20 / 40
2ndプロジェクト 殺人詐欺の怪奇談
17.詐欺が奏でる大胆的地道な復讐計画
しおりを挟む
「まあ。今回の計画について、依頼人やみんなには話してないんだけど、だいたい脳内にあるんだよね」
「マジかあ……今回こそは犯罪と呼べる行動をしなくちゃなんねえんだよな……あ。立ってるのもなんだし……」
してもいない罪の重さに恐れ入るぼく。彼女たちに椅子を部室の隅から取り出して、小さな声で座るよう勧めた。古月さんは腰を掛けて、東堂さんを見る。これから彼女が笑顔で言い出す犯罪計画とは何であろうか。
「じゃあ、詐欺の仕方について説明するね!」
東堂さんはチョークを上に投げ、格好よくキャッチしてから正面の黒板に「詐欺」と大きく書いてしまった。その様子を古月さんが、素早く異議を申し立てた。
「ねえ! ここ職員室前の教室なんだし! 詐欺って書くのはやめない? この部活動は秘密何でしょ! それに今から犯罪の仕方を説明するわけでしょ? ちょっと痛むものが……」
彼女の指摘がなければ、ぼくの心はナイフで切り刻まれていたかもしれない。確かにそうだ。教師の目も危険だが、その方法を習うというのは何となく良心が叩かれたり、刺されたりするように痛みを感じる。
その言葉で古月さんやぼくの気持ちを察したのか彼女なりの解決策を教えてくれた。
「じゃあ、今から私が言ったり書いたりのは計画に見せかけた予防策。これでユニちゃんの悩みも大丈夫とまではいかなくても、心にくる攻撃がクッションによって抑えられることくらいはできると思う」
つまり詐欺の被害にあわないようにする計画をぼくたちに教え、そこから計画を知れ。そういうことなんだよな。この方法なら例え、教師に見られたとしても「近所の人が詐欺にあわないようにするため」の一言で許される。だって、ボランティア部なんだもの。
「ボランティア……奉仕……犯罪被害に…………合わせないようにするのも……ボランティア、そう言えばいい」
河井さんは相変わらず無口の様だが、しっかりと物事を考えてくれているみたいだ。副部長として申し分ない力を持っているようで頼もしい。そして、その賢い頭を犯罪に使っているのが少々悲しい気がした。
あれ。では何故、自分はここにいるのだろうか?
「エナちゃん。先生が来たら、真っ先にそれ言ってあげて。で、説明始めるよ!」
「いいわよ」
「まず、詐欺をするとするでしょ。その種類、一人ずつ何個か言ってみて?」
ここで質問か……よし。あれを……
「オレオレ詐欺はあるでしょ? それからワンクリック詐欺……ミステリーだと保険金詐欺、結婚詐欺なんかもあるわね」
古月さんが知っているものをほとんど答えてしまった。ぼくが急いで言葉を出そうとしたのだが、数秒の差で先を越されてしまった。
「架空請求詐欺、融資保証金詐欺……還付金詐欺……これと古月の……オレオレ詐欺が……電話を使う詐欺。……フィッシング詐欺……寸借詐欺……リフォーム詐欺……前金詐欺……フィッシング詐欺………募金詐欺、キャンセル詐欺……予約詐欺……あと後払いとするものを最初から払う気がなくて、食べたり使ったりするのも……詐欺に……なる。注意して」
「……ええ」
ぼくは河井さんから自分の持っている財布を遠くに離した。別に取られるわけではないの分かっている……しかし法律に興味がある訳でもないのに犯罪を知っていたことに、どうしても不信感が湧いてきてしまった。
「陽介君、言える詐欺は……」
「ないよ。言いたかったの、全部出ちゃったから」
「そ、そうよね。エナちゃん、勉強してるからね。凄いからね!」
東堂さんも焦っているように聞こえた。気のせいならば、良いのだが。
後はその知識を河井さんが犯罪に使わないように祈るばかりである。頼むから、その知恵を正義に使ってくれ……
「まあ、それで今回教える犯罪は架空請求詐欺」
その言葉。実際は架空請求詐欺で進めていくつもりなのだろう。
架空請求詐欺。それは払わなくても良い使用料を請求することで、お金を手に入れる詐欺である。この手の詐欺はかなり流通しているものだから、誰でも知っているはずだ。
そんな知識を頭の中から取り出していると、東堂さんが笑い出した。もう計画が成功したかのように……
「知ってる? 断言できるんだけどこういう詐欺で犯人が捕まることも、そもそも被害者が通報することもほとんどないのよ!」
「な、なんだって!? ……ねえ」
河井さんが冷静な顔をしているので敢えて今の話をした東堂さんではなく、彼女に説明を求めた。
「ワンクリック詐欺も……架空請求の仲間……例えば、君がインターネット……使ってるとき……身に覚えのない……請求が来たらどうする?」
「どうするって、だいたい無視するな」
「その通り」
河井さんは頷いて少しだけ微笑みを見せた。河井さん……何だか、目を合わせづらくなってしまった。何故なんだろ。姉さんとは嫌という程、目を合わせられるというのに……今はどうでもいいか。
「えっと……だから、わざわざ通報する人もいないし、逮捕もされない確率が高いのか。だから、東堂さんはこれを?」
「そうよ! 特に男性陣は気をつけてね……被害にあう人多いみたいだから。まあ、どうにしても、そういうワンクリック詐欺は深入りすると情報盗られちゃうから、無視することが一番だよ!」
男性陣と言っても、この部活。男子はぼく一人なんだけどね。
そこに呆れ笑いをしていると、東堂さんは黒板にとある文章を書いていた。
「特に男子は注意すること。アダルトサイトなどに入ると、その情報を誰かに知られたくないという思いから、払ってしまうことがあるから……」
飛び出そうな眼玉を抑え、彼女の字を黒板消しで遠慮なく消させていただいた!
「マジかあ……今回こそは犯罪と呼べる行動をしなくちゃなんねえんだよな……あ。立ってるのもなんだし……」
してもいない罪の重さに恐れ入るぼく。彼女たちに椅子を部室の隅から取り出して、小さな声で座るよう勧めた。古月さんは腰を掛けて、東堂さんを見る。これから彼女が笑顔で言い出す犯罪計画とは何であろうか。
「じゃあ、詐欺の仕方について説明するね!」
東堂さんはチョークを上に投げ、格好よくキャッチしてから正面の黒板に「詐欺」と大きく書いてしまった。その様子を古月さんが、素早く異議を申し立てた。
「ねえ! ここ職員室前の教室なんだし! 詐欺って書くのはやめない? この部活動は秘密何でしょ! それに今から犯罪の仕方を説明するわけでしょ? ちょっと痛むものが……」
彼女の指摘がなければ、ぼくの心はナイフで切り刻まれていたかもしれない。確かにそうだ。教師の目も危険だが、その方法を習うというのは何となく良心が叩かれたり、刺されたりするように痛みを感じる。
その言葉で古月さんやぼくの気持ちを察したのか彼女なりの解決策を教えてくれた。
「じゃあ、今から私が言ったり書いたりのは計画に見せかけた予防策。これでユニちゃんの悩みも大丈夫とまではいかなくても、心にくる攻撃がクッションによって抑えられることくらいはできると思う」
つまり詐欺の被害にあわないようにする計画をぼくたちに教え、そこから計画を知れ。そういうことなんだよな。この方法なら例え、教師に見られたとしても「近所の人が詐欺にあわないようにするため」の一言で許される。だって、ボランティア部なんだもの。
「ボランティア……奉仕……犯罪被害に…………合わせないようにするのも……ボランティア、そう言えばいい」
河井さんは相変わらず無口の様だが、しっかりと物事を考えてくれているみたいだ。副部長として申し分ない力を持っているようで頼もしい。そして、その賢い頭を犯罪に使っているのが少々悲しい気がした。
あれ。では何故、自分はここにいるのだろうか?
「エナちゃん。先生が来たら、真っ先にそれ言ってあげて。で、説明始めるよ!」
「いいわよ」
「まず、詐欺をするとするでしょ。その種類、一人ずつ何個か言ってみて?」
ここで質問か……よし。あれを……
「オレオレ詐欺はあるでしょ? それからワンクリック詐欺……ミステリーだと保険金詐欺、結婚詐欺なんかもあるわね」
古月さんが知っているものをほとんど答えてしまった。ぼくが急いで言葉を出そうとしたのだが、数秒の差で先を越されてしまった。
「架空請求詐欺、融資保証金詐欺……還付金詐欺……これと古月の……オレオレ詐欺が……電話を使う詐欺。……フィッシング詐欺……寸借詐欺……リフォーム詐欺……前金詐欺……フィッシング詐欺………募金詐欺、キャンセル詐欺……予約詐欺……あと後払いとするものを最初から払う気がなくて、食べたり使ったりするのも……詐欺に……なる。注意して」
「……ええ」
ぼくは河井さんから自分の持っている財布を遠くに離した。別に取られるわけではないの分かっている……しかし法律に興味がある訳でもないのに犯罪を知っていたことに、どうしても不信感が湧いてきてしまった。
「陽介君、言える詐欺は……」
「ないよ。言いたかったの、全部出ちゃったから」
「そ、そうよね。エナちゃん、勉強してるからね。凄いからね!」
東堂さんも焦っているように聞こえた。気のせいならば、良いのだが。
後はその知識を河井さんが犯罪に使わないように祈るばかりである。頼むから、その知恵を正義に使ってくれ……
「まあ、それで今回教える犯罪は架空請求詐欺」
その言葉。実際は架空請求詐欺で進めていくつもりなのだろう。
架空請求詐欺。それは払わなくても良い使用料を請求することで、お金を手に入れる詐欺である。この手の詐欺はかなり流通しているものだから、誰でも知っているはずだ。
そんな知識を頭の中から取り出していると、東堂さんが笑い出した。もう計画が成功したかのように……
「知ってる? 断言できるんだけどこういう詐欺で犯人が捕まることも、そもそも被害者が通報することもほとんどないのよ!」
「な、なんだって!? ……ねえ」
河井さんが冷静な顔をしているので敢えて今の話をした東堂さんではなく、彼女に説明を求めた。
「ワンクリック詐欺も……架空請求の仲間……例えば、君がインターネット……使ってるとき……身に覚えのない……請求が来たらどうする?」
「どうするって、だいたい無視するな」
「その通り」
河井さんは頷いて少しだけ微笑みを見せた。河井さん……何だか、目を合わせづらくなってしまった。何故なんだろ。姉さんとは嫌という程、目を合わせられるというのに……今はどうでもいいか。
「えっと……だから、わざわざ通報する人もいないし、逮捕もされない確率が高いのか。だから、東堂さんはこれを?」
「そうよ! 特に男性陣は気をつけてね……被害にあう人多いみたいだから。まあ、どうにしても、そういうワンクリック詐欺は深入りすると情報盗られちゃうから、無視することが一番だよ!」
男性陣と言っても、この部活。男子はぼく一人なんだけどね。
そこに呆れ笑いをしていると、東堂さんは黒板にとある文章を書いていた。
「特に男子は注意すること。アダルトサイトなどに入ると、その情報を誰かに知られたくないという思いから、払ってしまうことがあるから……」
飛び出そうな眼玉を抑え、彼女の字を黒板消しで遠慮なく消させていただいた!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる