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第四章「暗雲を跳ね除けろ」

お墓にいたのは……

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「マネキ先生。なにを驚いている。わしだ、わし」
「えっ、あっ、猫仙人様だ」

 心寧は思わず叫んでしまった。なんで、いるの。猫仙人は微笑んでいるみたいだった。眉毛まゆげひげに隠れてよくわからないけどそう感じた。

「あの、すみません。ここには誰もいない者だと思い込んでいたもので」
「マネキ先生。わしのことお化けとでも勘違いしたのであろう。ふぉふぉふぉ」

 マネキ先生は苦笑いを浮かべて頭を掻いていた。どうやら図星みたい。

「ところでなぜ、ここに」
「うむ、実はムムタより妙な話を聞いてな。ここへ来てみたのだ」

 心寧はムムタの名前が出て驚いた。だがすぐに納得した。確か、猫神協会会長だっけ。それなら猫仙人と知り合いでもおかしくはないか。

「おっ、心寧。がんばっているか」
「あっ、ムムタさん」
「心寧ちゃん、知り合いなの」
「うん、ムサシくん。あのね、わたしのお父さんみたいな感じっていうか……」
「おい、違うだろう」

 心寧は舌をペロッとだして苦笑いをした。
 そんな話をしていたら逃げていったみんなが戻って来た。

「なんだよ、脅かしやがって。猫仙人かよ」
「こら、ミヤビくん」
「あっ、ごめんなさい」

 ミヤビもりないな。

「それで、なにがあったのでしょう」
「うむ、マネキ先生。心して聞くのだぞ。いや、話すよりも見てもらったほうが早いか」

 猫仙人は四猫神様の墓のある部屋へと入って行った。
 心寧もムサシとともについていく。

「ちょっと、心寧ちゃん。なんでムサシくんと腕を組んでいるわけ」

 えっ、腕を組んでいるって。
 あっ、本当だ。ココに言われるまで気づかなかった。さっき怖くて……。心寧は急に恥かしくなってムサシから離れた。

「ごめん、わたし、その……」
「気にしなくていいよ。というかずっとそのままでもよかったのに」

 えっ。
 心寧はムサシの言葉に顔が火照るのを感じた。

「もう、信じられない」

 ココはプイッと横を向いてサッサと墓へと歩いて行ってしまった。

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