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第四章「暗雲を跳ね除けろ」
四猫神様の力を手に入れろ
しおりを挟む五芒星魔法陣の中心に心寧は立った。ムサシとルナも一緒だ。その外円に五人の先生が立ちなにか呪文のようなものを唱えはじめた。同時に大地が光輝く。
うわっ、光の壁が空へと立ち昇っていく。なんとも不思議な光景だ。なんとなく身体が軽くなった気さえする。
んっ、あれ。
空を見上げて心寧は目を擦った。
あっ、月が。
目の錯覚だろうか。一瞬揺れたような。心寧は空をじっとみつめた。
違う、月が揺れたんじゃない。
なにかが降りてきている。
「どうやら全国に散らばる猫神様たちが力を貸してくれているようだ」
そうなの。すごい、すごい。
「ムサシくん、すごいね」
ムサシからの返事はない。あれ、どうしたのだろう。
「ねぇ、ムサシくん」
あっ、ソウだ。ムサシとソウが重なり合って見える。それじゃ今話したのはソウなのか。
ムサシは守護霊としてソウがそばにいるから猫神様の力が伝わりやすいんだ。
すごい、すごい。
ムサシの身体が虹色に輝いている。あたたかさも伝わってくる。
心寧自身もなんとなく身体がぽかぽかしてきていた。シュレンの力が自分のものになるのだろうか。そうだったらうれしい。心寧はもう一度ムサシに目を向けてひとり頷いた。ムサシはおそらくソウの力を受け継ぐだろう。
『わたしもがんばらなきゃ。シュレン様、わたしに力を』
心寧は強く念じた。
そのとき、ルナの呻き声が聞こえハッとする。ルナが蹲っていた。
「ルナちゃん、大丈夫」
「気にしないで、大丈夫だから」
大丈夫って、そんなわけない。心寧はルナに寄り添おうとした。だが、ルナは拒絶した。
「大丈夫だって言ったでしょ。お願いだからなにもしないで。今、強い力を感じているの。わたくしはこの力を乗り越えなきゃいけないの。ハク様の力を自分のものにするの。邪魔しないで」
ルナの迫力に心寧は思わず後退りしてしまう。ルナもがんばっているんだ。
ルナも四猫神様の力が宿ろうとしているんだ。それなら、自分も。
心寧は手を胸に当ててみた。けど、あたたかなぬくもりだけしか感じない。強い力は感じない。どうして。
やっぱり、ダメダメだからシュレンの力が蘇ることができないのだろうか。
そんなことない。大丈夫、自分だってできるはず。
困り顔の黒白猫のチムの顔を思い出す。そうだチムはきっと苦しんでいるはず。ここで自分ががんばらないでどうするの。
『シュレン様、お願いです。力を貸してください』
心寧は歯を食いしばり「チム、魔なんかに負けないで絶対に助けてあげるから」と意を決した。
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