GAME

華愁

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第五章◎待ち合わせにはご用心

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今日は約束の土曜。

学校の奴らに
見つからないように
しなきゃならない。

後々面倒な事になりかねない。

雪村はともかく、
的木先生に休日に
会っていたなんて知られたら
学校に居られないだろうな。

そして、俺たちは今、
学校からかなり離れた
公園に来ていた。

「此処でいいんだよね?」

その場所はタクシーで
三十分程かかる所だった。

「雪村が寄越した
地図だと此処のはずだ」

どぉやら俺たちの方が

早く着いたみたいで
雪村たちはまだ来ていなかった。

二十分後、やっと二人が来た。

運転してるのは
的木先生で雪村は
助手席に座っていた。

「先生たち五分遅刻です」

慎が膨れっ面をして言った。

「俺たち
二十分前から待ってたんですよ」

俺も拗ねた口調で言ってみた。

「え? そんな前から待ってたの!?」

「はい」

肯定の意味で慎が
返事をした。

「そりゃ悪かったな」

謝る雪村なんて貴重かも。

「まぁいいけどさ」

「それで、何処に行くんですか?」

慎は何時も俺が
思っていることを
代弁してくれる。

「まだ決めてないんだけど、
とりあえず乗って」

そぉ言われたから
慎と二人で後部座席に乗った。

「お邪魔します」と
二人で言ってみた。

「どぉぞ」

俺たちの台詞が
可笑しかったのか
的木先生は小さく笑った。

「なぁ、番号交換しないか」

いきなり雪村が提案してきた。

「そぉだね」

的木先生まで便乗している。

「いいのかよ?

雪村も的木先生も、
教師が生徒にケー番教えてちまって」

「お前ら二人にだけな」

学校にいる時より
二人が子供っぽくみえる。

まぁ、口ではこう言ってるが
俺の内心は
〈的木先生のケー番ゲット❢❢〉と
かなり興奮気味だけどな。

「誰にも言うなよ」

誰が教えてやるか。

「言わねえよ」

ファンの奴らには
絶対に知られちゃならない。

「笹山もだぞ?」

「わかってます」

「じゃぁ赤外線するか」

四人で番号交換をした。

「行き先はまだ
決まってないからドライブしよう」

的木先生が車を発進させた。

着いたのは隣の市。

雪村が「市内にいて生徒に
見つかるのは嫌だ」とぼやいたのを
慎には聞こえなかったみたいだ。

「二人共、お腹すいてない?」

言われてるみれば、
昼飯がまだだったなぁと思い出す。

「お腹すきました」

二人でハモると
的木先生がまた笑った。

「静は?」

ついでとばかりに
雪村に訊いた。

「俺はついでかよ❢❢」

雪村自身もそう思ったらしい。

「まぁ、腹はへったけどな」

本気で怒ってるわけじゃない。

「じゃぁ、
俺のおすすめの店に行こう」

「何の店ですか?」

的木先生のおすすめとは
何の店だろうか?

「イタリアンの店なんだけど
二人共好き?」

俺の好物だ。

「はい。
大好きです」

慎と二人で応えた。

まぁ、慎は
どっちかというと
和食の方が好きだけどな。

「よかった。
ご飯食べながら
俺たちの話をしてあげるね」

「ありがとうございます」

的木先生は学校の人気者だが、
本人はまったく気付いていない。

車を五分程走らせて
的木先生おすすめの店に着いた。

「喫煙席で大丈夫?」

最初は雪村のためかと
思ったが、どうやら
的木先生も喫煙者らしい。

でも、学校では吸ってないよな。

「雪村が吸ってるのは
知ってますけど、
的木先生も吸うんですね」 

「学校ではあんまり
吸わないようにしてるんだよ」

何でだろ?

「理由(わけ)を訊いても?」

「秘密」

唇に人差し指を
当ててシーのポーズをした。

「それで、なんの話からする?」

知りたいことは沢山あるが
欲張ってはいけない。

「二人が高校生の頃の
話が聞きたいです」

雪村と的木先生は
どんな高校生だったんだろうか?

「わかった」

きっとモテたんだろなぁ。

「まず最初に、
俺も静も真面目な
生徒じゃなくて
よく二人でよく怒られたよ」

それは意外だ。

「雪村は
わかりますけど的木先生も?」

「うん。
因みに俺たちは
河路の卒業生なんだよ」

他の生徒が
知らないことを知れて嬉しい。

「じゃぁ、
先生たちは僕たちの先輩ですね」

そういうことになるのか❢❢

「煤宮先生は
俺たちの担任だったんだよ」

あのおじいちゃん先生が
雪村たちの
担任だったなんて吃驚だ。

煤宮先生は六十過ぎの
おじいちゃん先生で
色んな相談にのってくれるから
生徒たちの間では
的木先生の次に人気だ。

「優しいですよね」

慎がしみじみ言うと
的木先生は
ちょっと困り顔をしてから
「あぁ、今の生徒には
優しいよね」と言った。

今の?

「俺たちが学生だった頃は
とっても怖かったんだよ」

「なぁ静」

同意を求められた
雪村は煙草を灰皿に
押し付けて消した。

「そぉだな、何時も怒鳴ってたしな」

あの煤宮先生が
怒鳴ってるところなんて
想像できない……

「意外だね」

慎も同じ事を思ったみたいだ。

「だよな」

俺たちには優しくて
先生というより
本当のおじいちゃんみたいな感じだ。

「きっと、俺たちの時は
息子みたいな感じで、
今の皆は
孫みたいな感じなんだと思う。
煤宮先生も歳とったから
少し丸くなったのかもね」

その後、雪村が意外にモテたとか
二人で同じ人を好きになったとか、
色々な話をを沢山聞かせてもらった。

その後食べたパスタは
とても美味しかった。

「ごちそうさまでした」

二人に向かって言った。

「美味しかった?」

「はい、とても
美味しかったです」

あのカルボナーラ
家で作れるかな?

「それはよかった」

学校では見れない二人がいる。

まず、私服だし
煙草を吸ってる的木先生とか
ある意味レアだよなぁ。

そして、スーツの時と
違って実年齢よりも
若く見えるし、
下手すれば大学生でも
通りそうだ。

そんな心の声を
またしても、慎が
言葉にした。

「今日の先生たちは
大学生くらいに見えますね。
雪村先生も何時もより
格好いいです」

雪村も黙ってりゃ
格好いい部類に入るだろうな。

「それは嬉しいが
《何時もより》は余計だ」

「ごめんなさい」

素直だなぁ。

「まぁいいけどな」

この空気が気持ちいい。

「そぉだ、今、
三組でやってるGAMEなんだけどさ」

話が戻ったな。

「染野が始めたアレですか」

内容が気になるのか? 

「うん。
何でそんな事
始めたんだろうと思って」

内容じゃなくて
理由(わけ)を知りたいのか。

「あいつは昔から
気紛れでしたから、
今回のGAMEも意味は
ないと思いますよ」

染野のやる事は
何時だって無意味なことが多い。

「強いて言うなら
単なる暇潰しですよ」

金持ちの考えることは
さっぱりわからない。

「中学の時から
ずっとそうなんです」

五年も一緒だが
理解不能なのは変わらずだ。

「三人は中学から一緒なの?」

「俺はそうですね。
慎と染野は
幼稚園からの
幼なじみなんですよ」

俺は染野にしてみれば
邪魔者なんだろう。

「なぁ? 慎」

「うん、だけど
僕には聡君の
考えてることはわからない」

「まぁ、幼なじみだからって
考えてることが全部
わかるわけじゃないからね」

そぉなのか。

俺は幼なじみなんて
いないからわからない……

「俺も静と二十年
一緒にいるけど時々だけど
未だに何考えてるかわからないし。
静もそぉだろう?」 

「確かにな」

やっぱりそうなのか……

「だから、笹山君も
気に病むことないよ」

的木先生の言葉で
少しは気が楽になったらしい。

「わかりました」

苦笑いのような笑みを
浮かべて慎は応えた。

話に区切りが着いたところで
GAMEの話に戻る。

「鈴川の奴、逃げられてるかな?」

今日が土曜だから
明日捕まらなければ
鈴川の勝ちだな。

もしかしたら、
もう捕まってるかも
知れないけどな。

「どぉだろうな」

出来れば逃げきって
くれればいいと思うが
鈴川じゃ無理だろうか……

「まぁ、結果は
月曜にならないと
わからないってことだな」

そりゃそうだ。
確かめる術はないしない。

鈴川とは仲がよくないから
勿論、ケー番も知らない。

「だよなぁ~
そしてまた新しい
ターゲットを探すんだよ」

慎を抜いて俺に
戻るまで繰り返されるんだ。

「かなり酷なGAMEだよね」

今週は追いかけてた側だったのに
来週は追いかけられる側に
なるかも知れないのだから
確かに酷だろう。

特に気が弱い奴はプレッシャーに
耐えられないだろう。

「そぉですね。
だけど、慎だけはターゲットに
しないと思うんですよ」

大体、俺を最初のターゲットに
したのだってやきもちからだ。

「何で?」

的木先生から
質問が飛んできた。

「慎は染野のお気に入りですよ」

「そぉいえば、
この前もそんな事言ってたよね?」

俺にばっかり
ちょっかいを出すのは
慎を取られて悔しいんだと思う。

「先週のGAMEで
何で最初のターゲットが
俺だったかわかるか?」

ちょっぴり天然な
慎には難しいか?

「たまたまじゃないの?」

やっぱり難しいか。

「違うよ」

考え出した慎とは逆に
的木先生は
わかったという顔をした。

「あのさぁ、それ
俺が答えてもいい?」

「はい」

迷いなく言った。

「ようは嫉妬でしょう?」

「当たりです」

雪村ですらポカーンとした
顔をしていた。

「染野君は春日井君に
笹山君を取られたみたいで
悔しかったんだよ」

今度は慎が
ポカーンとした顔をした。

「だから、春日井君を
最初のターゲットにしたんだ」

その言葉に慎は
俯いてしまった。

「おい、
慎が気にすることじゃないぞ」

俺は
これっぽっちも気にしていない。

「でも貴也……」

小さな声で
慎が名前を呼ぶ。

「俺は最初から
わかってたんだ」

そう、わかってたんだ。

慎を取った俺への嫌がらせだと。

余談だが、鈴川は
昨日つまり金曜の
放課後は捕まっていなかった。

無事に帰れたかは
不明だが……

「だから、慎が
気に病むことじゃ
ないから顔を上げろ」

恐る恐ると
いった感じで
慎はやっと顔を上げた。

おっと、また話が脱線したな。

「このGAMEって
全員に回るまで
続くんだよね?」

そうだろうなぁ。

「恐らくは」

何ヵ月かかるんだか……

そして、何人の
クラスメイトが逃げ切れるだろうか?

「染野君を止めるのは
無理なんでしょう?」

止めようとするだけ
時間と労力の無駄遣いだ。

「それは百パー無理ですね。

あいつは言い出したら
聞く耳を持ちません」

「笹山が言ってもダメなのか?」

せめて、慎の言葉くらい
素直に聞けばいいんだが
それすらしないから厄介だ。

「多分ダメだな」

「そっか、じゃぁ
三組は当分大変だね」

まったくだ。

そして、雪村は何も言わない。

「俺たちは参加する
気がないんで自分が
ターゲットじゃなきゃいいです」

他の奴らのことなんて
知ったことじゃない。

「そろそろ出よっか」

店に掛かっている
時計を見ると入ってから
二時間も経っていた。

「そうだな。出るぞ」

「はいよ」

雪村と的木先生は
先に行き、会計をしている。

「お前ら、この後も暇か?」

一日暇だから来たんだしな。

「あぁ」

短く肯定すると
的木先生から
吃驚する提案をされた。

「じゃぁ、家に来ない?」

えっ、的木先生ん家!?

行けるなら行きたい。

「いいんですか?」

「うん。

その方が時間を気にしないで
話ができると思ってね」

確かに学校から
離れてるとはいえ、
屋外にいれば
誰に会うかわからない。

屋内の方がいいとは
思っていたけど、的木先生ん家に
行けるとは予想外だった。

「じゃぁ決まりだな」

車に戻り、連れて来て
もらった時の様に
「お邪魔します」と言って
乗ったら、「別にいいのに」と
的木先生が笑った。

その笑顔が可愛いと
思ったのは内緒だ。

「俺たちの奢りだか金はいらねぇよ」

車に乗ってから
慎と二人で財布を
出そうとしたら
雪村に止められた。

「いいのか?」

別に、俺たちに払えない
金額じゃなかったが
奢ってくれるみたいだ。

「誘ったのは
俺たちだから奢られといて」

的木先生にまで
言われちゃしょうがない。

「わかりました」

二人で
「ごちそうさまです」
とお礼を言った。

「的木先生ん家は
此処から近いんですか?」

答えたのは雪村だ。

「此処から十分くらいだ」

「ぁはは、静に
先に言われちゃったね」

気にしないのが凄い。

「実家はちょっと遠いけどね」

付け足すように的木先生は言った。

そぉなのか……

好きな人のことは
ちょっとした小さなことでも
知れると嬉しくなる。

「学校からは
少し距離ありますよね?」

車通勤だとしても
やはり距離がある。

「そうだね。

毎日、六時には
起きないと間に合わないんだよ」

本当に早起きなんだなぁ。

俺たちは七時に起きても間に合う。

教師ってのも大変なんだなぁと
思っている内に着いたらしく、
そこは十階建てのマンションだった。

「俺の部屋は
五〇五号室だよ」

駐車場からエントランスに向かい
エレベーターのボタンを押した。

五階に着き、的木先生が
五〇五号室の鍵を開けた。

「はい、どぉぞ」

「お邪魔します」

車に乗った時と
同じ台詞を言って
中に入ると男の人の
一人暮らしとは
思えない程にキレイな部屋だった。

「キレイな部屋ですね」

俺の部屋はヤバいくらい汚い。

慎の部屋も
此処まではキレイじゃない。

「そぉ?」なんて
おどける的木先生は
素で聞き返している。

「はい、とてもキレイです」

一体、何時、
掃除してるんだ?

「慎もそぉ思うだろう?」

A型の慎は小まめに掃除する。

だから《少し》散らかっていても
決して汚なくはない。

一方、B型でマイペースな
俺の部屋はかなり汚い。

片しても一週間で汚なくなる。

「的木先生は
何時掃除してるんですか?」

「普通に休みの日だよ」

偉い……

俺なんて母さんに
言われないと掃除なんてしない。

「三人共、ソファーに座って待ってて」

「今、お茶淹れるから」

的木先生はキッチンに行こうとした。

「俺、手伝いましょうか?」

雪村が《お前が?》みたいな
顔をして言った。

「春日井が手伝い?」

失礼な奴だなぁ。

「何だよ、その言い種は」

不機嫌な声が出た。

「雪村先生、貴也は
料理とか得意なんですよ」

「へぇ~」

予想通り、雪村は不思議そうに
俺の顔を見て来た。

「悪いか」

雪村に悪態をついた。

「じゃぁ、春日井君には
手伝ってもらおうかな。
二人はソファーで待ってて」

「分かった」

「分かりました」

二人の返事を聞いて、
俺と的木先生は
お茶を淹れることになった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

inキッチン

「春日井君はよく料理するの?」

「はい、両親がよく家にいないのと
一人っ子なのでよく作ります」

俺の両親はよく二人で
旅行に行くのが好きだ。

そのせいか、料理だけは上手くなった。

「共働き?」

間違いではない。

「それもありますけど、
よく二人で旅行に行くんですよ」

仲がいいのは結構だが
俺を置いてしょっちゅう
旅行に行くのはどぉなんだ?

「そうなんだ」

「まったく、困った両親なんです」

はぁ~とため息を吐いた。

「それは前からなの?」

昔はよく、
ばぁちゃん家に預けられた。

「小さい頃からずっとです。

一人で留守番するようになったのは
中学からで、その頃から
料理をするようになりました」

最初の頃はよく失敗したなぁ。

「的木先生は料理しますか?」

訊いてみた。

「うん。

うちは四人兄弟で、両親が
忙しくて構ってくれなかったから
長男の俺が作るようになったんだよ」

事情は人それぞれだ。

「偉いですね」

俺だったら両親に
文句を言うだろうなぁ。

「そんなことないよ……
必然的にそうなっただけで」

「春日井君もそうでしょう?」

確かに間違っていない。

「ですね(苦笑)」

それにしても、二人で
長い時間いるとドキドキが止まらない。

「いけない、長話しちゃったね。
早く持っていかないと静がキレる」

すっかり、二人のことを忘れてた。

「二人が待ちくたびれてますね」

慎はそんなに怒らないと思うけどね。

「だよね……

急いで淹れよう❢❢」

大慌てでお茶を淹れた。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

inリビング

「遅い」

雪村が開口一番に言った。

「悪い静、春日井君と
話し込んじゃった」

「何の話しだ?」

流石幼なじみ、
キレてる雪村にも普通だ。

「料理ができるようになった過程の話」

俺も的木先生も
自分で作れなきゃ
此処にいなかったかもしれない。

「あぁ、成る程」

それだけで雪村は納得したらしい。

「二人共、似たような過程だもんな」

待て、なんで雪村が
俺ん家の事情を知ってんだ? 

「何で静が春日井君ん家の
家庭事情を知ってんだよ?」

的木先生も疑問に思ったみたいだ。

「こいつに聞いたから」

慎を指して言った。

「ごめん貴也」

勝手に話したことだろう。

「別にいいさ」

隠してるわけじゃないし
大きな秘密があるわけでもない。

「ん?

 今〔二人共〕って言いました?」

雪村の言葉がひっかかったらしい。

「あぁ、言った」

的木先生のことは話さなかったのか。

「的木先生はどうして?」

慎にしたら疑問に思うよな。

「俺は兄弟の一番上だったから
忙しい両親の代わりにね」

「そぉなんですか……」

想像がつかないのだろう。

俺も慎も一人っ子だし、
特に慎はおばさんが何時も
家にいるから
自分で料理するような
状況になったことがない。

「今じゃ何でも作れるよ」

的木先生は何時もの笑顔じゃなく
悪戯が成功した子供のような顔をした。

「凄いですね」

二人で感心した声をあげた。

「あの今度、料理を教えください」

ぇ? ぅゎぁ!?

俺、何言ってんだ//////

「何系の料理?」

内心慌てる俺とは反対に
的木先生は普通だ。

てか、マジで教えてくれるんだろうか?

「和食系を……」

洋食は割りと自信があるが和食は苦手だ。

「わかった。今度の連休においで」

ヤバい❢❢ 叫びたい程嬉しい//////

「ありがとうございます❢❢」

「春日井君は何系が得意?」

まさか訊かれるとは思わなかった。

「洋食系です」

和食は母さんやばぁちゃんに
作ってもらってたから自分で
作ることはなかった。

「的木先生は?」

聞き返してみた。

「春日井君が苦手な和食かな(笑)」

羨ましい……

「和食は好きじゃないの?」

最もな質問だ。

「普通に好きなんですけど
自分じゃなかなか作らなかったんですよ」

「そっか♬✧*。
因みに笹山君は何系が好き?」

的木先生は慎にも訊いた。

「和食ですね(笑)

でも、貴也が作ってくれる
洋食も美味しいんですよ」

おばさん、あんま洋食作んないもんなぁ。

って、慎❢❢ 何言ってんだよ//////


「それは是非、食べてみたいなぁ♬♡

ところで、よかったらご飯食べてって」

的木先生の手料理が食べられる!?

「おい、亮
こいつらの都合を訊いてから言えよ」

それまで黙ってた雪村が口を挟んだ。

まぁ、俺は例の如く
旅行に行ってるから別にいいんだけどな。

「僕、電話してみますね」

慎も的木先生のご飯食べたいみたいだし
こんな機会、
もぉないかも知れないもんな。

「大丈夫?」

あぁ~ おじさんがなぁ……(苦笑)

「わからないですけど、
とりあえず電話してみます」

「そっか、じゃぁ電話しておいで」

慎は携帯を持って廊下へ行った。

「お前はいいのか」

的木先生の隣に立っている
俺に雪村が言った。

「例の如く旅行中だからいいんだよ」

帰ったところで一人だ。

「そうなんだ。じゃぁ泊まってく?」

「亮、お前はまた、そぉやって……」

雪村の言葉は意味ありげだが何かあるのか?

「なぁ雪村、何かあるのか?」

一瞬、ビクってなったな。

「それは俺じゃなくて亮に訊け」

何で的木先生?

そぉ言えば、さっきから
言動が少し可笑しいような気がする。

「雪村は何か知ってるんだろう?」

またビクってなった。

「知ってるには知ってるけど
俺の口からは言えないんだよ」

気になる……

「それに、的木先生の
言動も少し可笑しいし?」

俺が言うと雪村がため息を吐いた後怒鳴った。

「思いっきり
疑われてんじゃねぇか……バカ亮❢❢」

雪村が的木先生をベシっと叩いた。

これには吃驚した。

「あいたっ」

叩かれたところをさすっている。

「お前がウジウジしてるからだろうが❢❢」

意味がわからない。

「俺は一服してくる」

そぉ言うとキッチンへ行ってしまった。

リビングに残された俺達……

少しの沈黙の後、的木先生が話始めた。

「あのね春日井君、俺が今から
何を話しても引かないでね……」

さっきのとは違う疑問が頭を過った。

「わかりました」

「俺さ、好きな人がいるんだ。
同性でおまけに生徒……」

チクリと胸が痛んだ……

「笑えるでしょう(苦笑)」

笑ったりしない。

よくわかる。

「まず、生徒を
好きになった時点で教師失格だよね」

「そんなことはないと思います」

先生が教師失格なら
俺は生徒失格だな(苦笑)

「教師だって人間なんですから
誰かを好きになるに決まってます。
それが生徒だっただけです」

「でも、年下で同性だよ?」

別に元から同性愛に偏見はないし
今は俺もそっち側の人間になりつつある。

「いいんじゃないですか?

教師と生徒じゃあまり
年の差ありませんし」

教師と生徒なんてよくある話だ。

「そっか、ありがとう」

「いいえ……」

お茶を一口飲むと真っ直ぐ俺の方を向いた。

「今の話を含めて
聞いて欲しいんだけど……」

何だろう?

「はい」

「俺は春日井君が好きなんだ//////」

嘘……夢じゃないよな?

「ごめん、気持ち悪いよね」

直ぐに返事を
しなかったせいか勘違いされた。

「違います❢❢ 嬉しかったんです/////」

「え……?」

信じられないという表情(かお)をされた。

「俺も好きです」

一度、深呼吸してから応えた。

「本当に?」 

疑うのもわからなくもない。

同性愛は憧れと
勘違いしてることもあるからだ。

でも、俺の気持ちはちゃんと恋だ。

「はい❢❢
これから、宜しくお願いします」

なんとなくお辞儀もしてみた。

「こちらこそ」

言い終わって二人で笑った。

「下の名前で呼んでいい?」

呼ばれたい❢❢

「あ、はい、いいですよ」

恥ずかしくて切れ切れになってしまった//////

「よかった。
俺のことも下の名前で呼んで?」

それはちょっと無理が……

「貴也、ダメ?」

ぅ゛っ……ある意味反則だ//////

俺は今、耳まで真っ赤だと思う。

恥ずかしくて俯きたくなる。

「ダメってわけじゃないです」

ただ単に恥ずかしいだけだ。

「よかった……嫌なのかと思った」

それはない。

「ほら、呼んでみて?」

的木先生がこんなに
意地悪だとは知らなかった。

「り、亮」

やっぱり恥ずかしい……

「よくできました」

ニコニコしながら亮が言った。

「少しずつ慣れていこう」

慣れる日が来るのか?

「はい」

恋人同士になれたんだよな///

嬉しい♡♡

ギュッと抱き締めてくれた♡*。

この温もりを一生離したくないと思った。

「慎と雪村、遅いですね」

「静は俺が告るって知ってたから
キッチンに行ったんだろうけど
笹山君は本当に遅いね……」

そっか、雪村がさっき言ってたのは
このことだったんだな。

「俺、見て来ます」

「お願いね」

リビングを出て廊下に行くと
電話でケンカしてる慎がいた。

「亮、早く来て❢❢」

急いでリビングに戻って亮を呼んだ。

「どぉしたの?」

「慎が電話でケンカしてて」

「わかった」

亮と一緒に慎のところに行った。

トントンと亮が慎の肩を叩いた。

「的木先生」

「何があったの?」

亮の質問に慎は電話口を
手で塞いで話し出した。

「実は……」

つまり、おばさんはいいと言ってくれたが
おじさんはダメだと言ってるらしい。

「笹山君、電話代わってくれるかな?」

不安そぉな表情(かお)を
しながら亮に携帯を渡した。

「もしもし、私
慎君の学校の教師で的木と申します」

丁寧な口調で話す亮は
大人で教師だなぁと思った。

「今日は急なお話しで申し訳ありません」

おじさんは聞く耳持たずと言った感じで
こっちにまで聞こえるくらいの
大きな声で怒鳴っている……

「いいから、今すぐ息子を帰らせろ❢❢」

あまりの声の大きさに亮も
携帯を耳から離している(苦笑)

「的木先生・貴也、僕帰るよ」

本当はいたいんだろうなぁ。

「貸して」

タメ口になったけど気にしない。

「貴也?」

不思議そうに俺を見て来る。

「いいから」

亮の手から慎の携帯を取った。

「おじさん、お久し振りです、貴也です」

俺の声を聞いて
少しだけ落ち着いてくれた。

「それで、慎のことなんですけど
やっぱりダメですか?」

ダメ元で聞いてみる。

「泊まりはダメだ❢❢」

こういう人だって忘れてた↷↷

「わかりました。
ですが、夕飯は一緒に
食べさせてください」

沈黙が長い……

「仕方ない、夕飯だけだ」

とりあえず、今すぐ帰らずに済んだな。

「ありがとうございます」

「じゃぁ、慎に帰る時に
電話しろと言っといてくれ」

おじさんにわかりましたと言い
通話を切って慎に携帯を返した。

「ほい、携帯」

「お父さん何だって?」

ニィっと笑って二人にピースした♬♡*゚

「泊まりはダメだけど夕飯は
食べて来ていいってさ」

本当は泊まりもできれば
よかったんだけどな。

「貴也、ありがとう」

慎の表情(かお)が笑顔になってよかった。

「どういたしまして。
あと、帰る時に電話しろってさ」

「わかった。本当にありがとう」

大袈裟だなぁ(苦笑)

「そうと決まったら早速作らなきゃね」

張り切ってるなぁ~

それになんだか楽しそうだ。

「貴也、手伝ってくれるかい?」

最初からそのつもりだっての。

「勿論」

リビングに戻る途中で
慎にツッコまれた。

「あの、的木先生は何時から
貴也を名前で呼んでるんですか?」

ぁ、慎にバレた(苦笑)

「ついさっきからだよ」

訳がわからないという風に首を傾げた。

「貴也、言っていい?」

それは、俺の台詞じゃねぇ?

まぁいいか。

「うん。てか、さっきから
タメ口調なのにツッコまないのな」

何時言うかなと待ったんだが。

「気にしないよ。
むしろ、そっちがいい」

いいならいいか。

「俺達、付き合うことになったんだよ」

亮がサラッと言った。

「本当!?」

慎は同性愛をどう思ってるんだろうか。

「うん」

俺は亮が好きだ♡*。

「そっか」

反応はイマイチか?

「気持ち悪いか?」

訊いてみる。

「そんなこと思ってないよ」

よかった。

「恋愛は自由だし、僕は
貴也の気持ち知ってたしね」

爆弾発言された……

「俺、そんなにわかりやすかったか?」

自分じゃ隠してたつもりだったのに……

「まぁ、貴也を見てればわかるよ」

恥ずいな……

「教官室行く時とか嬉しそうだったし
的木先生を見てる時の目が
恋してる目だったから
好きなんだなぁって思ったんだ」

まさか、慎に最初からバレてたとは……

内心、焦り気味の俺に気付いたのか
亮が話を反らしてくれた。

「二人とも、何が食べたい?」

キッチンに向かいながら訊いてきた。

「亮が作ってくれるなら何でもいい」

俺が何でもいいと言ったら
今度は慎に訊いた。

「なぁ亮、雪村には訊かなくていいのか?」

一服して来ると
言ったっきり戻って来ない。

「静は何でも食べるからね」

ぁぁ、好き嫌いなさそうだよな。

「因みに静の好物は餃子だよ」

ぷっ、イメージに合わねぇ(笑)

「貴也、今イメージに
合わなさそうって思ったでしょう?」

二人に見抜かれた。

「何の話だ?」

いきなり後ろから雪村が来た。

「静の好物の話」

亮は雪村が来てたのに気付いてたんだな。

「どっからそんな話になったんだ?」

戻って来ていきなり自分の好物の話を
されてれば訪ねたくなるよな。

「何作ろうかって話」

「成る程な」

それで納得するのか。

「二人の好物は?」

亮に訊かれた。

「オムライスだな」

自分でもよく作る。

「僕は肉じゃがが好きです」

亮の好物は知らないけど
三人とも和・洋・中とバラバラだな。

「とりあえず、
全部作れるけど何作ろうか?」

一人暮らしだよな?

「いっそうのこと
全部作るってのは?」

提案してみる。

「お前なぁ」

雪村が
呆れた声を出した。

時間はまだある。

「二人で作れば
できないこともないと思うんだけどな」

元々、手伝う気でいたんだし
料理は苦じゃない。

「貴也始めるよ」

張り切ってる亮が可笑しかった。

「お待たせ」

テーブルに料理を並べてると
雪村がうまそうなだなと言った。

「夕飯食べたら笹山君を送ってあげて」

自分では行かないのな(笑)

「了解」

まぁ、雪村も帰るからいいか。
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