年下の友人に恋をした

華愁

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番外編 “再会”②

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あの日、芥屋家から帰宅した
僕を見た両親は驚いていた。  
  
事情を説明すると、二人は抱き締めてくれた。  
  
それから、僕と龍生君がパートナーシップを  
結ぶことに関しては“自己責任”ということで認めてくれた。  
  
最初の一歩として僕は龍生君は
同じ大学を目指すことにした。  
  
今は三年生の二学期で進路変更は  
教師たちからすれば不可解だろうけど  
龍生君の父親に認めてもらうにはまずは  
目に見える形から示すことにした。   
  
大学はもちろん、一発合格した。  
  
そして、高校卒業直前、  
僕は“芥川賞”を受賞した。  
  
「彩雅君、おめでとう!!」  
  
お祝いを言ってきたのは    
クラスメートで友人の一人の    
無藤崇むとうたかしだった。    
    
「崇か、ありがとうさん」  
  
早く、放課後にならないかな……  
  
“芥川賞”を受賞したことを龍生君に早く伝えたい。

帰りの会が終わると同時に僕は教室を出て
図書室に向かった。

一組の方が少し早かったらしく、龍生君はもう来ていた。  
  
「龍生君、僕、“芥川賞”、受賞したよ。  
  
そうして、この受賞は龍生君に捧げたい」

“芥川賞”は本来、“芥川君”が死んだ八年後に
寛君が作った賞だ。

未来の若者に、
そして、友人だった“芥川君”の名を
後生に残したいという思いからだった。

「正式名称は“芥川龍之介賞”なわけだけどね、
寛君も君の死にかなりショックを受けていたよ」

「それから、君が自害した後に、
君のファンの後追い自殺が多発したんだ……」  
  
あれには当時の警察も手を焼いた。

「そんなことが……」  
  
「当時の新聞の見出しも  
【文豪・芥川龍之介、  
  
自宅にて、自害し死去】ってね。  
  
僕を始め、友人たちの間でも  
ファンたちの間でも  
君の死はショックと衝撃を与えた。  
  
君が自害する前日に僕を  
訪ねて来てくれていたと  
知ったのは上野の出張から  
帰って来た後だった……  
  
それから三年、 書けなかったところに、
とみ子に背を押されて
『年下の友人に恋をした』を執筆したんだ……

<ー止まりしの    
時を再び動かすは    
友に捧ぐ筆ー>    
  
<ー悲しみも  
紙に落とせば  
心安らぐー>  
    
僕が書けなくなって  
『年下の友人に恋をした』を  
執筆すると決めた時に  
とみ子が詠んだ俳句だよ」

「ねぇ“犀星君”、    
“前世で”僕は家族も友人もファンさえも    
置いて自害した薄情者だ……    
    
そんな僕に“芥川賞”を捧げるのは……    
    
受賞したのは“彩雅君”だ。  
  
僕には受け取る資格がない……」

僕が“書く理由”は“前世”も“今世”も
“芥川君”の、そして、“龍生君”だ。

翌週、都内のホテルで“芥川賞”の
受賞式が行われた。

“今世”の両親と芥屋家の両親、
龍生君が来てくれた。

そして、出版社席に“寛君”を見つけて
僕は口角を上げた。

「⟦龍生君、出版社席見てご覧、“寛君”がいるよ⟧」    
    
出版社席に座っている一人の男性を指指した。    
    
「⟦あの人、“寛”の転生者?

 容姿と雰囲気は“寛”に似てるけど……⟧」

そんな話をしていると、
僕の名前が呼ばれた。

「行ってくるね」

龍生君の手に口付けをしてから席を立ち
壇上へ向かった。

実は、この場で“前世”と“生まれ変わり”の話を
しようと思っていた。  
  
「マイク、ありがとうございます。  
  
この度は“芥川賞”という  
名誉ある賞をいただき、  
大変、嬉しく思います。」

「実は、僕には秘密があるんです。

皆さんが信じてくださるかはわかりませんが、
僕には“前世”で“室生犀星”として生きた記憶があります。

今回、“芥川賞”をいただいた
『君と歩みたい』は実話です。

龍生君!!」

僕は龍生君を呼んだ。

「そこは、“龍之介”の方で
呼んでほしかったな、“犀星君”」

僕たちの会話に会場は  
一斉にどよめいた。

「ー輪廻が回り    
愛と執念で果たした    
再会の約束ー」    
    
群衆の中から聞こえてきた俳句。    
    
「“久しぶり”ね、“犀星さん”、“芥川さん”」    
    
僕たちに話かけてきたのは    
記者の女性だった。  
  
首から下げている関係者用の  
名札には浅水都羽あさみとわと書かれいた。

「……“とみ子”?」

“今世”では年の差が逆転したらしい。

「そうですよ。

“前世”であなたの妻だった“室生とみ子”ですよ。

この受賞式に“転生者”が    
幾人も揃うなんて    
神様も悪戯好きだと思いません?    
    
“室生犀星”に“芥川龍之介”    
犀星さんの妻だった私、    
それから、あちらに    
お二人のご友人だった“菊地寛さん”と
“堀辰雄さん”も    いらっしゃいますよ」

ちょっと待った!!  
  
“寛君”は気付いてたからいいとして、
“堀辰雄君”までいるって……

「因みに“堀辰雄さん”は
“今世”では私と同じ記者よ」

驚き過ぎて言葉が出てこなかった。
  
「“龍生君”、僕は“今世”の両親に
全て話そうと思ってるんだけど、君はどうする?」

こうして、何の因果か“転生者”が
集まった“芥川賞”受賞式。

ーー  

一通り、受賞式は終わり、  
僕と龍生君、“とみ子”と  “寛君”、
“堀辰雄君” 、  それから、“今世”の両家の
両親を交えて話すことになった。  
  
場所は室瀬家。  
  
“今世”での僕の家だ
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