16 / 48
仮で借りになって
しおりを挟む
翌朝、私はいつもより早めに図書塔に行った。
私なりの作戦を実行するためだ。
「あの……お二人の内どなたか私の恋人のふりをしていただけませんか?」
バルトさんがビックリして咳き込んでしまったので、私は事の詳細を話した。
「う~ん、力になってやりたいが俺もドゥブレーも結婚しているからなぁ。バイエとかどうだ?真面目だから」
「あ、あのぉ……たぶんそうするとバイエ君また心配性を拗らせちゃうかもしれないですよぉ」
いつもはおっとりとしているドゥブレーさんが慌ててそう言った。
確かに、バイエさんは時々お腹をおさえながら何かに怯えるように塔を見ることがある。繊細なバイエさんがお兄様の餌食になっている絵面が浮かんできてしまう……。
「では……ペリシエ様にお願いしてみます」
「ダメですよフェレメレン嬢~!いくら何でもすがってはいけないくらい脆い藁ですよぉ」
「ああ、ペリシエを連れて行けばお兄さんは絶対許してくれないだろう。そうだ、王子殿下たちの近衛騎士の中に独身の奴がいたと思うし聞いてみようか?」
ペリシエさんの人望……。しかし否定できない……。
ここは一つ、お願いしよう。
塔の扉がバンっと勢いよく開いた。是非!の「ぜ」を言いかけたタイミングだ。急にハワード候爵が目の前に現れ、一同が固まる。
「その話、中で聞こう」
「え?!中まで聞こえていたのですか?!」
候爵の話によると、たまたま1階部分にいて聞こえたようだ。候爵は私の腕を掴むとさっと中に引き寄せて扉を閉めた。
私はわけがわからないまま候爵の執務室のソファに真向いで座らされた。
「以前パスカルから聞いたのだが、ここに異動したことを兄に知られれば領地に連れて帰られるかもしれないのだろう?」
「え、ええ……。王立図書館の司書官でなければ領地で兄の補佐をすることになっておりまして……」
「人手が減っては困る。私も協力しよう」
そういうことか。
立ち話してたから朝イチで喝を入れられるのではないかと内心ビクビクしていたので胸をなでおろした。
パスカル様が話してくれたのね……って、何話してくれとんじゃーい!ツーカーなの?!
ということは、お兄様の事もけっこう聞いているのかな……?
「どうしても図書塔に必要な人材だから私が呼んだ、という事にしてでもダメなのか?」
「……司書になる条件が、外ならぬ王立図書館の司書官であることがマストなんです」
「ふむ、それを条件に出されたから別の説得手段としてあのようなお願いをしたのか?」
「ええ……。さすがに恋人が首都に居るなら引き剥がすことはしないかと。それも、王宮騎士団のような方でしたら堅い仕事ですし反対されないかと思うのです」
ハワード候爵は顎に手を当てて私をじっと見る。
「では私が相手になろう」
「え?」
「パスカルから聞いたが、フェレメレンの兄上とやらはやり手の人物だそうだな。あまり関わりの無い奴とその場しのぎの演技をしたって見破られそうだ。それに、俺は一応仕事も身分もそれなりだ」
「し、しかし……!」
ノアという相手が居るのにいいの?!ノアが拗ねちゃうかもしれないよ?!
それに、身分差とかすごいし同じ職場とはいえ出会って間もないから急すぎて不審がられそうじゃない?
私の口から咄嗟に出た言葉に、ハワード侯爵の瞳が冷たく光る。
「なんだ?仮とはいえ私が恋人では不服か?」
「滅相もございません……。しかし、図書塔の司書が2人とも居なくなるのはどうなんですか?」
「構わん、神官長に頼んで当日少し代わってもらおう」
え?よほど重要な会議とかじゃないと出ないって聞いてたのにこんなことで2人とも塔から出ていいの?!
「パスカルにも事情を話してついて来てもらおう。共通の知り合いが居れば警戒心も薄れるだろうし」
え?なんで?
なんでそこまでしてくださるの?
……もしかして私、意外と無害な小娘で認定してもらえたのだろうか?だから失うのが惜しくてここまでやってくれるの?
候爵の心の内が分からない。
そのためか、何やら不敵に微笑むハワード候爵が悪だくみをしている悪魔に見えたのだが、さすがに怒られるので口には出さなかった。
私なりの作戦を実行するためだ。
「あの……お二人の内どなたか私の恋人のふりをしていただけませんか?」
バルトさんがビックリして咳き込んでしまったので、私は事の詳細を話した。
「う~ん、力になってやりたいが俺もドゥブレーも結婚しているからなぁ。バイエとかどうだ?真面目だから」
「あ、あのぉ……たぶんそうするとバイエ君また心配性を拗らせちゃうかもしれないですよぉ」
いつもはおっとりとしているドゥブレーさんが慌ててそう言った。
確かに、バイエさんは時々お腹をおさえながら何かに怯えるように塔を見ることがある。繊細なバイエさんがお兄様の餌食になっている絵面が浮かんできてしまう……。
「では……ペリシエ様にお願いしてみます」
「ダメですよフェレメレン嬢~!いくら何でもすがってはいけないくらい脆い藁ですよぉ」
「ああ、ペリシエを連れて行けばお兄さんは絶対許してくれないだろう。そうだ、王子殿下たちの近衛騎士の中に独身の奴がいたと思うし聞いてみようか?」
ペリシエさんの人望……。しかし否定できない……。
ここは一つ、お願いしよう。
塔の扉がバンっと勢いよく開いた。是非!の「ぜ」を言いかけたタイミングだ。急にハワード候爵が目の前に現れ、一同が固まる。
「その話、中で聞こう」
「え?!中まで聞こえていたのですか?!」
候爵の話によると、たまたま1階部分にいて聞こえたようだ。候爵は私の腕を掴むとさっと中に引き寄せて扉を閉めた。
私はわけがわからないまま候爵の執務室のソファに真向いで座らされた。
「以前パスカルから聞いたのだが、ここに異動したことを兄に知られれば領地に連れて帰られるかもしれないのだろう?」
「え、ええ……。王立図書館の司書官でなければ領地で兄の補佐をすることになっておりまして……」
「人手が減っては困る。私も協力しよう」
そういうことか。
立ち話してたから朝イチで喝を入れられるのではないかと内心ビクビクしていたので胸をなでおろした。
パスカル様が話してくれたのね……って、何話してくれとんじゃーい!ツーカーなの?!
ということは、お兄様の事もけっこう聞いているのかな……?
「どうしても図書塔に必要な人材だから私が呼んだ、という事にしてでもダメなのか?」
「……司書になる条件が、外ならぬ王立図書館の司書官であることがマストなんです」
「ふむ、それを条件に出されたから別の説得手段としてあのようなお願いをしたのか?」
「ええ……。さすがに恋人が首都に居るなら引き剥がすことはしないかと。それも、王宮騎士団のような方でしたら堅い仕事ですし反対されないかと思うのです」
ハワード候爵は顎に手を当てて私をじっと見る。
「では私が相手になろう」
「え?」
「パスカルから聞いたが、フェレメレンの兄上とやらはやり手の人物だそうだな。あまり関わりの無い奴とその場しのぎの演技をしたって見破られそうだ。それに、俺は一応仕事も身分もそれなりだ」
「し、しかし……!」
ノアという相手が居るのにいいの?!ノアが拗ねちゃうかもしれないよ?!
それに、身分差とかすごいし同じ職場とはいえ出会って間もないから急すぎて不審がられそうじゃない?
私の口から咄嗟に出た言葉に、ハワード侯爵の瞳が冷たく光る。
「なんだ?仮とはいえ私が恋人では不服か?」
「滅相もございません……。しかし、図書塔の司書が2人とも居なくなるのはどうなんですか?」
「構わん、神官長に頼んで当日少し代わってもらおう」
え?よほど重要な会議とかじゃないと出ないって聞いてたのにこんなことで2人とも塔から出ていいの?!
「パスカルにも事情を話してついて来てもらおう。共通の知り合いが居れば警戒心も薄れるだろうし」
え?なんで?
なんでそこまでしてくださるの?
……もしかして私、意外と無害な小娘で認定してもらえたのだろうか?だから失うのが惜しくてここまでやってくれるの?
候爵の心の内が分からない。
そのためか、何やら不敵に微笑むハワード候爵が悪だくみをしている悪魔に見えたのだが、さすがに怒られるので口には出さなかった。
35
あなたにおすすめの小説
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。
さら
恋愛
私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。
そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。
王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。
私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。
――でも、それは間違いだった。
辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。
やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。
王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。
無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。
裏切りから始まる癒しの恋。
厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~
古駒フミ
恋愛
教師との悲恋、そして突然の死をもって転生をした少女、シャーロット・ジェム。凍れる国にて、小さな魔法屋を営んでいた。名門学園からの推薦状が届いたことにより、平和だった日々に暗雲が訪れるように。
今世も彼女に死は訪れる――未来を望むには二つ。
――ヤンデレからもたらされる愛によって、囲われる未来か。そして。
――小さくて可愛いモフモフ、女神の眷属と共に乗り越えていくか。
鳥籠に囚われるカナリア色の髪の少女、ヤンデレホイホイの彼女が抗っていく物語。
生きていく物語。
小説家になろう様でも連載中です。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる