わが家のもふもふ様

景綱

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第四話 問題は人の世だけにあらず

7 いつの間にかわが家は相談所

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 どこから聞きつけてきたのかエマを訪ねてくる人がやってくるようになった。霊的な相談だ。
 はじめは神主さんのところでエマが神の申し子だと聞いてきたと思ったのだが違った。
 最初に来たのは女子大生だった。相談内容は亡くなった愛猫に会わせてほしいというものだった。
 そんなの無理だろう。僕はそう思っていた。
 エマにそんな力があるのだろうか。本当に神の申し子だったらできるのだろうか。わからない。けど、なんでエマのところに来たのか。僕がそう訊くと、夢を見たと話してくれた。

『そんなに会いたければ、エマという女の子のところへ行ってみなさい』と話したという。夢だけどすごくはっきりと覚えていて住所まで教えてくれたらしい。それで来てみたら本当にエマという女の子がいてびっくりしたと興奮してしゃべっていた。

 僕はもふもふ様をチラッと見た。

「おいらじゃないぞ。ヒナじゃないのか」
「いいえ、私でもありません」

 なら誰が夢で話したのだろう。不思議な話もあるものだ。けど、一番不思議なのはエマがその亡くなった愛猫を呼べたことだ。

「エマ、できちった。えへへ」

 えへへ、じゃないだろう。すごいことだ。

「ここはあの世とこの世を繋ぐ扉があるからな。呼ぼうと思えば呼べるってことだな」

 確かに、もふもふ様の言う通りかもしれないけどエマは凄過ぎだ。
 もちろん幽霊たちにおもてなしをして成仏させたり生き返らせたりもしているが、生きている人の相談も増えている。いや、人だけじゃない野良猫までやってくる。猫に関しては毒エサ事件の影響もあるのだろう。
 猫がなんの相談にくるのかって。
 たとえばこんな相談があった。
 野良をやっているのも疲れたから誰か飼ってくれそうな優しい人はいないだろうかって相談だ。そんな猫もいるのかとへぇーって思ったっけ。玄関が開いたからお邪魔しますって入ったら丁寧に、「家に入っちゃダメでしょ」って追い出されちまったとかも話していた。飼ってくれると思ってもそんなにうまくいかないものだと真剣に話していたのを思い出す。

「エマ、おまえ大丈夫か」
「えっ、なにが」
「だって最近たくさんの人が相談しに来るだろう。幽霊におもてなしもしているし疲れているんじゃないのか」
「エマ、平気だよ。楽しいもん」
「そうか」

 なんとなくエマが遠い存在に感じられた。けど、幽霊も相談者もいないときゴマや子猫たちを追い回している姿を見てホッとした。

 ほら、はじまった。

「まて、まて、まてぇー。ゴマしゃん、まてぇー。ちー、たー、よーまてぇー」

 んっ、なんだ。
 なぜか天井が光り出した。そう思ったら、光るなにかが天井から降りてきた。
 えっ、嘘だろう。仏様か、あれ。
 観音様みたいな姿をしているけど、まさかそんなことってあるだろうか。

「うわっ、すごい、キレイ、キレイ。ピッカピカだぁ」

 エマははしゃいでいるけど、観音様だとしたら大事おおごとだ。

「もふもふ様、もしかして」
「いや、違うな。だがそうとう霊格が高い人物なのかもしれない」

 そうか観音様じゃないのか。

「あはは、びっくりしたか。神様かと思ったか。仏様かと思ったか。なあ、なあ、どうだ。すごいだろう」

 なんだかすごく残念な気分になった。霊格が高いって言うからもっと丁寧な口調で話してくるかと思ったのにチャラい感じに思えた。

「なんだ、おまえら。もっと笑えよ。人生はもっと楽しまなきゃ。あの世もこの世もハッピーじゃなきゃ」

 急に踊り出す光った人。もしかして、幽霊なのか。
 エマは「ハッピー、ハッピー。ハッピッピ」とぎこちない踊りを踊っていた。

「おお、いいね。お嬢ちゃん、俺と一緒にあの世で楽しもうぜ」
「あの世で」
「そうさ、あの世ってところはパラダイスさ。美味いものもいっぱいあるし、楽しいこともたくさんだ。なんでもありな場所だぜ」
「いいね、ハンバーグもエビフライもお寿司もあるの」
「ある、ある。いまから一緒にレッツゴー」
「レッツゴー」
「エマ、ほらダメダメ。こっちこっち」

 僕は慌ててエマの手を取り引き寄せた。こいつ危険だ。直感で僕はそう感じた。エマはまだあの世へは行かすわけにはいかない。

「なんだ、そこの兄ちゃん、ノリが悪いな」

 身体を光らせて笑顔を振りまくその人を隣にいたもふもふ様がいきなり蹴飛ばした。すると、スポンとの音とともに天井に消えていなくなった。

「危なかったな。あいつ、あんな格好で油断させて。まったくルールってものがあるだろうに」
「なあ、もふもふ様、あいつは何者だったんだ」
「あいつか。あれは死神だ。おいらも騙されるところだったぞ」

 えっ、あれが死神。嘘だろう。

「死神なの、さっきの人」
「そうだ、エマも気をつけなきゃな。とんでもない奴が来たものだ。どうやらエマはあの世でもこの世でも有名になりつつあるようだな。死神まで来るとは」
「本当に死神なのか。イメージが全然違うんだけど」
「最近の死神はいろいろな手を使って死者を増やそうとしているようだ。おいらがしっかり見極めて守ってやるから安心しろ」

 そのとき玄関のベルが鳴った。
 またエマにお客が来たのかもしれない。いいのだろうかこんな生活で。僕はそう思ったのだがエマは本当に楽しん
でいるようだった。

「エマの出番かな。ワクワク」

 エマはそう話して玄関へと走って行った。

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