ホントのココロは

暁月雪

文字の大きさ
2 / 4
幼少期

第3皇子になった日

しおりを挟む
「○○○は素晴らしい!これで我が家も…」

「○○○は私達のために…」

「○○○は家の大事な大事な、」

▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔▔
ぱち

「夢…」

「はぁ、また、あの夢か…」

僕の前世の夢。

「シオン~朝よ~起きて!」

ガチャ

「あら、もう起きていたの?おはよう!じゃあ顔洗ってきなさい。朝ごはんもうすぐ出来るから」

「おはよう。分かった」

ふわりと焼きたてのパンの匂いがする。
この匂いはなんだか落ち着く。
ああ、顔を洗ってこないと…



ガチャ

「シオン!丁度良かった。今、朝ごはんができたの」

「さあ座って、食べましょう」

うん…美味しい
思わず頬がほころぶ。ほんの少し口角が上がっただけだけど。
母はそれに気が付いたみたいだ。

「美味しい~?ふふっ今日は結構頑張って作ったのよ」

「そうだったんだ。美味しい」

「ふふふ、良かった~」

一般的に見たら無表情の子供だなんて気持ち悪いだろうに、母は僕の些細な変化に気付いてくれる。
それが嬉しくて、居心地がいい。

「今日も図書館に行ってくるの?」

「うん」

「そっか、私も本読むの好きだったんだよ。よく図書館に通ってたの。今日は店は休みだし、久しぶりに私も行こうかな」

この国にはたくさんの本がある図書館がある。家にも簡単な絵本があり、それを読んで文字を勉強した。
2歳になった時、もう文字を完璧に覚えた。3歳になった時には絵本にも飽きたため、母にもっと他の本が読みたいと言って図書館を教えて貰った。
初めの頃は、週に一回ほど、母と行っていたが今では図書館の司書さんとも面識ができ、1人で通っている。
母と一緒に図書館に行くのは久しぶりだから、少し嬉しい。

「うん。一緒に行こ、お母さん」

「えぇ!じゃあ9時くらいに行きましょう」

「うん。」




「じゃあそろそろ行きましょうか」

コンコンコン

「サフィア殿は居るか」

「あら?何かしら…。ちょっと出てくるわね」

「はい。どちら様でしょうか…」

ガチャ

「っ!…」

「私は皇室近衛のロードナイト・フォン・フエーゴ。皇帝陛下からの使いとして、陛下の子、シオン様を迎えに参った」

「…シオンを…」

「お母さん。お城の騎士様がどうして…」

…皇帝の子、シオン様って僕のこと?
…行きたくない、けど…
母の顔が影に隠れてよく見えない。

「シオン…貴方は皇帝陛下の子供なの。これからはお城で皇子様として暮らすの」

…やだ、行きたくない。お母さんと一緒に居たい。
感情を押し殺して声を紡ぐ。

「…うん。…分かった」

「そう…。騎士様がお迎えに来ているの。私とは、ここでお別れよ」

お母さんの声からは感情を感じることが出来ない。
涙を堪える。ちゃんと、お別れを言う。
ここでいやだ、なんて言っても、お母さんを困らせるだけだから。

「…うん。ば、いば…い。っ…お母さん。」

「うっ…。…うん…。うん。ばいばい。さよなら。シオン…」

「サフィア殿、もうよろしいですか。」

騎士様…騎士が母に声をかける。

「えぇ。シオン、様が、健やかに暮らせる事を祈っております」

母に様付けされるのは、すごく嫌だ。

「そうか。ではシオン様、こちらに…」

思わず、振り払いたくなる。
…。

「うん。…育ててくれて、ありがとうございました。おかぁ…。サフィア、さん」

「………いえ、お元気で…」

「…うん」

「シオン様、こちらへ…足元気を付けてください」

「それでは、後ほど陛下から褒美が与えられる。ではな。」

「っ…。はい」

「シオン様、少し揺れますので気をつけてください。」

「…はい。」

パシンッガラ…
ガラガラガラ…

ガタンッ
少し揺れる。
…お母さん。ありがとうございました。
ずっと、大好きです。

一筋、涙が流れる…


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...