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遺産相続1
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慈島家の豪邸に到着。
山々に囲まれた広大な土地に座する木造平家は荘厳な雰囲気を纏っている。
「ごめんください!!!!!」
声を張り上げ来訪を告げる。
やはり第一印象、ファーストインプレッションはとても大切なので大きな声を出した方がいいかと思いました。
張り上げ続けて数分後、ドスドス足を鳴らして勢いよく門を開けたのは戸籍上次代の戸主である慈島忠信、龍蔵の長男である。大柄な体に浴衣がとても良くお似合いのナイスミドルだ。
「なんだ貴様は、今がこの慈島家にとってどれほど大事な行事があるのかわかっていて訪ねる愚か者ではあるまいな!」
神崎がチラチラとこちらを見てくる。
彼は私がこの家を出た没落ミュージシャンだと思っているためこちらの立場の悪さを察して心配してくれているのだろう。実に良い奴である。
「龍蔵さんがお亡くなりになったと聞いたものですから、生前大変にお世話になったので最後にご挨拶だけでもしておきたいと思いまして」
「葬式はもう終わっている。部外者は遠慮して頂きたい」
「部外者とは何事ですか!」
神崎が声を上げた。
「彼はこの家の家長であった慈島龍蔵の最後の息子ですよ、いくら一緒に暮らしていなかったとはいえ部外者扱いはあんまりではないでしょうか!」
いけない、そういう設定だった。
「なに!?親父は別に子供を作っていたというのか!」
ワンチャン行けそうな雰囲気である。
「はい、あなたは早々に家を出ていったから知らなかったでしょうけどね。私はこの家に生まれ、育って来ました。部外者扱いされる言われはありません」
「この九太郎さんは正真正銘あなたの弟君なのですよ」
「あの、お会いしたことはありませんでしたが忠信さんのお話は父からよく伺っていました。話に聞いた通りの立派な方で……。差し支えなければ、兄さん、と呼んでもかまいませんか?」
「そうだったのか……確かに私を前にしてその度胸、生前の父の面影を感じさせる。親族というのならば話は早い、着いたばかりで申し訳ないが広間にみな集まっている。案内しよう、弟よ。」
神崎が小声で「良かったですね」と声をかけてきた。
彼の中では確執のある親族が和解の一端を見せた感動的なシーンである。
薄く微笑んだ表情は微かな慈愛を感じさせた。
忠信とは赤の他人であるしこの家に足を踏み入れるのも今日が初めてである。まじごめん。
神崎には今日、実家に帰って死んだ祖父の遺産相続に関するゴタゴタを解決して欲しい、という依頼内容で着いてこさせている。詳細は着いてから話すということにしている。
そしてなぜ彼が会ったばかりの私の依頼を受けたのか、その答えは彼が荷物を船に忘れ無一文になったからである。気づいて港に戻ったはいいが時すでに遅し、船は世界一周旅行の観光船に早変わりし自由の国アメリカへと旅立った後であった。彼が再び荷物と会うことはないだろう。
ふむ、と彼は少し考える動作をした。口元に手を持っていく姿が美しい。とても絵になる光景である。
「……すみません、お金を貸して貰えませんか?」
「依頼分はお支払いします」
そうして私に着いてくるしか選択肢のない神崎は荷物と離れ離れになったショックからかしばらく放心状態であった。口元には出会った時のような笑みが張り付いているが口数が極端に少ないためわかりやすかった。
そして今に至る。
忠信の案内で広間に通された。広間には親族が集まっており一斉に見知らぬ訪問者に目がむく。
「そちら、どなたかしら」
1番に口を開いたのは忠信の母、信子だ。
つまり私の母だ。
後ろの忠信の顔は驚愕、隣の神崎はきょとんとしている。短い兄弟の関係であった。
山々に囲まれた広大な土地に座する木造平家は荘厳な雰囲気を纏っている。
「ごめんください!!!!!」
声を張り上げ来訪を告げる。
やはり第一印象、ファーストインプレッションはとても大切なので大きな声を出した方がいいかと思いました。
張り上げ続けて数分後、ドスドス足を鳴らして勢いよく門を開けたのは戸籍上次代の戸主である慈島忠信、龍蔵の長男である。大柄な体に浴衣がとても良くお似合いのナイスミドルだ。
「なんだ貴様は、今がこの慈島家にとってどれほど大事な行事があるのかわかっていて訪ねる愚か者ではあるまいな!」
神崎がチラチラとこちらを見てくる。
彼は私がこの家を出た没落ミュージシャンだと思っているためこちらの立場の悪さを察して心配してくれているのだろう。実に良い奴である。
「龍蔵さんがお亡くなりになったと聞いたものですから、生前大変にお世話になったので最後にご挨拶だけでもしておきたいと思いまして」
「葬式はもう終わっている。部外者は遠慮して頂きたい」
「部外者とは何事ですか!」
神崎が声を上げた。
「彼はこの家の家長であった慈島龍蔵の最後の息子ですよ、いくら一緒に暮らしていなかったとはいえ部外者扱いはあんまりではないでしょうか!」
いけない、そういう設定だった。
「なに!?親父は別に子供を作っていたというのか!」
ワンチャン行けそうな雰囲気である。
「はい、あなたは早々に家を出ていったから知らなかったでしょうけどね。私はこの家に生まれ、育って来ました。部外者扱いされる言われはありません」
「この九太郎さんは正真正銘あなたの弟君なのですよ」
「あの、お会いしたことはありませんでしたが忠信さんのお話は父からよく伺っていました。話に聞いた通りの立派な方で……。差し支えなければ、兄さん、と呼んでもかまいませんか?」
「そうだったのか……確かに私を前にしてその度胸、生前の父の面影を感じさせる。親族というのならば話は早い、着いたばかりで申し訳ないが広間にみな集まっている。案内しよう、弟よ。」
神崎が小声で「良かったですね」と声をかけてきた。
彼の中では確執のある親族が和解の一端を見せた感動的なシーンである。
薄く微笑んだ表情は微かな慈愛を感じさせた。
忠信とは赤の他人であるしこの家に足を踏み入れるのも今日が初めてである。まじごめん。
神崎には今日、実家に帰って死んだ祖父の遺産相続に関するゴタゴタを解決して欲しい、という依頼内容で着いてこさせている。詳細は着いてから話すということにしている。
そしてなぜ彼が会ったばかりの私の依頼を受けたのか、その答えは彼が荷物を船に忘れ無一文になったからである。気づいて港に戻ったはいいが時すでに遅し、船は世界一周旅行の観光船に早変わりし自由の国アメリカへと旅立った後であった。彼が再び荷物と会うことはないだろう。
ふむ、と彼は少し考える動作をした。口元に手を持っていく姿が美しい。とても絵になる光景である。
「……すみません、お金を貸して貰えませんか?」
「依頼分はお支払いします」
そうして私に着いてくるしか選択肢のない神崎は荷物と離れ離れになったショックからかしばらく放心状態であった。口元には出会った時のような笑みが張り付いているが口数が極端に少ないためわかりやすかった。
そして今に至る。
忠信の案内で広間に通された。広間には親族が集まっており一斉に見知らぬ訪問者に目がむく。
「そちら、どなたかしら」
1番に口を開いたのは忠信の母、信子だ。
つまり私の母だ。
後ろの忠信の顔は驚愕、隣の神崎はきょとんとしている。短い兄弟の関係であった。
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