復讐者・芥川龍之介

華愁

文字の大きさ
5 / 9

終話 断罪と再出発

しおりを挟む
数日後、僕は江口と猿渡を浅草のカフェに呼び出した。

店の中に入って来た江口と猿渡は僕の隣に座っている恭をに気付いたみたいだ。

「井川!?なぜお前が!!」

「一高時代からの大切な親友の窮地に手を貸すのは当たり前だろう?

僕は法曹界の人間としてこの場にいる。江口・猿渡、お前らが龍之介にしたことは強要罪や強姦罪、更には名誉毀損にあたる行為だ。

龍之介、どうする? 新原の父親は自白したがこいつらを法廷に引きずりだすか?」

「そうだね、恭、書類を揃えてくれるかい?」

「もう、用意してある。犀星さんがかなり怒っていたからね、風骨先生監修で
一日で書き上げていたよ。

龍之介は犀星さんに愛されているね」

「ありがとう恭、犀さんは僕の旦那様だからね。

妻の文と長男の比呂志も認めてくれたから家族公認だよ」

恭は二人の前に一枚の封筒を置いた。

「江口、お前は学生時代からの友人を傷つけ、猿渡、お前は今は亡き漱石先生の名を汚した罪は重いぞ。河越風骨先生は文壇の重鎮だ。

室生犀星さんの先輩であり、僕も尊敬する先生だ。

この告訴状は正式なものだから裁判所に提出すればお前たちは文壇の立場どころか社会的に抹消されるだろう」

淡々と告げる恭は正に法の番人そのものだ。

「わ、悪かった、あの頃、どうしても、龍之介がほしくて……」

「僕も、江口先生の誘いに乗ってしまい……芥川さん、すみませんでした」

今更ながらに謝る二人を僕は冷ややかな目で見ていた。

「ああ、猿渡君、僕はもう“芥川”じゃないんだよ。

今の名前は“西園寺龍之介”。

条件を飲むなら告訴は保留にしてもいいよ?」

僕の代わりに恭が告げる。

「一、龍之介及び、龍之介の家族・室生家・恒藤家に関わらないこと。

 二、速やかに筆を折り、文壇から姿を消すこと。
 
 三、龍之介が君たちに与えられた苦痛の治療費や慰謝料を全額支払うこと。

 四、以上の条件を一つでも破った場合、あるいは龍之介に対して少しでも誹謗中傷を行った場合は、即刻この告訴状を裁判所に提出し、刑事罰と民事賠償の両面で徹底的に追い詰める。

ほら、返事はどうした?」

学生時代から、恭は優しい部類の人間が“悪”に対しては冷徹な面を見せる。

二人は恭が出した合意書に震える手で署名しカフェを出て行った。

半年とかからずに全ての“復讐”を終えられたのは犀さん・恭、そして風骨先生のおかげだ。

――

一ヶ月後、僕は犀さんの許可を得て、新思潮の仲間たちを呼び、出生から僕の名字が変わるまでは経緯を話し、江口と猿渡の僕への所業も
室生家と芥川改め、西園寺家の新たな家族の形も話した。

「江口が龍之介に!?」

新思潮の仲間たちは当然、江口を知っている。

「猿渡って漱石先生の門下生だったよな?」

久米正雄も僕と一緒に漱石先生の門を叩いた一人だ。

「そうだよ、江口と手を組んでいて、
江口曰く、僕がほしかったらしいよ。

猿渡は江口の言いなりだった……」

寛は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。

「江口の野郎、俺の前では平然と文学の話しをしていたくせに、裏で龍之介に性暴行を働いていたなんて!!」

「寛、怒ってくれてありがとう。

だけど、犀さんと恭、河越風骨先生のおかげで全て解決したから大丈夫だよ」

数時間後、宴はお開きとなり、皆が帰って行った。

僕は“西園寺龍之介”として生きていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

俺達の関係

すずかけあおい
BL
自分本位な攻め×攻めとの関係に悩む受けです。 〔攻め〕紘一(こういち) 〔受け〕郁也(いくや)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...