試さずにはいられない。

ひやむつおぼろ

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燻る


 ご近所さんで5歳下。望月カンパニーの御曹司、望月桃矢は産まれた頃からそれはそれは可愛くて、見目の整った子供だった。オレはあいつより美しいやつをいまだに見たことがない。すっと通った鼻筋に、白い肌。少し明るい茶色の目。ハの字に垂れた眉毛、ふわりと細い猫っ毛の髪。すべてがすべてあるべき場所に収まり、天使ように愛らしく、女神のようにはっと息を呑むほど美しかった。

「お兄ちゃん、たすけっ、たすけて!」

「とうや!おいおっさん!手を出すな!」

 容姿に恵まれた桃矢はよく誘拐をされかけたり、変質者に襲われかけたりと目が離せなくて、オレはずっとそばにいた。あまりに綺麗だったからか、桃矢はSPにも襲われることがあった。桃矢の両親はオレが何度も桃矢を救うから、その腕を買ってくれていた。

 あいつが公園で友達と遊ぶ時も、プールに行くんだって時もついていった。幼い桃矢と誰よりも一番長くいたのはオレだった。

「お兄ちゃん、こわ、こわかった。」

「もうだいじょうぶだぞ。お兄ちゃんが一緒だからな。」

「ん、お兄ちゃん、大好き。」

 桃矢はオレをお兄ちゃんと舌ったらずに呼んで慕ってくれた。変質者から守れば、泣きついての腕の中に飛び込んでくれた。その小さな手がオレの背中に回って縋り付いて、ほうっと溜息を吐いて、安心したように身を預けてくれて…。嬉しくて、愛しくて。こんなに綺麗なものを守っていられると思うと、光栄にさえ感じて。ずっとずっと一緒にいた。

 美しいものの美しい笑みを一身に受け、オレは狂ってしまった。

「おにいちゃんは、とうやのこと好きだよね」

 おままごとのセリフだ。桃矢がお母さんを、オレがお父さんを演じた後、確かめるように桃矢が聞くのだ。桃矢がお母さん役をやめても、おにいちゃんは桃矢のこと好きだよね?と。

「おにいちゃん?」

 なんの衒いてらいもなく、答えたかった。桃矢に手を伸ばして、傷つけようとした大人たちと同じにはなりたくなかった。桃矢と本物の兄弟のように並んでいたかった。

「ごめん。桃矢」

 しかし12才の夢は、下心は、オレを裏切った。獣のように組み敷いて、痛がる桃矢を手込めにする夢は、桃矢から遠のこうと決意するには十分だった。

 中学高校の間は剣道に専念した。桃矢には桃矢を守るための武術が欲しいって、嘘をついて。桃矢には専属のSPがついた。大学になってからは一人暮らしを始めた。合コンにも、発展場にも行って……。桃矢を忘れるために手を尽くした。桃矢を思うのは間違いだと、他のひとにに会えばこの下心を捨てられるつもりでいた。

 ダメだった…。茶色の瞳、ふわふわと広がる癖毛。白い白い肌。オレは、遊んでくれた男たちのどこかに、桃矢を探していた。

ーー

「輝昭兄さん、助けて!」

 恐れていたことが起きた。彼は中学3年生オレはちょうど20才になったばかりの、十二月のことだった。

「桃矢、なんでここに…」

 発展場に桃矢が来ていた。オレを追ってここにやってきたのか、中学の制服のまま屈強な男に肩をつかまれ、下がり眉をさらに下げて震えていた。

「ぼく、僕はそんなつもりなかったのに。ね、ねえ、兄さんもそうだよね。」

「……。」

「兄さん…?ねぇ、兄さん、帰ろうよ。」

「ねぇ…テル君大丈夫?」

 回避せねばならないものだった。

 オレの腕にその細く白い腕を絡めていたのは、東雲…。この発展場で一番桃矢にそっくりな姿をした華奢な男だった。なんども、桃矢のかわりに抱いた男だった。

「君の弟なら…まだ未成年だよね。」

 桃矢に手をかけている男を睨む。東雲は子供に優しかった。誰とでも寝る男ではあったけど、オレが東雲を寝具の上でちがう名で読んだことも、全てを許すような男だった。

「私はいつでもいいからさ、今日は弟君と一緒に帰りなよ。」

「…ありがとう。東雲」

 またねー。と言って桃矢を襲おうとしていた男の手を取り、ちゃっかりとホテルにつれていく。

 桃矢は、東雲を睨んでいた。
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