人生・にゃん生いろいろ

景綱

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待ち猫来る

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 「待ち合わせ、その相手は誰ですか?」

 そう問われたら誰の姿を想像するだろうか。
 好きな人の顔だろうか。友達だろうか。それとも、仕事での取引先の人。嫌な先輩ってこともあるのだろうか。やっぱり好きな人との待ち合わせがいいよね。

 デートだったらウキウキで足取り軽く待ち合わせ時間よりも早く行ってしまうなんてことがあるだろうか。それとも、着ていく服がなかなか決まらず気づけば待ち合わせ時間が迫って遅れてしまうだろうか。

 あなたはどっちだろうね。
 まあ、デートではなくても待ち合わせで人を待ち続けるってどうにも落ち着かないものだ。私は待ち合わせ時間よりも早めに行ってしまう性質なので待つことは多い。数人での飲み会だったら同じように早めに来る人がいることもある。それだと待ち時間も苦にならないよね。
 誰かいれば話しているうちにみんなやって来るからね。けど、あまり気が合わない人だと逆に苦痛かもしれないか。

 まあ、そんな場合もあるかもしれないけど、一人で待たなきゃいけないときは最悪だ。なぜか凄く待っている時間が長く感じるものだ。まだか、まだかと思っているうちに何かあったのだろうか、事故でもあったんじゃないかなんて考えてしまう自分がいる。余計なことばかり考えてしまう。

 心配性なのかもね。

 遅れて来る人は「悪い、悪い」と言いつつそんなに悪いとは思っていない気がする。笑っての「悪い、悪い」だからかもしれない。「ごめん」の一言もない人もいる。

 遅れてやってくる人はだいたい同じ人。だからって文句は言わないけど。
 いつものことだって思って終わりだ。変な空気になるほうが嫌だから。
 だから、「悪い」という気持ちが薄れるのだろう。きっと。
 まあ、遅れて来る奴も悪い奴じゃない。なら楽しいほうがいいだろう。
 遊びだから多少の遅刻は許したほうがいい。いいのかそれで。まあ、ものすごく遅れてくるわけではないからそれでもいいのだろう。

 それが彼女だったらどうだろう。やっぱり許してしまうのだろうか。

 これが仕事となると話は別だ。社会人として失格だ。そこのところは意外ときちんとしているのかもしれない。いや、どうだろう。
 とにかく、「待つ」ということは苦痛だ。

 そんな「待つ」という苦痛をなんの文句もなくじっと待ち続ける猫がいた。数年前までわが家にいた愛猫だ。
 いったい何を「待つ」のかというと、わが家の愛猫はほぼ外猫で家と外を行き来していた。夜は家にいることが多く夜中に外へ行きたがる猫だった。



 つまり、私は寝ている。本当に辛抱強い猫だと思う。起こすことは絶対にしなかった。じっと私が目を覚ますのを待つのだ。いつものクッションの上に香箱座りをして私のほうに向いて待つのだ。実際のところはわからない。私は寝ているのだから。愛猫も寝ていて私の起きそうな気配で目を覚ましているのかもしれない。それとも、本当にじっとみつめていて「起きろ、起きろ」と念を送っているなんてこともあるのだろうか。

 あったら、ちょっと怖い気もするが、可愛い愛猫のことだ。そんなことは気にしない。
 愛猫が待っているときは視線を感じるのか不思議と目を覚ます。いつから待っていたのかはわからないけど。やっぱり、念を送っているのかも。
 愛猫はやっと起きたとばかりに、すぐに部屋の入り口へと行き振り返る。
 外へ行きたいとの意思表示だ
 だからいつも「起こしてくれればいいのに」なんて言葉をかけていたものだ。

 正直なところ、肉球で鼻や頬をプニッと押されて起してほしいなんて願望もある。

「ねぇねぇ、起きてよ。お外行きたいの」

 そんな感じでやられたら喜んで起きますよ。じっと待ってくれる猫もその姿を見れば抱きしめてあげたくなるくらい可愛いけどね。

 私がベッドから起きると、愛猫は「待っていました」とばかりに玄関へと足を進める。
 夜中に外へ行くのはなんの用事があるのだろう。やっぱり猫の集会だろうか。そうだとしたら集まる時間は決まっていないのだろうか。きっと決まっていないのだろう。自由参加ってところかもしれない。

 じっと待つ猫か。目を覚ましていつもの顔がそこにあると微笑んでしまう。
 本当に可愛い奴だった。ただみつめてくる目はつぶらではなく睨みつけるようなちょっと鋭い目つきだった。もちろん、怒っているわけじゃない。もともとそういう目なだけだ。
 そこがまたいいのだけど。

 いつも待っていた愛猫のことを考えると、少しくらい遅刻してくる人がいても気にすることはないのかもしれない。のんびり待てばいい。そのほうが気楽で楽しい人生を送れるのかもしれない。
 けど、やっぱり人として時間は守るべきだと思う。



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