【完結】まほろばに鳥はもう来ない

上杉

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8章 厳寒

4 強引に※

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 その日、結局須藤と会話をすることはできなかった。
 午後からバイトに入っていたので、大学からそのまま出勤し、家に帰ってきたのは夜のこと。
 年始の客の多さに疲労を感じながらも、頭にあったのは須藤のことだった。

 ――須藤さんは大丈夫だろうか?

 のっぺりと白いあの顔色の悪さは、きっと休みの間に何か家で問題があったのだと思えた。
 だからあのとき手を掴んで呼び止めて、話を聞けばよかった――そう思うも、先生との話を邪魔するわけにもいかなかったと考える
 スマホを出してメッセージアプリを開く。未だ須藤からの連絡はなく、最後の連絡は去年のままだった。
 優人はそれを眺めながら、ふと思う。

 ――逆に、これでよかったのかもしれない。

 今の自分は須藤に嘘を付いている、裏切り者のようなものだ。だから本来ならば、心配してあげられる立場にすらない。
 今日はもう風呂に入って寝よう――そう思って優人が上着を脱いだときだった。
 ばたん、とワンルームの扉の外で物音がした。
 また同じ階の酔っ払いが部屋を間違えたのだろうか、優人はそう思いおそるおそる扉を開ける。
 そこにいたのはなんと須藤だった。
 ただ、午前中以上にやつれて顔色が悪く、にも関わらず近寄ると酒の匂いがぷんと漂った。

「……中谷くん」

 そう言ってこちらに体重を預けようとするので、優人はすぐに部屋の中へ導き、声をかける。

「須藤さん……何があったんです――んっ」

 それは突然の口付けだった。顎を押さえられ、口全体を覆われるような濃厚なキスに優人は驚いた。
 これまで須藤からこんな強引に求められたことはあっただろうか。
 すべてを忘れさせてくれ――まるでそう主張するように、本能のままに舌を絡め取られ、気持ちが少しもついて行かない。
 ただ、須藤との接触はあまりに久しぶりだった。だから心は動揺しているにも関わらず、身体は無意識に反応してしまった。
 舌に触れる須藤の熱が快感を思い起こさせ、みるみる下半身に血が流れていく。
 
 ――今、話を聞かなくてはいけないのに。

 頭ではわかっているのに、止めることはできなかった。
 そのまま激しい口付けを何度も交わしリビングに入ると、なんと須藤は自ら服を脱ぎ始めた。
 その光景に優人が呆気に取られていると、裸の須藤はこちらを布団の上に押し倒すとともに、服を勝手に脱がせていく。

 ――やっぱり、何かあったんだ。

 こんなに積極的な――どちらかというと乱暴で投げやりな姿に、須藤を抱きしめたい衝動に駆られた。
 そんなにも苦しく忘れたいことがあるというのなら、こちらは求められるがままに愛するだけだ――。
 すっかり身ぐるみ剥がされた優人は、須藤の腕を掴んで止めると、身体をぎゅっと優しく抱きしめた。
 その温もりに安心したのだろうか。
 須藤のこわばっていた身体がみるみる脱力していくのを感じながら、優人はそのまま須藤を布団に優しく倒して上に覆い被さる。
 そして生まれたままにさらけ出された身体をまじまじと見た。

 ――よかった。新しい痣は増えていない。

 そう安心したあと、唇は自然と須藤の身体に落ちていた。

「んっ」

 その反応を皮切りに、全身へくまなく愛撫を始めた。
 首筋から肩、そしてふっくらとした胸。その上で赤く立ち上がった乳首にむしゃぶりつくと、須藤はいい声で啼いた。

「あっ……あぁっ……」

 すでに彼の股間も大きく上を向いていて、身体を舐めるたびにぴくりぴくりと喜んだ。その先端からはすでに愛液が流れ、腹に小さな水たまりを作っている。

 ――可愛い。

 早く愛してといわんばかりの姿に、優人の熱も次第に高まっていく。
 指先に須藤の流した愛液をまとわせると、それを閉ざされた孔へと伸ばした。そこはぴくりとしたものの、まだ解きほぐれていなかったので、優人はおもむろに空いていた口で須藤の肉棒を咥え込んだ。

「ひゃんっ」

 そこを愛されるとは、全く想像していなかったのだろう。須藤の昂ったものは舌を這わせるたびに、快感に震えた。
 同時に卑猥な嬌声が上がり、びくんびくんと腰をのけぞらせて喜ぶ。
 次第に穴は柔らかくなり、触れた優人の指をちゅぱちゅぱと吸うように求めはじめた。それを合図に指を優しく中に進めると、やっと来たと言うように肉壁は指を締め始める。
 そろそろだ――そう思った優人は口淫を止め、穴の中の指に集中した。入口を広げながら奥を突くたび、須藤はいい声を上げた。

「ううっ……んっふ……ぁんっ」

 そして気付けば須藤の震える手が優人の背中に触れていた。まるで、もう待てないと言うように。

 口付けを交わしながら、快感に震え横たわる須藤の身体を優しく起こす。そして優人は自分の秘部を見せるように胡座をかくと、その上に須藤を優しく迎え入れた。
 須藤の下の口が肉棒に触れたあと、波のように訪れたのは快感だった。

「――――っ」

「はあぁぁ……」

 そうして須藤が身体を震わせ、ぴたりと腕の中に収まったとき。その肌の温もりと身体の重さに、優人は泣きそうになった。

 ――ああ、須藤さんがここにいる。

 顔は見えなかった。
 しかし自分の全ての感覚が須藤を感じ、全身で主張していた。この人を守りたい、ずっとこの腕の中にいてほしい、と。
 優人は腕に力を込め、腰を動かしはじめながら思った。

 ――この人を幸せにすることができないとわかっている。それでも。

 今、この人を幸せにできるのは、自分しかいないのだ、と。
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