王族……?」
「幼い頃に王位継承争いを避けるため、身分を隠されて育てられた。今は名目上、侯爵として表に出ているが、実際には国政にも関わっている」
「……そんな、大事な方が、なぜ私なんかを……」
「“なんか”ではない」
彼の声が、強く響いた。
「お前は、俺がこの国を選んだ理由だ。
和平の使者としてお前の国を訪れた時、初めて民を思って涙を流す貴族を見た。……あの日から、ずっと心に残っていた」
彼の瞳がまっすぐに私を見つめている。
その光に包まれて、思わず視線をそらせなかった。
「……そんな風に言ってくださるなんて、恐れ多いです」
「恐れる必要はない。俺はもう決めた。
お前を、王妃として迎える」
「――っ!?」
まるで時が止まったようだった。
そんな重大な言葉を、どう受け止めればいいのか分からない。
ただ、胸の奥が熱くなって、涙が滲んだ。
「……カイン様、本気で……?」
「ああ。お前を“守る”だけでは足りない。これからは、共に歩みたい」
そう言って微笑む彼の顔は、優しくて、どこか寂しげでもあった。
けれど、その温もりに触れると、不思議と怖くなかった。
昼下がり。
庭園のベンチで紅茶を飲んでいると、リース執事が静かに近づいてきた。
「アリア様、少しお時間をいただけますか」
「ええ、もちろん」
彼は深刻な顔で言った。
「今朝、王城からの密使がもう一通。――“アリア様の母君”に関する資料が発見されたとのことです」
「母……?」
私は息を呑んだ。
母は私が幼い頃に亡くなったと聞いていた。病気だと。
けれど、リース執事は首を振る。
「どうやら、それが事実ではない可能性がございます」
頭が真っ白になる。
彼が差し出した古びた封筒には、見覚えのある印章――レインフォード家の紋章が刻まれていた。
震える手で開くと、母の筆跡でこう書かれていた。
“アリアへ。
もしこの手紙を読む日が来たら、あなたはもう安全な場所にいるでしょう。
だが覚えておきなさい。あなたの血には、王家の“第一の花”の印が流れている。
その血を狙う者が現れたなら――必ず、ルグランを頼りなさい。”
「……王家の、第一の花……?」
私は呆然とつぶやいた。
「“第一の花”とは、王権継承の象徴です」
カイン様が背後から静かに言葉を重ねる。
「つまり、アリア。お前の母は、王族の血を引いていたということだ」
「――そんな……!」
驚愕で息を飲む。
けれど、すぐに理解した。
だからこそ、父は急に病に倒れ、領地は取り上げられたのだ。
“王家の血”が、自国の王にとって邪魔だったから。
手が震える。
それを見たカイン様が、そっと手を包んだ。
「だからこそ、彼らはお前を呼び戻そうとしている。お前の血を、政の道具にするために」
「……そんなの、もう嫌です。あの国に戻るなんて」
「戻さない。俺がいる」
その言葉に、涙が溢れた。
彼の腕が私をそっと抱きしめる。
胸に顔を埋めると、心臓の鼓動が聞こえた。
「アリア。俺はこの国の王子であり、お前の味方でもある。
だが、この件はおそらく国を巻き込むことになる。覚悟はあるか?」
「はい」
即答だった。
もう、逃げるのは嫌だった。
その夜。
私は眠れずにいた。
月明かりがカーテン越しに差し込み、静かな屋敷がやけに広く感じる。
そんな時、扉をノックする音。
「アリア、起きているか?」
「カイン様?」
寝巻のまま扉を開けると、彼が静かに立っていた。
「外に出よう。少し風に当たった方がいい」
庭園に出ると、夜風が頬を撫でる。
星空が広がり、彼の銀髪が光を受けて揺れた。
「……俺も昔は、お前と同じようにすべてを失ったことがある」
「え?」
「王子として生まれながら、母が平民出身だという理由で、王位継承から外された。
けれど、母は“それでも人を愛せ”と言ってくれた」
彼の瞳が、少しだけ遠くを見ていた。
「だから、お前を見た時、思い出したんだ。必死に誰かを想うその姿を」
「……カイン様」
言葉が出なかった。
ただ、胸が熱くて苦しいほどだった。
彼が私の頬に触れ、穏やかに微笑む。
「この先、何があっても――お前を、手放すつもりはない」
その一言で、世界が少しだけ明るく見えた。
翌朝、王城からの第二報が届く。
そこには――
『アリア・レインフォード殿の身柄を拘束するため、特使を派遣する』
という冷たい一文。
リース執事が顔をしかめる。
「……これは、ただの召喚ではありません。彼らは本気でアリア様を連れ戻すつもりです」
カイン様は静かに書状を握りつぶした。
そして、誰にも聞こえないほどの声で言った。
「……ならば、こちらも動くしかないな」
彼の瞳には、決意の炎が宿っていた。
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