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4 Side 慧
46 話さないと
しおりを挟む家に帰ったあとも、あの資料の残像が目に焼き付いて離れなかった。
中は見ていなかったものの、あの色のついた封筒はおそらく学校案内だろう。先生には渡せと言われていたものの、俺から手渡すことは絶対に無理だった。結局その日は教室の誉史の机のなかへそれを仕舞って、俺は帰ることにしたのだった。
「……はあ」
最近は、学校でため息ばかりついているような気がした。
そうしてよく考えれば、それもこれも誉史を好きになってからだということに気付く。こうして悩んでばかりなのは、どれも答えのないことだからで。答えは学問と違い一つではなく、しかもこちらの選択によって無数に変化するのだから。
しかしそう悩む一方で、誉史を好きになってから俺のなかで幸せが増えたのも事実だ。
誰かのことを知りたいと思う衝動も、一緒にいたいという思いも。どれもこれまで感じたことのない新鮮な感情だった。
そしてそれを受け入れてもらい、自分自身も受け止めてもらえることが、こんなにも嬉しいことだなんて。
これまでの俺は、本や教科書と向かい合ってばかりの淡々としたつまらない毎日を送っていた。
それが、いまはこの変わりようだ。
夏休みは友人と海へ行き、秋はクラスメイトに混ざって文化祭を楽しむ。そしていまも、スマホを見ては連絡がないことを悲嘆する。そんなどこにでもいる普通の学生みたいだ。
ほなみは「慧らしくなくていい」と言っていたけれど、確かに、俺自身もいまの俺のほうが好きだと思えた。
「星野くん最近どうしたの?調子悪い?」
ぼうっとしていた俺に、そう声をかけてきたのは皆川だった。
その心から心配することばに、俺はうっかり心のうちを漏らしてしまう。
「…………ちょっと、いろいろあって」
「そっか。……わたし、順位見てびっくりしちゃって。星野くん何かあったのかなあって」
「……へ?」
どういうことだろうとぽかんとしていると、どうやら皆川が気にしていたのは期末考査の結果についてらしい。聞けば、皆川は初めて学年一位になったそうで、そこで俺が首位陥落したことに気づいたらしく、びっくりして声をかけたとのことだった。
「まさか、それすら気づいていないくらい、酷いことがあったの?」
そう本気で心配されれば、説明しないわけにはいかなかった。
皆川は俺と誉史の関係を知っているようなものだし、信頼できる友人なのだから。
「それが……誉史の進路を……知ってしまって」
「……え?」
経緯を詳しく話すと、皆川は考え込むようにして言う。
「そっか。もしそうならそれは寂しいね。それで……染谷くんはどこにいくって?」
「……確定ではないんだけれど、まだ細かいことは聞いていないから」
そう答えると、皆川は優しく微笑んだ。
「…………なら、話さなきゃね。時間はあっという間になくなっちゃうんだから」
「……ああ。そうだよな」
「わたし、染谷くんに聞いてみよっか」
そのことばに俺はすぐ答えることができなかった。確かに皆川に聞いてもらえば、誉史はきっと教えてくれるだろう。そして俺は正しい情報を手に入れることができる。
しかし、それは絶対に選んではいけない答えなのだ。
その気持ちがおそらく顔に出ていたのだろう。皆川はあははと軽く笑って、
「大丈夫。聞かないよ。大事なことは、星野くんが自分で聞かなきゃ」
と言った。
「……そうだよな」
「うん。そうだよ。これから勉強でそれどころじゃなくなるし、本当にいまのうちなんだから。ふたりでしっかり話すいいタイミングだよ」
そう微笑む皆川は、俺よりもずっと大人びて見えた。
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