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2ndプロジェクト 殺人詐欺の怪奇談
28.プライド対決
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慌てて思いついたことを助言として古月さんに話す。
「……えっとさあ。あの、古月さん……さっき、夫人は息子が犯人だと主張してたよね……それとえっと……息子が強盗をしたみたいに見せかけたかったんじゃないのかな……すると何か、見えてこない?」
咄嗟に考えたことなのだが、だいぶ的を射ていると思う。……このまま、古月さんがどう考えるか。胸から音が高らかに鳴り出していた。
ぼくは真っすぐに彼女だけを見て、手を合わせ正しい発言をすることを祈る。
「な、何やってんの……変な奴。まあ、感謝はしとくわ……さあ。尚子夫人? 貴方は湯治さんに罪を着せるために他殺死体を発見した時に現場に本物か偽物か分からない真珠を置いていく工作をした。もしかして、現場にあったお金は貴方が持ち出した?」
「うっ……」
澄まし笑っていた尚子夫人の顔が暗くなっていた。反応アリ。
何となく美味しそうな場面に見える。だから、ぼくも堂々と推理に参加させてもらおう!
「そこのお兄さん。その真珠はタンスの中に入っているんですが、本物か。どうか……鑑定していただけませんでしょうか。よろしくお願い……い、致します」
警官は深く考え込んだ後、ぼくたちにこう伝えてきた。
「……一理あるかもしれないな。ビックリしたよ。君たちが突然来て、言い出すから……古月って子だっけ。それと君は……そうか。じゃあ、目利きの人に聞いてくるから、ここにいなさい。尚子夫人の方も現場に触れない程度でゆっくりしていてください。……では」
彼は一回目を閉じて頷くと、台所から急いで出ていった。
こうしてぼくと古月さん、尚子夫人がこの場に残される。恐れ多い緊迫感(なんたって、現職の警察官へ探偵の様に指示を出してしまったのだから)の中、結果を待っているぼくたちに怒りの視線が向けられた。ぼくたちは冷静を装い、黙って彼女の戯言を耳にする。
「……どういうこと? 何も知らないガキ共が探偵みたいに……悪いけど、あの真珠はもともと家にあったもの。そこのチャラチャラした下品な女に何を言われたって気にさえなりませんけど……これだけは言っておきます。真珠はどこかで失くしてしまいました。残念ですわ……ここにあるものとは関係がありません」
古月さんの方はその挑発に乗り、彼女に向かって推理を咆哮した。……推理って吠えるものでは、ないはずだが……
「何よ! 何処が下品だっていうの? じゃあ、こっちも本物のお嬢様とて言わせてもらうわ。お嬢様もどきの夫人にね……最初の事情聴取の時、家の中に入ってもいないのに『ほかに何事もなくてよかった』。そう言ったわ! どうしてそう思ったんですか? 大切な真珠があったというのに……」
「言ったことを忘れるほど、愚かなんですね。さっき自分で『本物か偽物か分からない真珠を置いていく工作をした』と自分で……」
「確かにそうよ。アタシは言いました! だけど、彼が焦って真珠まで持っていく可能性だって視野に入れた方がいいんじゃないですか? もしかして、そんなことも考えないで『ほかに何事もなくてよかった』と口にしたんですか?」
「……っう!?」
冷たい視線がぶつかり合っていて、非常に気まずい。プライドが高い者同士の口論は激しいのだ。しかし、こちらの方が有利なのである。プライドが高い者は、やましいことがあったり、自分のことを馬鹿にされたりすると正確な発言ができなくなることが多い。つまり、古月さんの言葉が優勢なのだ!「何事もなくてよかった」の色々な痛い場面を突いていく。何とも古月さんらしい追撃方法である。ぼくは深呼吸してから、彼女を手助けした。
「あの……いいですか……もしかして、貴方が現場を訪れ、被害者を殺害したんじゃないんですか?」
「へっ……!?」
「アタシもそう思います!」
正確な発言。相手を追い詰める責任を味わいながら……流れ落ちる汗を手で乱暴に拭きとり、尚子夫人の目を見た。
「貴方は一度、戻ったんじゃありませんか? もし、大切な真珠を失くしたんなら、その表情はおかしいです。もっとゲンナリ落ち込んで、殺人を人のせいにしたりはできないと思いませんけど」
「……な、何が言いたいの?」
古月さんが頭に人差し指をつけ、格好をつけて推理を語る。何だか、背伸びしているみたいで可愛かったな……そうではない。今は推理に集中しないと、そう思い、自分の拳を力強く握りしめた。
「貴方がその時に被害者の夫を殺害したんじゃないんですか! 戻ったときに!」
そう喋った途端、急に忘れていた事実が頭をよぎった……ヤバイ。急いで彼女を止めなければ。
ぼくは目を大きく開け、彼女に叫んだ。
「違う! 彼女にはたぶん、動機があるんだけど、アリバイがあった! 電話であの悲鳴が聞こえたとき、古月さんが尚子夫人とあったんだよね!?」
「え……アリバイトリックがあるんじゃないの……?」
古月さんの勢いが低速になった。辛いところであるが、もう一押し。胸を抑えつけながら、床を見る。そうして止めを刺した。
「アリバイはしっかりしてるよ。もし、あれがトリックだとしても今のところ、証明ができない……ごめん」
そう言うと、彼女の頭から蒸気が上がる。彼女は顔を林檎よりも赤くして下を向き、泣きそうな顔で台所を出ていった。ぼくを最悪なほどに罵りながら。
「馬鹿! バカバカバカァ! 御影! あんたが被害者になっちゃえば良かったんだよ! バカバカバカ! アホ!」
「……えっとさあ。あの、古月さん……さっき、夫人は息子が犯人だと主張してたよね……それとえっと……息子が強盗をしたみたいに見せかけたかったんじゃないのかな……すると何か、見えてこない?」
咄嗟に考えたことなのだが、だいぶ的を射ていると思う。……このまま、古月さんがどう考えるか。胸から音が高らかに鳴り出していた。
ぼくは真っすぐに彼女だけを見て、手を合わせ正しい発言をすることを祈る。
「な、何やってんの……変な奴。まあ、感謝はしとくわ……さあ。尚子夫人? 貴方は湯治さんに罪を着せるために他殺死体を発見した時に現場に本物か偽物か分からない真珠を置いていく工作をした。もしかして、現場にあったお金は貴方が持ち出した?」
「うっ……」
澄まし笑っていた尚子夫人の顔が暗くなっていた。反応アリ。
何となく美味しそうな場面に見える。だから、ぼくも堂々と推理に参加させてもらおう!
「そこのお兄さん。その真珠はタンスの中に入っているんですが、本物か。どうか……鑑定していただけませんでしょうか。よろしくお願い……い、致します」
警官は深く考え込んだ後、ぼくたちにこう伝えてきた。
「……一理あるかもしれないな。ビックリしたよ。君たちが突然来て、言い出すから……古月って子だっけ。それと君は……そうか。じゃあ、目利きの人に聞いてくるから、ここにいなさい。尚子夫人の方も現場に触れない程度でゆっくりしていてください。……では」
彼は一回目を閉じて頷くと、台所から急いで出ていった。
こうしてぼくと古月さん、尚子夫人がこの場に残される。恐れ多い緊迫感(なんたって、現職の警察官へ探偵の様に指示を出してしまったのだから)の中、結果を待っているぼくたちに怒りの視線が向けられた。ぼくたちは冷静を装い、黙って彼女の戯言を耳にする。
「……どういうこと? 何も知らないガキ共が探偵みたいに……悪いけど、あの真珠はもともと家にあったもの。そこのチャラチャラした下品な女に何を言われたって気にさえなりませんけど……これだけは言っておきます。真珠はどこかで失くしてしまいました。残念ですわ……ここにあるものとは関係がありません」
古月さんの方はその挑発に乗り、彼女に向かって推理を咆哮した。……推理って吠えるものでは、ないはずだが……
「何よ! 何処が下品だっていうの? じゃあ、こっちも本物のお嬢様とて言わせてもらうわ。お嬢様もどきの夫人にね……最初の事情聴取の時、家の中に入ってもいないのに『ほかに何事もなくてよかった』。そう言ったわ! どうしてそう思ったんですか? 大切な真珠があったというのに……」
「言ったことを忘れるほど、愚かなんですね。さっき自分で『本物か偽物か分からない真珠を置いていく工作をした』と自分で……」
「確かにそうよ。アタシは言いました! だけど、彼が焦って真珠まで持っていく可能性だって視野に入れた方がいいんじゃないですか? もしかして、そんなことも考えないで『ほかに何事もなくてよかった』と口にしたんですか?」
「……っう!?」
冷たい視線がぶつかり合っていて、非常に気まずい。プライドが高い者同士の口論は激しいのだ。しかし、こちらの方が有利なのである。プライドが高い者は、やましいことがあったり、自分のことを馬鹿にされたりすると正確な発言ができなくなることが多い。つまり、古月さんの言葉が優勢なのだ!「何事もなくてよかった」の色々な痛い場面を突いていく。何とも古月さんらしい追撃方法である。ぼくは深呼吸してから、彼女を手助けした。
「あの……いいですか……もしかして、貴方が現場を訪れ、被害者を殺害したんじゃないんですか?」
「へっ……!?」
「アタシもそう思います!」
正確な発言。相手を追い詰める責任を味わいながら……流れ落ちる汗を手で乱暴に拭きとり、尚子夫人の目を見た。
「貴方は一度、戻ったんじゃありませんか? もし、大切な真珠を失くしたんなら、その表情はおかしいです。もっとゲンナリ落ち込んで、殺人を人のせいにしたりはできないと思いませんけど」
「……な、何が言いたいの?」
古月さんが頭に人差し指をつけ、格好をつけて推理を語る。何だか、背伸びしているみたいで可愛かったな……そうではない。今は推理に集中しないと、そう思い、自分の拳を力強く握りしめた。
「貴方がその時に被害者の夫を殺害したんじゃないんですか! 戻ったときに!」
そう喋った途端、急に忘れていた事実が頭をよぎった……ヤバイ。急いで彼女を止めなければ。
ぼくは目を大きく開け、彼女に叫んだ。
「違う! 彼女にはたぶん、動機があるんだけど、アリバイがあった! 電話であの悲鳴が聞こえたとき、古月さんが尚子夫人とあったんだよね!?」
「え……アリバイトリックがあるんじゃないの……?」
古月さんの勢いが低速になった。辛いところであるが、もう一押し。胸を抑えつけながら、床を見る。そうして止めを刺した。
「アリバイはしっかりしてるよ。もし、あれがトリックだとしても今のところ、証明ができない……ごめん」
そう言うと、彼女の頭から蒸気が上がる。彼女は顔を林檎よりも赤くして下を向き、泣きそうな顔で台所を出ていった。ぼくを最悪なほどに罵りながら。
「馬鹿! バカバカバカァ! 御影! あんたが被害者になっちゃえば良かったんだよ! バカバカバカ! アホ!」
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