5 / 18
魔王の娘 2
しおりを挟む
ハロルド様と魔王の戦いはまだまだ止まず、城内の壁やら床やらを破壊しながら延々と剣を交えている。
「二人とも、いい加減止めなよ……」
遠巻きにその様子を眺めている私の視界の端に、小さな紫色の塊が入り込んでくる。
「ん?」
気になって振り向くと、いつの間にか現れた紫色の毛玉がその場でピョコピョコと飛び跳ねているではないか。
「何あれ?」
じっと目を凝らすと毛玉にはつぶらな赤い目があり、どうやらただの毛の塊ではなく生き物のようだ。
赤い目を持っているから、生き物の中でも魔物に分類されるものだろう。
毛玉はハロルド様と魔王に気を取られているようで、私の存在には気づいていない。
(よ~し、暇つぶしに捕まえてみるか)
私は足音を忍ばせてソロリと毛玉に近づいてみるけれど、どんなに近づいても毛玉は私に気づかない。
魔物にしてはずいぶんと鈍感だし無防備で、すぐにでも他の魔物に食べられてしまいそうだ。
果たしてこの毛玉は魔界で生きていけるのだろうかと不安になる。
とはいえ狩りに同情は不要だ。
私は一気に距離を詰めて、毛玉に手を伸ばし――片手で掴んで捕らえた。
「隙ありぃぃぃぃっ!」
「ギギッ! ピギャーッ!」
毛玉が逃げ出そうとするから両手でガッチリと捕まえる。
「意外と触り心地がいいな……毛皮を剥いで商人に売れば高くついたりして?」
「キイィィィィ」
毛玉は私の言葉がわかるらしい。
目に涙を浮かべてブルブルと震え上がると、死に物狂いで藻掻いて私の手からすり抜けてしまった。
「ピギッ! ピャァァァッ!」
「あ、待ちなさい!」
「ギャギャッ!」
床に降り立った毛玉は跳ねながら逃げる。
その後を追いかけていると、大広間の扉が開き――黒のマーメイドドレスを着た女性が中に入ってきた。
透き通るような白い肌や波打つ水色の髪、ぱっちりと大きな目の色は紫水晶――遠目から見てもわかるくらい美人だ。
彼女のもとに毛玉が駆けより、その場で飛び跳ねてピィピィと鳴いて何やら訴えかけている。
「あら、ルシファー! 姿を見ないと思ったら、ここにいたのね」
「ピギッ!」
黒のマーメイドドレスの女性は毛玉もといルシファーを見てにこにこと柔らかく微笑んだ。
鈴を転がすような澄んだ声で、魔王城の住人だとは思えないほど優しそうな口調だ。
もしかすると、ルシファーはあの女性が飼っている魔物か使い魔なのかもしれない。
(……いや、待てよ。ルシファーってまさか、魔王の手下と言われているあのルシファー?!)
私の記憶が正しければ、ルシファーとは魔王の右腕と言われていた悪魔ではなかっただろうか。
かつて神殿で読んだ記録では、過去に魔王討伐へ向かった部隊の半分物勢力を削いだ恐ろしい悪魔で大聖女――当時の王妃殿下に倒されたと書いていた。
(きっと同じ名前を付けられただけよね? だって、さっき私に素手で捕まえられたくらい弱いんだもの)
魔王の右腕だったルシファーなら私が手でつかむ前に気づいて攻撃してくるはずだし、あれはただの毛玉だろう。
「キイィィィィ!」
「ふふ、カーティスを探してここに来たのね?」
「ピギッ! ピャァァァッ!」
「そうねぇ、カーティスはいつも神出鬼没だから探すのが大変ね」
女性はおっとりとした調子でルシファーに相槌を打っている。
ルシファーは飛び跳ねながら私の顔をチラチラと見ているからきっと私のことを言いつけているはずなのだけど、女性はそのことに気づいていないから、もしかするとルシファーの言葉を理解していないのかもしれない。
(まあ、翻訳でもしない限りあの鳴き声で何を言っているのかまではわからないわよね……)
全身全霊で私から受けた仕打ちを言いつけようとしていたルシファーもそれを悟ったのか、力なくその場に落ちてコロンと転がった。
その姿に哀愁がただよっているものだから、少し同情してしまう。
女性は転がっているルシファーを見て「可愛い」と呟くと、紫色の瞳をハロルド様と魔王に向けた。
「ねぇ、カーティス。そのお方は人間のお客様? 二人で何をしているの?」
「フ、フローレア! 違うんだ、この鼠が入り込んできたから追い返そうとしているところだったんだよ」
カーティスと名前を呼ばれた魔王は剣を力いっぱい振ってハロルド様を退けると、女性――フローレアさんのもとに飛ぶように駆け寄った。
(フローレアということは……あの人が私の……母親?)
魔王は私がフローレアさんに似ていると言っていたけれど、あんなにも綺麗な人に自分が似ているとは思えない。
髪の色が同じなだけではないだろうか。
魔王はフローレアさんを抱き寄せると、彼女の額にチュッっとキスをした。
かなり溺愛しているようで、彼女を見る瞳がすっかり蕩けてしまっていて魔王の気迫を感じられない。
「ヘザーを……俺たちの娘を連れて来たんだ――ほら、あそこにいる美人がヘザーだよ。大きくなっているけど、わかるだろう?」
そう言い、魔王が私の方を見る。
フローレアさんもつられて顔を私の方に向けて――両手で口元を覆った。
「……っ、ヘザー……!」
喉から絞り出すような声で私の名前を呼ぶと、魔王の腕から抜け出して駆け寄ってきた。
「本当にヘザーだわ! 丸くて広いおでこが変わらない……瞳の色はカーティスにそっくりで、紅玉みたいに綺麗……無事で良かった。こんなにも大きくなったのね……」
フローレアさんは目にいっぱいの涙を浮かべ、私の頬にそっと手で触れる。
もしも本当の親が私を見つけて、喜んでくれたら――。
孤児院に居た頃にその夢を抱かなかったわけではない。
だけど二人は現れず、幼い私の希望は徐々に砕けていった。
それなのに両親に望みを抱かなくなった今では、父親を名乗る人物が私を迎えに来て、母親を名乗る人物がこうして涙を浮かべて再会を喜んでくれるなんて皮肉なものだ。
(幼い頃なら、素直に二人の気持ちを受け入れられたのかもしれないけれど……)
愛おしそうに私を見つめる眼差しに心が落ち着かなくて、私は彼女の手を振り払った。
「違う……私の家族は院長だけだもん……」
「……っ」
フローレアさんは傷ついたような表情を浮かべた。
いたたまれなくなった私は開いている扉から外に出て――フローレアさんたちから逃げた。
「二人とも、いい加減止めなよ……」
遠巻きにその様子を眺めている私の視界の端に、小さな紫色の塊が入り込んでくる。
「ん?」
気になって振り向くと、いつの間にか現れた紫色の毛玉がその場でピョコピョコと飛び跳ねているではないか。
「何あれ?」
じっと目を凝らすと毛玉にはつぶらな赤い目があり、どうやらただの毛の塊ではなく生き物のようだ。
赤い目を持っているから、生き物の中でも魔物に分類されるものだろう。
毛玉はハロルド様と魔王に気を取られているようで、私の存在には気づいていない。
(よ~し、暇つぶしに捕まえてみるか)
私は足音を忍ばせてソロリと毛玉に近づいてみるけれど、どんなに近づいても毛玉は私に気づかない。
魔物にしてはずいぶんと鈍感だし無防備で、すぐにでも他の魔物に食べられてしまいそうだ。
果たしてこの毛玉は魔界で生きていけるのだろうかと不安になる。
とはいえ狩りに同情は不要だ。
私は一気に距離を詰めて、毛玉に手を伸ばし――片手で掴んで捕らえた。
「隙ありぃぃぃぃっ!」
「ギギッ! ピギャーッ!」
毛玉が逃げ出そうとするから両手でガッチリと捕まえる。
「意外と触り心地がいいな……毛皮を剥いで商人に売れば高くついたりして?」
「キイィィィィ」
毛玉は私の言葉がわかるらしい。
目に涙を浮かべてブルブルと震え上がると、死に物狂いで藻掻いて私の手からすり抜けてしまった。
「ピギッ! ピャァァァッ!」
「あ、待ちなさい!」
「ギャギャッ!」
床に降り立った毛玉は跳ねながら逃げる。
その後を追いかけていると、大広間の扉が開き――黒のマーメイドドレスを着た女性が中に入ってきた。
透き通るような白い肌や波打つ水色の髪、ぱっちりと大きな目の色は紫水晶――遠目から見てもわかるくらい美人だ。
彼女のもとに毛玉が駆けより、その場で飛び跳ねてピィピィと鳴いて何やら訴えかけている。
「あら、ルシファー! 姿を見ないと思ったら、ここにいたのね」
「ピギッ!」
黒のマーメイドドレスの女性は毛玉もといルシファーを見てにこにこと柔らかく微笑んだ。
鈴を転がすような澄んだ声で、魔王城の住人だとは思えないほど優しそうな口調だ。
もしかすると、ルシファーはあの女性が飼っている魔物か使い魔なのかもしれない。
(……いや、待てよ。ルシファーってまさか、魔王の手下と言われているあのルシファー?!)
私の記憶が正しければ、ルシファーとは魔王の右腕と言われていた悪魔ではなかっただろうか。
かつて神殿で読んだ記録では、過去に魔王討伐へ向かった部隊の半分物勢力を削いだ恐ろしい悪魔で大聖女――当時の王妃殿下に倒されたと書いていた。
(きっと同じ名前を付けられただけよね? だって、さっき私に素手で捕まえられたくらい弱いんだもの)
魔王の右腕だったルシファーなら私が手でつかむ前に気づいて攻撃してくるはずだし、あれはただの毛玉だろう。
「キイィィィィ!」
「ふふ、カーティスを探してここに来たのね?」
「ピギッ! ピャァァァッ!」
「そうねぇ、カーティスはいつも神出鬼没だから探すのが大変ね」
女性はおっとりとした調子でルシファーに相槌を打っている。
ルシファーは飛び跳ねながら私の顔をチラチラと見ているからきっと私のことを言いつけているはずなのだけど、女性はそのことに気づいていないから、もしかするとルシファーの言葉を理解していないのかもしれない。
(まあ、翻訳でもしない限りあの鳴き声で何を言っているのかまではわからないわよね……)
全身全霊で私から受けた仕打ちを言いつけようとしていたルシファーもそれを悟ったのか、力なくその場に落ちてコロンと転がった。
その姿に哀愁がただよっているものだから、少し同情してしまう。
女性は転がっているルシファーを見て「可愛い」と呟くと、紫色の瞳をハロルド様と魔王に向けた。
「ねぇ、カーティス。そのお方は人間のお客様? 二人で何をしているの?」
「フ、フローレア! 違うんだ、この鼠が入り込んできたから追い返そうとしているところだったんだよ」
カーティスと名前を呼ばれた魔王は剣を力いっぱい振ってハロルド様を退けると、女性――フローレアさんのもとに飛ぶように駆け寄った。
(フローレアということは……あの人が私の……母親?)
魔王は私がフローレアさんに似ていると言っていたけれど、あんなにも綺麗な人に自分が似ているとは思えない。
髪の色が同じなだけではないだろうか。
魔王はフローレアさんを抱き寄せると、彼女の額にチュッっとキスをした。
かなり溺愛しているようで、彼女を見る瞳がすっかり蕩けてしまっていて魔王の気迫を感じられない。
「ヘザーを……俺たちの娘を連れて来たんだ――ほら、あそこにいる美人がヘザーだよ。大きくなっているけど、わかるだろう?」
そう言い、魔王が私の方を見る。
フローレアさんもつられて顔を私の方に向けて――両手で口元を覆った。
「……っ、ヘザー……!」
喉から絞り出すような声で私の名前を呼ぶと、魔王の腕から抜け出して駆け寄ってきた。
「本当にヘザーだわ! 丸くて広いおでこが変わらない……瞳の色はカーティスにそっくりで、紅玉みたいに綺麗……無事で良かった。こんなにも大きくなったのね……」
フローレアさんは目にいっぱいの涙を浮かべ、私の頬にそっと手で触れる。
もしも本当の親が私を見つけて、喜んでくれたら――。
孤児院に居た頃にその夢を抱かなかったわけではない。
だけど二人は現れず、幼い私の希望は徐々に砕けていった。
それなのに両親に望みを抱かなくなった今では、父親を名乗る人物が私を迎えに来て、母親を名乗る人物がこうして涙を浮かべて再会を喜んでくれるなんて皮肉なものだ。
(幼い頃なら、素直に二人の気持ちを受け入れられたのかもしれないけれど……)
愛おしそうに私を見つめる眼差しに心が落ち着かなくて、私は彼女の手を振り払った。
「違う……私の家族は院長だけだもん……」
「……っ」
フローレアさんは傷ついたような表情を浮かべた。
いたたまれなくなった私は開いている扉から外に出て――フローレアさんたちから逃げた。
13
あなたにおすすめの小説
「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される
沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。
「あなたこそが聖女です」
「あなたは俺の領地で保護します」
「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」
こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。
やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
殿下、私の身体だけが目当てなんですね!
石河 翠
恋愛
「片付け」の加護を持つ聖女アンネマリーは、出来損ないの聖女として蔑まれつつ、毎日楽しく過ごしている。「治癒」「結界」「武運」など、利益の大きい加護持ちの聖女たちに辛く当たられたところで、一切気にしていない。
それどころか彼女は毎日嬉々として、王太子にファンサを求める始末。王太子にポンコツ扱いされても、王太子と会話を交わせるだけでアンネマリーは満足なのだ。そんなある日、お城でアンネマリー以外の聖女たちが決闘騒ぎを引き起こして……。
ちゃらんぽらんで何も考えていないように見えて、実は意外と真面目なヒロインと、おバカな言動と行動に頭を痛めているはずなのに、どうしてもヒロインから目を離すことができないヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID29505542)をお借りしております。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる