完全犯罪計画部!~ご相談につきどんな完全犯罪でも創ります!~

夜野舞斗

文字の大きさ
9 / 40
1stプロジェクト ヤンデレ懺滅作戦

7.凍りつくのは、失敗の代償

しおりを挟む
「へえ。つまり、こんなことやってるんだあ。部活でー」
「は、はい」

 妃芽姉さんに「完全犯罪計画部」のことを洗いざらい話してしまった。なんてことを……勿論、後悔はしている。
 彼女の口車に乗り、依頼内容まで漏らしたのは、迂闊だった。
 これでは、真面目に部活を設立した東堂さんにとっては大迷惑である。ぼくは裏切ってしまったのだ。怒られるだろうな……いや。待てよ。
 彼女は情報をくれると言った。それならばFBIとCIAも似たようなことをやっている。機密情報を信用できる情報提供者に話し、捜査を進めることだ。ぼくの取った行動は叱られるべき行動ではない。褒めたたえられるべき行動のはずだ。彼女と取引が成功すれば……
 このようにテレビの特番で手に入れた知識をフル活用し、考え込んでいた。
 
「そうだ……姉ちゃん。その彼を知っている人の話というのは?」

 部屋には誰もいない。しかも、あったはずのスマートフォンが消えている。それが示すのはただ一つ。

「御影 妃芽! 見つけ次第、お前を射殺する!」

 家に轟く声。返答や文句は来ない。どうやら親は外出中。彼女は息を潜めて、隠れているようだ。
 取り敢えず、殺虫剤を手に持って向かいにある姉さんの部屋へ飛び込む。

「きゃあ! 陽ちゃん!」

 彼女は、ぼくのものとは別に彼女自身のスマートフォンを操作して悲鳴を上げながら笑っていた。

「はーい! ワタシもグループに入っちゃいましたあ! 残念でしたー!」

 迷わず殺虫剤を噴霧する。密閉した部屋のせいで、スプレーのガスが溜まって周りが視界が分からなくなってしまった。それが状況を悪化させる……どうしよう。

「げっほ。げっほ……やったわねー!」
「ええと、ごめんなさい! ええと、もう色々やっちゃっていいから」
「え!? いいの?」

 よし。姉さんからの仕打ちはどんなものであっても耐えてもみせよう。そう思って、彼女のスマートフォンを取ろうとした。手の中に入ったのは、自分のスマートフォン。確か、これでも退会させられるはずだが……こうなると古月さんたちに悪い印象を与えてしまうかもしれない。
 殺虫剤の霧が晴れてきた。
 彼女自身で退出してもらい、全責任を彼女に押しつけよう。そう思って、彼女のスマートフォンに手を伸ばそうとした時だった。

「メッセージ送ったよ!」

 そう言われ、手を引っ込めながらスマートフォンの画面を見た。

「こんばんは! 陽介の姉です! この度、彼の紹介でこの部活に入ることになりましたあ! よろしくね!」

 その後に熊の可愛いスタンプが押されている。もう動くこともできず、喋ることもできなかった。できることとしたら、固まって画面を見つめていることだけだった。

「コンビニでデザートのプリン買ってきたわよ!」

 母の声。そこに元気よく娘が返事をしていた。

「はああい! すぐ行くから食べないでねえ!」

 妃芽姉さんが肩に手を当てて、情報をくれる……

「彼の話だと、彼は滅茶苦茶、大人しい好青年みたい。まだ彼女とかはいないみたいだけど……これでいいかしらあ。そうそうこれで、ワタシに敵対しそうな女の子はいなくなったし、また後でお姉ちゃんと一緒に遊びましょうね」

 いつもなら何故そこまで聞き出したのだと厳しく追及するところなのだが今回に限って、そんな活力は枯渇しきっていた。
 彼女は猫のように飛び跳ねながら、一階のリビングへと降りて行く。

「ねえ!」
「何があったの? というか陽介君ってお姉ちゃんいたんだ」
「どういうことなの?」
「さあ? 陽介君はもう寝ちゃったのかしら」

 頭を真っ白にして自室に戻り、扉を閉める。

「なんてことしたんだろう」

 夏のほんの少しの夜風で凍死するかと思った。


――――――――――――――――――――

「で、気を取り直してえ」
「何で、ぼくの体の上に乗っかってるの……もう午前二時ですし姉ちゃんに言われた通り、遊びきったんだから眠らしてくれ」
「ごめんねえ。やだよ!」

 姉さんはスマートフォンをいじりながら、布団の中に潜っているぼくの安眠を邪魔しようとしていた。

「で、ワタシさあ。やっぱり本気で『完全犯罪計画部』に入ろうかな」

 姉さんの提案で「完全犯罪計画部」の名から「ボランティア支部」に変更されたグループ画面が映し出されていた。古月さんが令嬢であること。そして、親や友人に見られることを配慮したうえでの提案らしい。(あれから、東堂さんと古月さんの返信が怖くて、ぼくの方は全くスマートフォンを触っていない)

「さっきは面白そうとか言ってた癖に……」
「まあ。そんな軽い気持ちじゃくてね。この子たち、陽君のこと褒めてるみたいだし」
「え?」

 机の上にのっているスマートフォンを取りに行こうとしたが、彼女の重みで布団からでさえ抜け出すことができなかった。

「ほら。顔出して、見なよ」
「本当だ……」

 そこには仲間を増やしてくれたことによる称賛のメッセージがあった。良かった。そう思った途端、安心しきって意識がなくなる……

「寝るのはや! まあいいか。こういう完全犯罪では、嘘の証言者役、共犯者がいてもいいよね! これから頑張るぞお! 実はサークルとか入ってなかったから……こういうのでもいい出会いがあるかも……」

 非常にブラザーコンプレックスで暑苦しい女子大生、御影 妃芽が仲間に加わった!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...