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年下の友人に恋をした⑤
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文さんと比呂志君たちが帰った後、
僕は書斎に向かった。
真新しい原稿用紙を置き、
芥川君への手紙として
先程の出来事を書き始めた。
けして、届かない手紙。
「『芥川君へ
僕は君への恋慕をとうとう、世に出してしまった。
そして、それを読んだ君の奥さんの文が
訪ねてきて、僕にお礼を言ったんだ。
“ありがとうございます”と。
君を愛してしまったことを君の奥さんに
お礼を言われるとはまさに、目から鱗だったよ。
それから、比呂志君にも
僕の気持ちを見抜かれてしまって、少し焦ったよ。
勘が鋭い所は芥川君に似たんだろなと
苦笑してしまった。』」
一枚目を書き終え、二枚目の
原稿用紙を置いた。
「『あの時、君の返事を
聞かなかったのは、君の家庭を壊す気はなかったかのと
僕が臆病だったからだ……
君の返事を聞いてしまえば、少なからず、僕たちの関係は
変わってしまっていただろう からね……
それでも、僕は君に
“好き”だと伝えたかった。
困らせてしまった上に最後は
君に会うことさえしなかった……ごめん……
ねぇ芥川君、君に会いたいよ』」
そこまで書いて、一旦、ペンを置いた。
三枚目の原稿用紙を置いた時、
とみ子が夕飯だと呼びにきた。
「犀星さん、夕飯よ」
「わかった、今、行くよ」
僕は三枚目の原稿用紙の横に
ペンを置き、居間へ向かった。
娘の朝子と息子の朝巳は僕が座ると嬉しそうに笑ってくれた。
「お父さん、また、お仕事?」
「今日はお仕事じゃなくて
お手紙を書いていたんだよ」
「ー亡き友へと
綴る手紙には
悲しみも伴うー」
とみ子はまた……
「もう、会えない友人に書いていたんだよ」
「お父さんのお手紙、届かないの?」
娘の純粋な質問に苦笑した。
「そうだよ、その友人は
お空に行ってしまったからね……」
会いたいよ、芥川君……
「お父さん、泣かないで」
息子に言われて、
無意識に泣いていることに気づいた。
「はい、犀星さん」
とみ子がハンカチを渡してくれた。
「ありがとう」
どうにか、涙を拭って、夕飯を再開し
食後、書斎に戻り、三枚目の原稿用紙に
先程の続きを綴った。
「『ふと、した時に君に会いたくなる。
君の笑顔や怒った顔、読書をしている時の
集中している姿、そして、何より
文学に対して真摯に向き合っていた姿勢は
尊敬に値するよ。
そんな君の姿を、表情を、思い出して
寂しくなるんだ……』」
そこまで書いて、また、筆が止まってしまった……
再びこみ上げて来る涙を堪えて、ペンを握り直す。
「『君と出会い、交流できた思い出は僕の宝物だ。
“来世”があるなら、僕は必ず、芥川君を見つけるよ。
そして、今度こそ、ちゃんと伝えたい。
“好きです”、“愛してる”と。
それから、君からの返事も……
僕は芥川君に恋慕を抱いたことを恥だとは思っていない。
因みにだけど、
妻のとみ子は受け入れてくれていたんだよ。
いつかまた、“来世”で会えることを願って……
室生犀星』」
書き終え、ペンを置き、
僕は畳の上に寝っ転がった。
布団も敷かずにいつの間にか寝てしまったのか
夢に芥川君が出て来た。
「犀星君、風邪をひいてしまうよ」と
心配する声で飛び起きた。
耳に残る芥川君の声……
「芥川君……」
呟くように呼んで、また、寂しくなった。
「犀星さん、はい、お布団。
まだ、書きたいことがあるんでしょう?
それでも、今日は夜も遅いし、
冬に畳の上で寝たら風邪をひいてしまうわ」
とみ子が敷いてくれた布団に入り目を瞑る。
「お休みなさい、犀星さん。
私は寝室で子供たちと寝るから
何かあれば呼んでくださいね」
「ありがとう、お休み、とみ子」
僕は書斎に向かった。
真新しい原稿用紙を置き、
芥川君への手紙として
先程の出来事を書き始めた。
けして、届かない手紙。
「『芥川君へ
僕は君への恋慕をとうとう、世に出してしまった。
そして、それを読んだ君の奥さんの文が
訪ねてきて、僕にお礼を言ったんだ。
“ありがとうございます”と。
君を愛してしまったことを君の奥さんに
お礼を言われるとはまさに、目から鱗だったよ。
それから、比呂志君にも
僕の気持ちを見抜かれてしまって、少し焦ったよ。
勘が鋭い所は芥川君に似たんだろなと
苦笑してしまった。』」
一枚目を書き終え、二枚目の
原稿用紙を置いた。
「『あの時、君の返事を
聞かなかったのは、君の家庭を壊す気はなかったかのと
僕が臆病だったからだ……
君の返事を聞いてしまえば、少なからず、僕たちの関係は
変わってしまっていただろう からね……
それでも、僕は君に
“好き”だと伝えたかった。
困らせてしまった上に最後は
君に会うことさえしなかった……ごめん……
ねぇ芥川君、君に会いたいよ』」
そこまで書いて、一旦、ペンを置いた。
三枚目の原稿用紙を置いた時、
とみ子が夕飯だと呼びにきた。
「犀星さん、夕飯よ」
「わかった、今、行くよ」
僕は三枚目の原稿用紙の横に
ペンを置き、居間へ向かった。
娘の朝子と息子の朝巳は僕が座ると嬉しそうに笑ってくれた。
「お父さん、また、お仕事?」
「今日はお仕事じゃなくて
お手紙を書いていたんだよ」
「ー亡き友へと
綴る手紙には
悲しみも伴うー」
とみ子はまた……
「もう、会えない友人に書いていたんだよ」
「お父さんのお手紙、届かないの?」
娘の純粋な質問に苦笑した。
「そうだよ、その友人は
お空に行ってしまったからね……」
会いたいよ、芥川君……
「お父さん、泣かないで」
息子に言われて、
無意識に泣いていることに気づいた。
「はい、犀星さん」
とみ子がハンカチを渡してくれた。
「ありがとう」
どうにか、涙を拭って、夕飯を再開し
食後、書斎に戻り、三枚目の原稿用紙に
先程の続きを綴った。
「『ふと、した時に君に会いたくなる。
君の笑顔や怒った顔、読書をしている時の
集中している姿、そして、何より
文学に対して真摯に向き合っていた姿勢は
尊敬に値するよ。
そんな君の姿を、表情を、思い出して
寂しくなるんだ……』」
そこまで書いて、また、筆が止まってしまった……
再びこみ上げて来る涙を堪えて、ペンを握り直す。
「『君と出会い、交流できた思い出は僕の宝物だ。
“来世”があるなら、僕は必ず、芥川君を見つけるよ。
そして、今度こそ、ちゃんと伝えたい。
“好きです”、“愛してる”と。
それから、君からの返事も……
僕は芥川君に恋慕を抱いたことを恥だとは思っていない。
因みにだけど、
妻のとみ子は受け入れてくれていたんだよ。
いつかまた、“来世”で会えることを願って……
室生犀星』」
書き終え、ペンを置き、
僕は畳の上に寝っ転がった。
布団も敷かずにいつの間にか寝てしまったのか
夢に芥川君が出て来た。
「犀星君、風邪をひいてしまうよ」と
心配する声で飛び起きた。
耳に残る芥川君の声……
「芥川君……」
呟くように呼んで、また、寂しくなった。
「犀星さん、はい、お布団。
まだ、書きたいことがあるんでしょう?
それでも、今日は夜も遅いし、
冬に畳の上で寝たら風邪をひいてしまうわ」
とみ子が敷いてくれた布団に入り目を瞑る。
「お休みなさい、犀星さん。
私は寝室で子供たちと寝るから
何かあれば呼んでくださいね」
「ありがとう、お休み、とみ子」
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