世界が僕に優しくなったなら、

熾ジット

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 結局あの後、三回戦にまでもつれ込んだ。
 へろへろとベッドから起き上がれないでいると、さっぱりとした表情の男が、たらいとタオルを持ってきた。髪は濡れていて、明らかにシャワーを浴びたあとだ。

 もはや抵抗する体力もないので、されるがままに。けれど、僕の体を拭く手つきはとてもやさしいもので。抱くときはあんなに乱暴なのに。

 ふと、男が口に何かを咥えているのに気が付く。
 タバコだったら灰が怖いので、拭くときはやめてくれ、と言おうとして、咥えているのはタバコではなく木の棒だったことに気が付く。

 ……木の棒?
 割りばしみたいな、加工されたものでなく、その辺に落ちていそうな木の棒。あまりのおかしさに、思わず凝視した。

「あんだよ」

 僕の視線に気が付いた男が少し、不機嫌そうに眉をひそめた。

「咥えてるの、なに?」

 喘ぎすぎたか、声がかすれる。ほとんど囁きみたいなものだったが、男には届いたようだった。

「ポミーだよ。見たことねえのか? おら」

 男は口からそれを取ると、僕の口元に近づけた。咥えている部分だけは皮が削られているようで、そこだけ白い。男の唾液がついていることに一瞬躊躇したが、あれだけ行為をして、キスもしたあとじゃ今更か、とそれを咥えた。

「あま……」

 蜜のつまったリンゴのような風味が口の中に広がる。木自体に味があるようだ。

「平民は砂糖やはちみつなんか高くて買えねえからな。オレらみてえなやつの甘味っていったらこれだ」

 分かったか、と男は僕の口から棒を抜き取り、再び咥えた。
 平民、という言葉に、嫌な響きがあった。自分を揶揄っていうようなニュアンスじゃない。本当に、こころからそう思っていて、それが当たり前であるという風だ。

 しかも、ポミーなんて言葉は聞いたことがないし、そんな習慣日本では聞いたこともない。

「ここ、どこ……」

「アルツナの森」

 言葉と同時に、男は無遠慮に指を後ろの穴に突っ込んだ。しかも二本一緒に。思わず変に上ずった声をあげてしまった。
 中のものを出すつもりなのだろうが、ぐりぐりとやられたらたまったもんじゃない。

「ひっ」

「おとなしくしてろ」

 もう暴れる元気はないのだが。男に強く釘をさされると、体がこわばって駄目だ。

「ん、に、にほ、んにはどうやって、ぁ、帰るの?」

「あ? ニホン? 聞いたことねえな」

 ぐちぐちと卑猥な音を聞き、腹の中で暴れる指の感覚に耐えながら、僕は頭の中で考える。
 もしかして、異世界に来てしまったのではないか、と。

「ま、お前はオレが拾ったんだ。好き勝手させてもらうぜ。飯の心配しないでいいだけありがたいと思えよ。おら、終わりだ。意識があるなら今度は自分で服、着ろよ」

 ぐ、と尻を拭われ、後処理の終了を告げられる。
 ここにいれば、この男のいいように抱かれるのは目に見えていた。それでも、ここにいれば少なくとも雨風はしのげるし、飢えも考えなくていい。

 家に帰る算段をつけるまでは、ここにいてもいいかもしれない。どうせ、乱暴に抱かれ慣れているオメガだ。
 僕は服に袖を通しながら、そんなことを考えた。
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