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第四話
しおりを挟む「最近あの子、見かけないな」
一緒に走り込みをしていた友人の言葉にライナスは一瞬誰のことを言われているのかわからなかった。それでも不思議と脳裏に温かなチョコレート色の髪の、やさしげな顔立ちの同級生の姿が浮かんだ。
「あの子……?」
それでも友人が彼女のことを言っているかわからず、ライナスは聞き返した。「よくお前に声をかけている子だよ」とどこかおもしろそうに彼は言い、その口から出た特徴はまさにライナスが思い浮かべた彼女のものだった。
「反応薄いな。気にならないのかよ?」
「なんで気にする必要があるんだ?」
「だってあの子、絶対にお前のこと好きじゃん」
「……は?」
「そうじゃなかったらわざわざ話しかけづらいお前に声をかけに来ないだろ」
当然とばかりにそう言った友人にライナスは眉間にしわを寄せることで返事をした。失礼なことを言われた気がするがまあそれはいい。しかしそういう意識をしたことがなかったライナスにとって、友人の発言はまさに寝耳に水だった。
ライナスは今までそれなりに他人から好意を寄せられたことがある。魔法騎士を多く輩出している家に生まれ自身も魔法騎士を目指すライナスは元々整った顔立ちをしていたし、鍛えられた体を持っていた。それが魅力的に映るらしく、入学してから一年生の間だけで何度も告白を受けている。
しかし名前も知らない彼女はたしかにライナスにわざわざ声をかけて自主訓練を一緒にと誘っては来たが断ればそれで引き下がったし、何より他の時には一切接点がない。だからそういう好意を抱かれているとは少しも思っていなかったのだ。
友人から指摘されてからというもの、ライナスは彼女のことが気になるようになった。クラスが違うため、人がにぎわう廊下や食堂にいる時は自然と彼女のチョコレート色の髪を捜すようになっていた。見つければ目で追うようになり、そんなライナスに友人はいつもにやにやと愉快そうな笑みを浮かべていた。どうやら彼はライナスが彼女のことを意識していると思っているようだった。
そういうつもりはないのに……。
その日も友人からあれこれ詮索され、うんざりして逃げるように厩へと向かうところだった。学園では馬術の授業のために何頭かの馬を飼っている。世話をする者はちゃんといるのだが生徒も手伝っていいことになっていたので、元々動物が好きなライナスはよく馬の世話をしに行っていた。
「あっ、すみません」
一階の廊下の角を曲がったところで反対側から来た人とお互いにうまくよけ切れず、目の前でよろめいた体にライナスは咄嗟に手を伸ばした。つかんだ腕は驚くほど細い――しかしそれ以上に、目の前に現われたチョコレート色に驚いてライナスは明るい緑色を見開いた。
「いや――すまない、こちらこそ」
心臓が跳ねるように動くのを感じながら、ライナスは手を離した。目の前の彼女もライナスに気づいて目を丸くした。
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