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序章 憧れの志望校へ
1話 待ち焦がれた封筒
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2040年3月21日午前11時。
――北海道、室蘭市。
中学の卒業式を終え、始まった春休み。
浮かれる事も出来ず待っている。
たたひたすらに。
厳しい寒さの中、暖の取れない玄関で。
――……あ。
遠くで響くバイクの音。
――きっと、ゆうびん屋さんだ。
徐々に近づいて来る。
ブレーキの音が聞こえると遠くなり、ガチャンと機械的な音がすると再び近づく。
それを何度も繰り返していた、こういう日に限って近所の配達が多いみたい。
悶々としているうちに、軽快なエンジン音が至近で止まった。
つづけて、カチカチと電子音が聞こえる。
間違いない、うちへの郵便物だ。
手渡しで来ると察した私は、ドアーの内側で身構えた。
――準備は万端、いつでもどうぞ。
扉の曇りガラスに人影が現れる。
――そうそう、そこでチャイム!
扉の向こうに人の気配を感じると、
ガタン!と大きな音を立てて内側の郵便受けが揺れた。
「……ッ!?」
口から心臓が飛び出そうになる。
本当にびっくりした、それくらい大きな音だったから。
思わず胸の辺りを両手でおさえてしまう。
チャイムが鳴って、扉を開けてと、頭の中で思い浮かべていた。
そこにねじ込まれたカウンターパンチ。
鼓動も一気に跳ね上がった、ハンコを持つ手が震えるくらいに。
――ゆ、郵便受け……?
まだ、心臓がドキドキしてる。
私はうらめしそうに扉の方に目を向けた、人影はもう見当たらない。
遠くで聞こえるエンジンの音、それはゆっくりと遠ざかっていく。
「もう……、今日も来てないのかな」
本当、おどろき損。
身体もキンキンに冷え切ってし、これなら扉を開けて迎えればよかった。
「うぅ、さむ……」
実は、
こんな状況が3日間続いていた、届く予定のモノはそんなに重いものではない。
我慢して玄関で待っていたのに……。
そがれた気分を抑えながら郵便受けのふたを開ける。
「それで、今日は何ですかぁ」
ふてくされ気味にひとり呟く。
そりゃ、ぼやきたくもなるよ。うちの玄関は尋常じゃないくらい寒いんだ。
私は両手をさすりながら中の郵便物を手に取った。
「――これか」
驚かせた原因が現れる。
『ネット通販プリディ・春の太鼓判』
春のコーデ特集と書かれた表紙がきらびやか。
だけど、本とは思えない重さを感じる、なんでこんなに厚くするのかな。
これ以外はよくわからないハガキが数枚に、
緑の封筒――。
――…………え?
思考が止まる。
本に重なっていたのか最初は気づかなかった。
改めて手に取って確認する。
見慣れない緑色の封筒――。
厚みがあって、裏側なのかそこには何も書かれていない。
私はゆっくりとひっくりかえしてみた。
――弓木雪菜様。
現れた名前に小さくうなずく。
間違いない、これはわたし宛の封筒だ。
宛名の下側には四角い枠があって、その中に長い文字が印刷されていた。
――室蘭市立蘭北女子高等学校
「あっ……」
心臓がぎゅっとつかまれる様な感覚。
一瞬、息が詰まった。
「とうとう――、来た」
私が待ち焦がれたもの、
それはこの封筒の中に隠されている。
――まあ、うん。
いったん……、落ち着こうかな。
一緒に持っていた郵便物を靴箱の上に置き、暖かい居間へと向かう。
変な動悸がする……、封筒を持つ手も震えていた。
冷たくかじかんだ手で扉を開ける。
とたんに、暖かい空気が全身を包み込んだ。
――ああ、あったかぁい。
この温度差って北国特有じゃないかな。部屋は常夏、廊下は外って感じ。
特に我が家は居住区以外が極寒で、室内温度27度に対して、廊下は2~5度くらい。
新しい家なら違うんだろうけど、うちは古民家。
ひいおじいちゃんの代から受け継がれてる。
古いがゆえに、この季節の廊下は簡易冷蔵庫で、下手すりゃ凍っちゃう時もある。
温度差で身体が震える、さすがに冷えすぎたみたい。
足ばやにストーブの前へ進み、体をくねくね動かした。
昇ってくる温風が心地いい。
そして、
身体の冷気が熱でかき消されると、冷静な思考が戻ってきた。
――北海道、室蘭市。
中学の卒業式を終え、始まった春休み。
浮かれる事も出来ず待っている。
たたひたすらに。
厳しい寒さの中、暖の取れない玄関で。
――……あ。
遠くで響くバイクの音。
――きっと、ゆうびん屋さんだ。
徐々に近づいて来る。
ブレーキの音が聞こえると遠くなり、ガチャンと機械的な音がすると再び近づく。
それを何度も繰り返していた、こういう日に限って近所の配達が多いみたい。
悶々としているうちに、軽快なエンジン音が至近で止まった。
つづけて、カチカチと電子音が聞こえる。
間違いない、うちへの郵便物だ。
手渡しで来ると察した私は、ドアーの内側で身構えた。
――準備は万端、いつでもどうぞ。
扉の曇りガラスに人影が現れる。
――そうそう、そこでチャイム!
扉の向こうに人の気配を感じると、
ガタン!と大きな音を立てて内側の郵便受けが揺れた。
「……ッ!?」
口から心臓が飛び出そうになる。
本当にびっくりした、それくらい大きな音だったから。
思わず胸の辺りを両手でおさえてしまう。
チャイムが鳴って、扉を開けてと、頭の中で思い浮かべていた。
そこにねじ込まれたカウンターパンチ。
鼓動も一気に跳ね上がった、ハンコを持つ手が震えるくらいに。
――ゆ、郵便受け……?
まだ、心臓がドキドキしてる。
私はうらめしそうに扉の方に目を向けた、人影はもう見当たらない。
遠くで聞こえるエンジンの音、それはゆっくりと遠ざかっていく。
「もう……、今日も来てないのかな」
本当、おどろき損。
身体もキンキンに冷え切ってし、これなら扉を開けて迎えればよかった。
「うぅ、さむ……」
実は、
こんな状況が3日間続いていた、届く予定のモノはそんなに重いものではない。
我慢して玄関で待っていたのに……。
そがれた気分を抑えながら郵便受けのふたを開ける。
「それで、今日は何ですかぁ」
ふてくされ気味にひとり呟く。
そりゃ、ぼやきたくもなるよ。うちの玄関は尋常じゃないくらい寒いんだ。
私は両手をさすりながら中の郵便物を手に取った。
「――これか」
驚かせた原因が現れる。
『ネット通販プリディ・春の太鼓判』
春のコーデ特集と書かれた表紙がきらびやか。
だけど、本とは思えない重さを感じる、なんでこんなに厚くするのかな。
これ以外はよくわからないハガキが数枚に、
緑の封筒――。
――…………え?
思考が止まる。
本に重なっていたのか最初は気づかなかった。
改めて手に取って確認する。
見慣れない緑色の封筒――。
厚みがあって、裏側なのかそこには何も書かれていない。
私はゆっくりとひっくりかえしてみた。
――弓木雪菜様。
現れた名前に小さくうなずく。
間違いない、これはわたし宛の封筒だ。
宛名の下側には四角い枠があって、その中に長い文字が印刷されていた。
――室蘭市立蘭北女子高等学校
「あっ……」
心臓がぎゅっとつかまれる様な感覚。
一瞬、息が詰まった。
「とうとう――、来た」
私が待ち焦がれたもの、
それはこの封筒の中に隠されている。
――まあ、うん。
いったん……、落ち着こうかな。
一緒に持っていた郵便物を靴箱の上に置き、暖かい居間へと向かう。
変な動悸がする……、封筒を持つ手も震えていた。
冷たくかじかんだ手で扉を開ける。
とたんに、暖かい空気が全身を包み込んだ。
――ああ、あったかぁい。
この温度差って北国特有じゃないかな。部屋は常夏、廊下は外って感じ。
特に我が家は居住区以外が極寒で、室内温度27度に対して、廊下は2~5度くらい。
新しい家なら違うんだろうけど、うちは古民家。
ひいおじいちゃんの代から受け継がれてる。
古いがゆえに、この季節の廊下は簡易冷蔵庫で、下手すりゃ凍っちゃう時もある。
温度差で身体が震える、さすがに冷えすぎたみたい。
足ばやにストーブの前へ進み、体をくねくね動かした。
昇ってくる温風が心地いい。
そして、
身体の冷気が熱でかき消されると、冷静な思考が戻ってきた。
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