6 / 6
6
しおりを挟む
――王命による拘束命令。
それが届いた翌朝、屋敷の空気は凍りついていた。
リース執事が苦い顔で報告する。
「第一王国の使者が、国境を越えました。おそらく、今夜にはルシエルに入るかと」
私は指先が冷たくなるのを感じた。
どれほど逃げても、過去が追ってくるのか。
けれど、もう逃げない。あの日、決めたから。
「カイン様、私……覚悟はできています」
まっすぐに彼を見ると、彼も穏やかに微笑んだ。
「俺もだ。――だからこそ、今夜、正式にお前を迎えたい」
その言葉に、胸が熱くなる。
彼の手が私の頬に触れ、そっと囁いた。
「王命がどうであれ、俺たちは夫婦になる。誰にも壊させない」
そのまま唇が触れた。
静かな誓いのように、優しく、確かに。
夜。
ルグランの古い教会に、ろうそくの灯りが揺れていた。
見守るのは神父とリース執事、そして二人の親しい友人だけ。
白いドレスを身にまとった私は、花束を胸に抱き、ゆっくりと祭壇へ進む。
そこに立つのは――私の“貧乏人”と呼ばれた、世界で一番尊い人。
カイン様が差し出した手を取り、指輪がはめられる。
「誓いますか?」
「はい」
声が震えたけれど、心は揺るがなかった。
その瞬間、教会の扉が勢いよく開いた。
冷たい風とともに、金の髪が揺れる。
「やめろ!!」
エドワード殿下だった。
息を切らし、憎々しげにこちらを睨む。
「アリア、まだ間に合う! お前を連れ戻しに来たんだ!」
カイン様が一歩前に出た。
「――遅い」
その声は低く、冷たい刃のようだった。
エドワード殿下は苛立ったように叫ぶ。
「お前は他国の男だ! アリアは我が王家の血を引く女! 返してもらう!」
「返す? 面白い言葉だな」
カイン様の声が静かに響く。
「彼女はもう、俺の妻だ。お前が見捨て、辱めたその日から、彼女はお前のものではない」
エドワード殿下の顔が歪む。
「……俺は間違っていた! あの日、彼女を選ぶべきだった! やり直そう、アリア!」
――やり直す?
笑えてしまった。
「殿下。あなたが言いましたよね? “貧乏人とでも結婚すれば”と」
「そ、それは……」
「はい。あなたの言葉どおりにしました。
でも今の私は、心の豊かな方と結婚します。だから、後悔はありません」
穏やかに微笑みながらそう告げた。
殿下の唇が震える。
「……お前、俺を見下しているのか?」
「いいえ。もう“見て”いないんです」
その言葉に、殿下は絶句した。
目の前で、彼の世界が崩れていくのがわかった。
カイン様が私の肩を抱き、ゆっくりと祭壇の前へ導く。
神父がもう一度祈りを唱え、指輪がはめられた。
「――夫婦として結ばれました」
その瞬間、鐘の音が鳴り響いた。
エドワード殿下は呆然と立ち尽くし、やがて何かを言いかけて、そのまま背を向けた。
扉が閉まる音が響き、風が静まる。
翌朝。
第一王国からの拘束命令は正式に撤回された。
ルグラン王国の第二王子が、正統な婚姻としてアリア・レインフォードを迎え入れた――という王令が発布されたからだ。
王の印章つきの命令書を手に、リース執事が微笑む。
「これで、誰にもアリア様に手出しはできません」
「……ありがとうございます」
その時、カイン様が背後からそっと抱きしめてきた。
「これで本当に自由だ。過去も、鎖も、全部終わりだ」
「……はい」
胸の奥から涙が溢れた。
けれど、それは悲しみではなく、ようやく得た安らぎの涙だった。
――それから、季節は移り変わった。
春。
庭の花々が咲き誇り、青い空の下で、私たちは穏やかな日々を過ごしていた。
私はルシエルの孤児院で花を教える仕事を始めた。
子どもたちに囲まれながら笑っていると、いつもカイン様が迎えに来てくれる。
「アリア、今日はどんな花を?」
「ラベンダーです。“あなたを待っています”っていう花言葉なんですよ」
「……ふ、俺には少し酷な言葉だな。お前を待つのは長い」
「それでも、待っていてくれるでしょう?」
「もちろんだ」
彼の笑顔を見るたびに思う。
――あの日、貧乏人とでも結婚すれば、と言われてよかった。
あの言葉がなければ、私はこの人と出会えなかったのだから。
ある日の午後。
庭園のベンチで、私たちは紅茶を飲んでいた。
風に揺れる花々、遠くで子どもたちの笑い声。
「アリア」
「はい?」
「今でも時々、あの王太子のことを思い出すか?」
「もう、思い出す必要もありません」
そう言って微笑むと、カイン様は満足そうに頷いた。
「……ならいい。お前には、これからの笑顔だけが似合う」
彼が私の指にキスを落とす。
指輪が月光を受けて、静かに輝いた。
その夜。
私は寝室の窓から、遠くの国境に光る街明かりを見つめていた。
もう、戻ることのない国。
けれど、不思議と心は穏やかだった。
「アリア」
背後からカイン様の腕が回される。
「これからもずっと、一緒に笑ってくれるか?」
「ええ。あなたとなら、何度でも」
その言葉に、彼がそっと微笑み、唇を寄せる。
夜風が揺れて、月明かりが二人を包み込んだ。
――数年後。
ルシエルの春祭りの日。
街を歩く人々が、花で飾られた馬車を見上げて歓声を上げていた。
馬車の上には、微笑む二人の姿。
「見て! ルグランの新しい王妃陛下よ!」
「レインフォードの奇跡って呼ばれてる人だ!」
アリア=レインフォード=アルベルト。
貧乏人とでも結婚しろ、と笑われた令嬢は、今やルグランの慈愛の女王として愛されていた。
馬車の隣に立つ王――かつて“英雄”と呼ばれた男が、穏やかに妻の手を取る。
「アリア。俺たちは、ようやく同じ夢を見られるな」
「ええ。平和で、優しい夢を」
花の雨が降り注ぎ、鐘の音が響く。
それは、かつて彼女が失ったもの――
そして今、手に入れたすべてを祝福する音だった。
――「貧乏人とでも結婚すれば?」
あの日の嘲笑が、今では懐かしい。
私が結婚した“貧乏人”は、心の豊かさで世界を満たしてくれる人。
だから私は、これからも笑って生きていく。
どんな言葉よりも、愛しい人の手を取って。
――永遠に、共に。
それが届いた翌朝、屋敷の空気は凍りついていた。
リース執事が苦い顔で報告する。
「第一王国の使者が、国境を越えました。おそらく、今夜にはルシエルに入るかと」
私は指先が冷たくなるのを感じた。
どれほど逃げても、過去が追ってくるのか。
けれど、もう逃げない。あの日、決めたから。
「カイン様、私……覚悟はできています」
まっすぐに彼を見ると、彼も穏やかに微笑んだ。
「俺もだ。――だからこそ、今夜、正式にお前を迎えたい」
その言葉に、胸が熱くなる。
彼の手が私の頬に触れ、そっと囁いた。
「王命がどうであれ、俺たちは夫婦になる。誰にも壊させない」
そのまま唇が触れた。
静かな誓いのように、優しく、確かに。
夜。
ルグランの古い教会に、ろうそくの灯りが揺れていた。
見守るのは神父とリース執事、そして二人の親しい友人だけ。
白いドレスを身にまとった私は、花束を胸に抱き、ゆっくりと祭壇へ進む。
そこに立つのは――私の“貧乏人”と呼ばれた、世界で一番尊い人。
カイン様が差し出した手を取り、指輪がはめられる。
「誓いますか?」
「はい」
声が震えたけれど、心は揺るがなかった。
その瞬間、教会の扉が勢いよく開いた。
冷たい風とともに、金の髪が揺れる。
「やめろ!!」
エドワード殿下だった。
息を切らし、憎々しげにこちらを睨む。
「アリア、まだ間に合う! お前を連れ戻しに来たんだ!」
カイン様が一歩前に出た。
「――遅い」
その声は低く、冷たい刃のようだった。
エドワード殿下は苛立ったように叫ぶ。
「お前は他国の男だ! アリアは我が王家の血を引く女! 返してもらう!」
「返す? 面白い言葉だな」
カイン様の声が静かに響く。
「彼女はもう、俺の妻だ。お前が見捨て、辱めたその日から、彼女はお前のものではない」
エドワード殿下の顔が歪む。
「……俺は間違っていた! あの日、彼女を選ぶべきだった! やり直そう、アリア!」
――やり直す?
笑えてしまった。
「殿下。あなたが言いましたよね? “貧乏人とでも結婚すれば”と」
「そ、それは……」
「はい。あなたの言葉どおりにしました。
でも今の私は、心の豊かな方と結婚します。だから、後悔はありません」
穏やかに微笑みながらそう告げた。
殿下の唇が震える。
「……お前、俺を見下しているのか?」
「いいえ。もう“見て”いないんです」
その言葉に、殿下は絶句した。
目の前で、彼の世界が崩れていくのがわかった。
カイン様が私の肩を抱き、ゆっくりと祭壇の前へ導く。
神父がもう一度祈りを唱え、指輪がはめられた。
「――夫婦として結ばれました」
その瞬間、鐘の音が鳴り響いた。
エドワード殿下は呆然と立ち尽くし、やがて何かを言いかけて、そのまま背を向けた。
扉が閉まる音が響き、風が静まる。
翌朝。
第一王国からの拘束命令は正式に撤回された。
ルグラン王国の第二王子が、正統な婚姻としてアリア・レインフォードを迎え入れた――という王令が発布されたからだ。
王の印章つきの命令書を手に、リース執事が微笑む。
「これで、誰にもアリア様に手出しはできません」
「……ありがとうございます」
その時、カイン様が背後からそっと抱きしめてきた。
「これで本当に自由だ。過去も、鎖も、全部終わりだ」
「……はい」
胸の奥から涙が溢れた。
けれど、それは悲しみではなく、ようやく得た安らぎの涙だった。
――それから、季節は移り変わった。
春。
庭の花々が咲き誇り、青い空の下で、私たちは穏やかな日々を過ごしていた。
私はルシエルの孤児院で花を教える仕事を始めた。
子どもたちに囲まれながら笑っていると、いつもカイン様が迎えに来てくれる。
「アリア、今日はどんな花を?」
「ラベンダーです。“あなたを待っています”っていう花言葉なんですよ」
「……ふ、俺には少し酷な言葉だな。お前を待つのは長い」
「それでも、待っていてくれるでしょう?」
「もちろんだ」
彼の笑顔を見るたびに思う。
――あの日、貧乏人とでも結婚すれば、と言われてよかった。
あの言葉がなければ、私はこの人と出会えなかったのだから。
ある日の午後。
庭園のベンチで、私たちは紅茶を飲んでいた。
風に揺れる花々、遠くで子どもたちの笑い声。
「アリア」
「はい?」
「今でも時々、あの王太子のことを思い出すか?」
「もう、思い出す必要もありません」
そう言って微笑むと、カイン様は満足そうに頷いた。
「……ならいい。お前には、これからの笑顔だけが似合う」
彼が私の指にキスを落とす。
指輪が月光を受けて、静かに輝いた。
その夜。
私は寝室の窓から、遠くの国境に光る街明かりを見つめていた。
もう、戻ることのない国。
けれど、不思議と心は穏やかだった。
「アリア」
背後からカイン様の腕が回される。
「これからもずっと、一緒に笑ってくれるか?」
「ええ。あなたとなら、何度でも」
その言葉に、彼がそっと微笑み、唇を寄せる。
夜風が揺れて、月明かりが二人を包み込んだ。
――数年後。
ルシエルの春祭りの日。
街を歩く人々が、花で飾られた馬車を見上げて歓声を上げていた。
馬車の上には、微笑む二人の姿。
「見て! ルグランの新しい王妃陛下よ!」
「レインフォードの奇跡って呼ばれてる人だ!」
アリア=レインフォード=アルベルト。
貧乏人とでも結婚しろ、と笑われた令嬢は、今やルグランの慈愛の女王として愛されていた。
馬車の隣に立つ王――かつて“英雄”と呼ばれた男が、穏やかに妻の手を取る。
「アリア。俺たちは、ようやく同じ夢を見られるな」
「ええ。平和で、優しい夢を」
花の雨が降り注ぎ、鐘の音が響く。
それは、かつて彼女が失ったもの――
そして今、手に入れたすべてを祝福する音だった。
――「貧乏人とでも結婚すれば?」
あの日の嘲笑が、今では懐かしい。
私が結婚した“貧乏人”は、心の豊かさで世界を満たしてくれる人。
だから私は、これからも笑って生きていく。
どんな言葉よりも、愛しい人の手を取って。
――永遠に、共に。
223
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
追放された地味なメイドは和菓子職人の記憶に目覚める 〜王子たちの胃袋を『あんこ』で掴んだら、王宮で極甘に溺愛されています〜
あとりえむ
恋愛
「起きなさい、この穀潰し!」
冷たい紅茶を浴びせられ、無実の罪で男爵家を追放された地味なメイド、ミア。
泥濘の中で力尽きようとしたその時、彼女の脳裏に鮮やかな記憶が蘇る。
それは、炊きたての小豆の香りと、丁寧にあんこを練り上げる職人としての誇り……
行き倒れたミアを救ったのは、冷徹と恐れられる第一王子ミハエルだった。
バターと生クリームの重いお菓子に胃を痛めていた王族たちの前に、ミアは前世の知恵を絞った未知のスイーツ『おはぎ』を差し出す。
「なんだ、この食感は……深く、そして優しい。ミア、お前は私の最高のパートナーだ」
小豆の魔法に魅了されたミハエルだけでなく、武闘派の第二王子やわがままな王女まで、気づけばミアを取り合う溺愛合戦が勃発!
一方で、有能なミアを失い、裏金のカラクリを解ける者がいなくなった男爵家は、自業自得の崩壊へと突き進んでいく。
泣いて謝っても、もう遅い。
彼らを待っていたのは、処刑よりも皮肉な「全土小豆畑の刑」だった……
これは、一粒の小豆から始まる、甘くて爽快な逆転シンデレラストーリー。
あなたの心も、あんこのように「まあるく」癒やしてみせます。
婚約破棄された私と侯爵子息様〜刺繍も私も、貴方が離さない〜
ナナミ
恋愛
「ディアナ!お前との婚約を破棄する!」
ディアナ・コヴァー伯爵令嬢は、婚約者である伯爵子息に断罪され、婚約破棄されてしまった。
ある子爵令嬢に嫌がらせをしていたと言うことである。彼女には身に覚えのない冤罪であった。
自分は、やっていない、と言っても、婚約者は信じない。
途方に暮れるディアナ。そんな時、美形の侯爵子息であるフレット・ファンエスがやって来て……。
伯爵令嬢×美形侯爵子息の恋愛ファンタジー。
何もしていない聖女と言われたので、婚約破棄を受け入れます
鍛高譚
恋愛
聖女と呼ばれながらも、目立った奇跡を見せたことのない公爵令嬢ホーリィー・メイデン。
ある日突然、王太子から「何もしていない聖女」と断じられ、さらに身に覚えのない嫌がらせを理由に婚約破棄され、王都を去るよう命じられてしまう。
婚約に未練はなく、静かに追放を受け入れたホーリィー。
けれど、面識すらない相手を本当に傷つけたのかという疑問だけが胸に残る。
そして彼女が王都を離れたあと、王城では少しずつ不穏な出来事が起こり始める。
これは、見えない場所で王都を支えていた聖女が、再び“夜の王城”へ戻るまでの物語。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
『婚約破棄は劇場にて――見世物にされた侯爵令嬢は、舞台ごと奪い返す』
鷹 綾
恋愛
王立劇場で開かれた慈善晩餐会。
その華やかな壇上で、侯爵令嬢サビーネ・ドルレアンは、第二王子セドリックから突然の婚約破棄を告げられる。
隣に立つのは、涙ぐむ男爵令嬢オディール。
大勢の貴族たちが見守る中、サビーネは“冷酷な悪女”として断罪され、黙って恥を引き受ける役を押しつけられる――はずだった。
けれど、サビーネは泣かなかった。
黙って舞台を降りることもなかった。
その夜を境に、侯爵令嬢は見世物にされた婚約破棄の意味を、静かに、そして容赦なく塗り替えていく。
王家の体面、王子の未熟さ、“可哀想な令嬢”の化けの皮。
一つずつ暴かれていく真実の先で、サビーネが取り戻すのは、失われた名誉だけではない。
これは、婚約破棄された令嬢が、誰かの筋書きから降りて、自分の人生を取り戻す物語。
見世物にされた舞台の上で、最後に微笑むのは――黙って泣く役を拒んだ侯爵令嬢。
【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。
本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」
そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。
しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない!
もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!?
※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。
3月20日
HOTランキング8位!?
何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!!
感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます!
ありがとうございます!
3月21日
HOTランキング5位人気ランキング4位……
イッタイ ナニガ オコッテンダ……
ありがとうございます!!
家族の靴を磨いていた私が、実は【神の加護を磨き上げた聖女】だった件。隣国の冷徹皇帝に「君の献身は世界を救う」と誘拐、24 執着されています
唯崎りいち
恋愛
「お前は一生、靴でも磨いていろ」
家族に虐げられ、靴を磨き続けた私。
実はその靴、磨くたびに『神の加護』が宿る聖具になっていました。
噂を聞きつけた隣国の冷徹皇帝に、出会い頭にさらわれて――
「君は俺のものだ。24時間、指一本触れさせない」
靴を履かせてもらえず、移動は常に皇帝の腕の中!?
磨き上げた加護のせいで、皇帝の執着が神レベルに育ってしまう溺愛物語。
公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に
ゆっこ
恋愛
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる