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1stプロジェクト ヤンデレ懺滅作戦
8.機嫌の悪い女王様
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「そうか。それで……信用できる部分もあるけど、あんたのミスも少なからずあるんじゃない? ……やっぱり信じられないわね。こっちは、秘密は死守したっていうのに」
「そんなあ……」
「まあまあ、ユニちゃん。陽介君をそんなに責め立てないの」
月曜日も無事に授業が終わり、ぼくたち三人は被服室に集まった。あれ?
窓を開けたときに入ってきてしまった濁った色の青葉や埃を箒で部室の隅へと掃きながら、会話をする。古月さんとは放課後まで教室でも全く会話をしなかったのに、今になって何故文句を言うのだ。クラスでは、ぼくから話しかけようともしなかったから、原因はぼくにもあるけれど。
そういえば、アプリで褒めていたのは東堂さんだけだったような気がする。……そうだ。鞄から出したスマートフォンでアプリを開いてみると履歴には、確かに東堂さんだけがメッセージを発信したことが分かる。……真夜中に姉さんは「たち」って言ってたのだが、勘違いだったか。
「東堂さん。ありがとね。ぼくの姉さんの奇行に付き合ってくれて」
「いいのよ。いいのよ。貴方のお姉さん、結構いい人におもえるんだけど」
「そんなわけないよ……」
東堂さんは優しく包み込むようにぼくを許してくれた。それとは正反対に古月さんはぼくに塵取りと箒を渡して、上目目線で命令をする。
「御影。これでゴミを集めて、箒と一緒に片付けてきなさい」
「あ……ああ」
不機嫌そうな顔をしている彼女の頼みを断れるはずもなく、ぼくは言われた通りに行動した。姉さんにいつか……いつか……ギャフンと言わせてやるからな。そんな戯言を考えて、廊下にある用具箱に箒を入れて掃除を終える。
ぼくが部屋に三人で古月さんの調査報告(彼女が家で詳細を調べてきたらしい)を聞くことに決まっていた。ぼくたちは机を用意せず、椅子に座って話をする。
「あっ……その前に質問だけど」
「陽介君、質問が多いね」
「アタシの話が忘れない程度に早くして……アタシ三秒で忘れるから」
嘘をつけ!お前は三秒以内に床へと頭でもぶつけ、記憶喪失にでもなるのかよ!
まだ怒っているのか。彼女がぼくを急がせるため、早口で質問をした。最初の方に噛んでしまったのは少し恥ずかしい。
「なんでっ、ぼ……くたちたん、間違えた。三人なんですか? 確か、四人で活動してたんだよね」
「『一人は色恋話については全く興味ないから、引き受ける気がしない。次の依頼が入ったら教えてくれ』って言ってたわ」
「そうなんだ……まるでどこかのワガママ王女様みたいですね」
「え? 誰の事かしらねえ……」
失言。一応、違う人をイメージして例えを出したのだが、古月さんに勘違いされてしまったらしい。彼女は「質問と妄言はそれだけね」と話し、書類を鞄から取り出した。
そうして、ぼくに向かって見下すようにこう言った。
「女王様ですけど……まあいいわ。世間のワガママ女王様とは違って心が広いから許してあげる」
「う、うん。そうしてくれると、ありがたい」
そのやり取りを見て、東堂さんは小さく息を漏らしていた。笑うのを必死で堪えているのだろうか。
古月さんはそれに気づくことなく平然とした表情を見せ、書類の重要な点だけ読み始めた。
「宮古 楽助。大学二年生。弓道サークルでまだ弓道をやっている。成績は大学の中で中間。普通に平均的。彼女がいたことはないみたい。住所は……分かりやすく言うと光跡市のとあるアパートのそばの古い一軒家で一人暮らし――」
「あっ! ユニちゃん。アパートってどこ?」
「アパート名? 言って分かるの? アパート・田中っていうんだけど」
「それって……依頼人の浜野先輩が住んでる場所じゃない!」
東堂さんは立ち上がって、胸からスマートフォンを取り出した……大きな胸だと隠せる場所があるんだな。
それは今、どうでも良い。他の計画を立てなくてはいけない可能性が出てくる。依頼人と相談をしなくてはいけないのかもしれない。彼女につられて、ぼくと古月さんも飛び上がる。
何をすれば……良い!?
「そうだ。私の方が交渉はしやすいと思うし。ユニちゃんと陽介君は、危険だけど……宮古さんの行動チェックお願いできる?」
「え!? まず……」
無茶なことを言う。それはぼくにとっては無理難題であるのだが、彼女は自慢するかのように胸を張って書類を手渡してきた。
今日、宮古さんが受けるべき講義とサークルが全て終わる時間は18時。そこまで調査してきたなんて!
「まさか金の権力が使えるアタシがいるべき場所を調べなかったとでも? 正直、あんたと一緒に任務って……納得いかないけど」
「今のところ、しょうがないわよ! 仕事を決行するためにもユニちゃん。男の子との行動」
「分かってる。行くわよ!」
古月さんが部室を勇ましく飛び出す。ぼくも追わなくては……
そういえば、古月さんの使うシステムを悪用すれば簡単にストーカーができてしまうな。そういう機械が日常的に使用されるのは遠い未来になるのかな、と思うぼくであった。
この後、ぼくたちは夜の闇に向かって突っ走ることになる。
「そんなあ……」
「まあまあ、ユニちゃん。陽介君をそんなに責め立てないの」
月曜日も無事に授業が終わり、ぼくたち三人は被服室に集まった。あれ?
窓を開けたときに入ってきてしまった濁った色の青葉や埃を箒で部室の隅へと掃きながら、会話をする。古月さんとは放課後まで教室でも全く会話をしなかったのに、今になって何故文句を言うのだ。クラスでは、ぼくから話しかけようともしなかったから、原因はぼくにもあるけれど。
そういえば、アプリで褒めていたのは東堂さんだけだったような気がする。……そうだ。鞄から出したスマートフォンでアプリを開いてみると履歴には、確かに東堂さんだけがメッセージを発信したことが分かる。……真夜中に姉さんは「たち」って言ってたのだが、勘違いだったか。
「東堂さん。ありがとね。ぼくの姉さんの奇行に付き合ってくれて」
「いいのよ。いいのよ。貴方のお姉さん、結構いい人におもえるんだけど」
「そんなわけないよ……」
東堂さんは優しく包み込むようにぼくを許してくれた。それとは正反対に古月さんはぼくに塵取りと箒を渡して、上目目線で命令をする。
「御影。これでゴミを集めて、箒と一緒に片付けてきなさい」
「あ……ああ」
不機嫌そうな顔をしている彼女の頼みを断れるはずもなく、ぼくは言われた通りに行動した。姉さんにいつか……いつか……ギャフンと言わせてやるからな。そんな戯言を考えて、廊下にある用具箱に箒を入れて掃除を終える。
ぼくが部屋に三人で古月さんの調査報告(彼女が家で詳細を調べてきたらしい)を聞くことに決まっていた。ぼくたちは机を用意せず、椅子に座って話をする。
「あっ……その前に質問だけど」
「陽介君、質問が多いね」
「アタシの話が忘れない程度に早くして……アタシ三秒で忘れるから」
嘘をつけ!お前は三秒以内に床へと頭でもぶつけ、記憶喪失にでもなるのかよ!
まだ怒っているのか。彼女がぼくを急がせるため、早口で質問をした。最初の方に噛んでしまったのは少し恥ずかしい。
「なんでっ、ぼ……くたちたん、間違えた。三人なんですか? 確か、四人で活動してたんだよね」
「『一人は色恋話については全く興味ないから、引き受ける気がしない。次の依頼が入ったら教えてくれ』って言ってたわ」
「そうなんだ……まるでどこかのワガママ王女様みたいですね」
「え? 誰の事かしらねえ……」
失言。一応、違う人をイメージして例えを出したのだが、古月さんに勘違いされてしまったらしい。彼女は「質問と妄言はそれだけね」と話し、書類を鞄から取り出した。
そうして、ぼくに向かって見下すようにこう言った。
「女王様ですけど……まあいいわ。世間のワガママ女王様とは違って心が広いから許してあげる」
「う、うん。そうしてくれると、ありがたい」
そのやり取りを見て、東堂さんは小さく息を漏らしていた。笑うのを必死で堪えているのだろうか。
古月さんはそれに気づくことなく平然とした表情を見せ、書類の重要な点だけ読み始めた。
「宮古 楽助。大学二年生。弓道サークルでまだ弓道をやっている。成績は大学の中で中間。普通に平均的。彼女がいたことはないみたい。住所は……分かりやすく言うと光跡市のとあるアパートのそばの古い一軒家で一人暮らし――」
「あっ! ユニちゃん。アパートってどこ?」
「アパート名? 言って分かるの? アパート・田中っていうんだけど」
「それって……依頼人の浜野先輩が住んでる場所じゃない!」
東堂さんは立ち上がって、胸からスマートフォンを取り出した……大きな胸だと隠せる場所があるんだな。
それは今、どうでも良い。他の計画を立てなくてはいけない可能性が出てくる。依頼人と相談をしなくてはいけないのかもしれない。彼女につられて、ぼくと古月さんも飛び上がる。
何をすれば……良い!?
「そうだ。私の方が交渉はしやすいと思うし。ユニちゃんと陽介君は、危険だけど……宮古さんの行動チェックお願いできる?」
「え!? まず……」
無茶なことを言う。それはぼくにとっては無理難題であるのだが、彼女は自慢するかのように胸を張って書類を手渡してきた。
今日、宮古さんが受けるべき講義とサークルが全て終わる時間は18時。そこまで調査してきたなんて!
「まさか金の権力が使えるアタシがいるべき場所を調べなかったとでも? 正直、あんたと一緒に任務って……納得いかないけど」
「今のところ、しょうがないわよ! 仕事を決行するためにもユニちゃん。男の子との行動」
「分かってる。行くわよ!」
古月さんが部室を勇ましく飛び出す。ぼくも追わなくては……
そういえば、古月さんの使うシステムを悪用すれば簡単にストーカーができてしまうな。そういう機械が日常的に使用されるのは遠い未来になるのかな、と思うぼくであった。
この後、ぼくたちは夜の闇に向かって突っ走ることになる。
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