完全犯罪計画部!~ご相談につきどんな完全犯罪でも創ります!~

夜野舞斗

文字の大きさ
21 / 40
2ndプロジェクト 殺人詐欺の怪奇談

18.とあるものにとっては、最悪な完全犯罪

しおりを挟む
「流石に『アダルトサイト』はまずいだろ……これ見られて怒られても何も言い返せねえぞ」

 東堂さんたちにそう言い、牙を向けた。

「そうね。後は記憶に残しておくってことにしよう。それで……だから、今回は陽介君の大好きなアダルトサイトを作戦に利用するの!」
「好きじゃねえから!」

 ここで否定しておかないと、勘の良い部員たちはより一層気づいてしまうだろう。
 全くこの部活はいつから「アダルトサイト監視部」になったのか……疑問に思いながら、東堂さんの話の続きを聞いた。彼女が話しているはずなのに、何度も古月さんたちの目がぼくに集まるのだが……特に「アダルトサイト」の単語が出るたびに。やめてくれ。ぼくは悪い人間ではない……だけど見たっていいじゃないか。
 十回程「アダルトサイト」の単語を耳にした後、東堂さんが話をまとめて始めた。

「アダルトサイトからの架空請求なら、ターゲットの蛭間氏も騙せると思うの。古月さんの情報技術を借りればね。でしょう?」
「疑問提起……どうやって……? ワンクリック詐欺の架空請求……作るの?」

 古月さんが煌びやかな笑顔で懐からスマートフォンを取り出し、こちらに見せてつけてきた。
 彼女ももう東堂さんの計画を了承していたらしい。

「これを見なさい。蛭間氏のメールアドレスは依頼人から聞いて来たから。蛭間氏宛てにこんなメールを書いたの」
「えっと、どれどれ。このURLの中に貴方の秘密が眠っております。どうか開いてお確かめください。差出人不明……後これってあのサイトのURLか……」
「なんで、サイトの名前を知っているのかしらねえ……」
「だ、男子の中では有名だからだ! 口コミで評判だっていいし! 画質だっていいのばっかあるし! 結局は無料で見れるんだし、ワンクリック詐欺の被害もほとんど聞かないし。安心性がバッチリだ! だから何度もクリックしてるうちにURLも覚えちゃうって話なんだよ!」

 部室に氷河期がやってきた……しまった。古月さんの誘導尋問に乗ってしまったのだ。

「あそこまで……のるって…………この部活で……やってけるの?」

 彼女たちは凍りつきそうな目でこちらを見下している。絶望だ。失望だ。悪魔の罠にはまるなど、あってはならないことだった……
 空気に押し潰され、ぼくは黙って汚れきった床を見ているしかなかった。

「あそこの変態野郎は置いといて、絵里利。江並。話を続けるわね。これを相手のところに送れば、良いわけ」
「……そのサイト……さっき御影が……ワンクリック詐欺……危険性が少ないって……そこで作るの?」
「サイトの人の大きな営業妨害にもなり得るから、それはやらない。ただ蛭間氏だけをターゲットにするの」
「そういうプログラムを……作るんじゃ……ないんだ……へええ……じゃあ……どんな技術を……」

 そこで東堂さんが古月さんの持っているスマートフォンを指さして、説明をした。完全犯罪計画部に染まりきった古月さん。ぼくは悲しいです。

「このメールを送ればユニちゃんの技術……確か、相手が受け取ってメールを閲覧したこと。その中のURLを開いたこと。そこからサイトの何処へ進んだかまで分かるんだよね」
「ええ。これを調べあげることが今のITならできるわ。アタシにかかれば、個人情報なんかないってことを忘れないでね」

 ああ……クラスの委員長がここまで変わってしまった……人が何故、変われることができるのか非常に興味深い。今度、心理学でも勉強してみよう。
 開き直ったぼくは前を向いて、古月さんの顔を見た。

「まあ、これ全部考えたの絵里利なんだけどね」
「はあ。一部の人にとっては、最凶に恐ろしい作戦ですね……」

 残りは東堂さんが計画の利点を発言した。

「蛭間氏は自分の不正を金でなかったことにするプライドの高い男。きっと、そういうアダルトサイトのことだって『そんなものは見とらん!』というでしょ。そこで電話で架空請求をし、見た動画の名前を次々と口にしていけば……」
「蛭間さん。お気の毒に……」

 架空請求というよりは脅迫に近いような気もするが、目的は達成できるはずだ。……この作戦は少し失敗する可能性も見受けられる。まあ、完全犯罪には賭けのチャンスがあるからこそ言い訳ができるのだろう。「そ、そんな証拠、ただの賭けだ。もしアイツが違う場所を選んだら、事件は起こらなかったじゃないか!」と犯人が喋り、「いいえ。貴方は確実に被害者をその道におびき寄せたんだ! 被害者の苦手な毛虫でね!」と探偵が反論する。そんな推理アニメを昔見たことがあるような、ないような……

「まあ、一週間は時間があるんだし、失敗した場合は明後日に持ち越し。明日、計画実行よ!」
「東堂さん。依頼人の連絡と役割分担はどうするの……?」
「陽介君。いいところに気がついたね! 忘れてた! ありがとう……どうしようかな」

 東堂さんはそう言って左の掌を右手の人差し指でたたきながら、考え事を始めていた。

「じゃあ、まず。陽介君が電話の係でいいかな」
「えっ!? ぼく?」

 この選択がこれから起きる悲劇を左右させることを誰も、犯人さえも知らなかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...