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終話 断罪と再出発
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数日後、僕は江口と猿渡を浅草のカフェに呼び出した。
店の中に入って来た江口と猿渡は僕の隣に座っている恭をに気付いたみたいだ。
「井川!?なぜお前が!!」
「一高時代からの大切な親友の窮地に手を貸すのは当たり前だろう?
僕は法曹界の人間としてこの場にいる。江口・猿渡、お前らが龍之介にしたことは強要罪や強姦罪、更には名誉毀損にあたる行為だ。
龍之介、どうする? 新原の父親は自白したがこいつらを法廷に引きずりだすか?」
「そうだね、恭、書類を揃えてくれるかい?」
「もう、用意してある。犀星さんがかなり怒っていたからね、風骨先生監修で
一日で書き上げていたよ。
龍之介は犀星さんに愛されているね」
「ありがとう恭、犀さんは僕の旦那様だからね。
妻の文と長男の比呂志も認めてくれたから家族公認だよ」
恭は二人の前に一枚の封筒を置いた。
「江口、お前は学生時代からの友人を傷つけ、猿渡、お前は今は亡き漱石先生の名を汚した罪は重いぞ。河越風骨先生は文壇の重鎮だ。
室生犀星さんの先輩であり、僕も尊敬する先生だ。
この告訴状は正式なものだから裁判所に提出すればお前たちは文壇の立場どころか社会的に抹消されるだろう」
淡々と告げる恭は正に法の番人そのものだ。
「わ、悪かった、あの頃、どうしても、龍之介がほしくて……」
「僕も、江口先生の誘いに乗ってしまい……芥川さん、すみませんでした」
今更ながらに謝る二人を僕は冷ややかな目で見ていた。
「ああ、猿渡君、僕はもう“芥川”じゃないんだよ。
今の名前は“西園寺龍之介”。
条件を飲むなら告訴は保留にしてもいいよ?」
僕の代わりに恭が告げる。
「一、龍之介及び、龍之介の家族・室生家・恒藤家に関わらないこと。
二、速やかに筆を折り、文壇から姿を消すこと。
三、龍之介が君たちに与えられた苦痛の治療費や慰謝料を全額支払うこと。
四、以上の条件を一つでも破った場合、あるいは龍之介に対して少しでも誹謗中傷を行った場合は、即刻この告訴状を裁判所に提出し、刑事罰と民事賠償の両面で徹底的に追い詰める。
ほら、返事はどうした?」
学生時代から、恭は優しい部類の人間が“悪”に対しては冷徹な面を見せる。
二人は恭が出した合意書に震える手で署名しカフェを出て行った。
半年とかからずに全ての“復讐”を終えられたのは犀さん・恭、そして風骨先生のおかげだ。
――
一ヶ月後、僕は犀さんの許可を得て、新思潮の仲間たちを呼び、出生から僕の名字が変わるまでは経緯を話し、江口と猿渡の僕への所業も
室生家と芥川改め、西園寺家の新たな家族の形も話した。
「江口が龍之介に!?」
新思潮の仲間たちは当然、江口を知っている。
「猿渡って漱石先生の門下生だったよな?」
久米正雄も僕と一緒に漱石先生の門を叩いた一人だ。
「そうだよ、江口と手を組んでいて、
江口曰く、僕がほしかったらしいよ。
猿渡は江口の言いなりだった……」
寛は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「江口の野郎、俺の前では平然と文学の話しをしていたくせに、裏で龍之介に性暴行を働いていたなんて!!」
「寛、怒ってくれてありがとう。
だけど、犀さんと恭、河越風骨先生のおかげで全て解決したから大丈夫だよ」
数時間後、宴はお開きとなり、皆が帰って行った。
僕は“西園寺龍之介”として生きていく。
店の中に入って来た江口と猿渡は僕の隣に座っている恭をに気付いたみたいだ。
「井川!?なぜお前が!!」
「一高時代からの大切な親友の窮地に手を貸すのは当たり前だろう?
僕は法曹界の人間としてこの場にいる。江口・猿渡、お前らが龍之介にしたことは強要罪や強姦罪、更には名誉毀損にあたる行為だ。
龍之介、どうする? 新原の父親は自白したがこいつらを法廷に引きずりだすか?」
「そうだね、恭、書類を揃えてくれるかい?」
「もう、用意してある。犀星さんがかなり怒っていたからね、風骨先生監修で
一日で書き上げていたよ。
龍之介は犀星さんに愛されているね」
「ありがとう恭、犀さんは僕の旦那様だからね。
妻の文と長男の比呂志も認めてくれたから家族公認だよ」
恭は二人の前に一枚の封筒を置いた。
「江口、お前は学生時代からの友人を傷つけ、猿渡、お前は今は亡き漱石先生の名を汚した罪は重いぞ。河越風骨先生は文壇の重鎮だ。
室生犀星さんの先輩であり、僕も尊敬する先生だ。
この告訴状は正式なものだから裁判所に提出すればお前たちは文壇の立場どころか社会的に抹消されるだろう」
淡々と告げる恭は正に法の番人そのものだ。
「わ、悪かった、あの頃、どうしても、龍之介がほしくて……」
「僕も、江口先生の誘いに乗ってしまい……芥川さん、すみませんでした」
今更ながらに謝る二人を僕は冷ややかな目で見ていた。
「ああ、猿渡君、僕はもう“芥川”じゃないんだよ。
今の名前は“西園寺龍之介”。
条件を飲むなら告訴は保留にしてもいいよ?」
僕の代わりに恭が告げる。
「一、龍之介及び、龍之介の家族・室生家・恒藤家に関わらないこと。
二、速やかに筆を折り、文壇から姿を消すこと。
三、龍之介が君たちに与えられた苦痛の治療費や慰謝料を全額支払うこと。
四、以上の条件を一つでも破った場合、あるいは龍之介に対して少しでも誹謗中傷を行った場合は、即刻この告訴状を裁判所に提出し、刑事罰と民事賠償の両面で徹底的に追い詰める。
ほら、返事はどうした?」
学生時代から、恭は優しい部類の人間が“悪”に対しては冷徹な面を見せる。
二人は恭が出した合意書に震える手で署名しカフェを出て行った。
半年とかからずに全ての“復讐”を終えられたのは犀さん・恭、そして風骨先生のおかげだ。
――
一ヶ月後、僕は犀さんの許可を得て、新思潮の仲間たちを呼び、出生から僕の名字が変わるまでは経緯を話し、江口と猿渡の僕への所業も
室生家と芥川改め、西園寺家の新たな家族の形も話した。
「江口が龍之介に!?」
新思潮の仲間たちは当然、江口を知っている。
「猿渡って漱石先生の門下生だったよな?」
久米正雄も僕と一緒に漱石先生の門を叩いた一人だ。
「そうだよ、江口と手を組んでいて、
江口曰く、僕がほしかったらしいよ。
猿渡は江口の言いなりだった……」
寛は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「江口の野郎、俺の前では平然と文学の話しをしていたくせに、裏で龍之介に性暴行を働いていたなんて!!」
「寛、怒ってくれてありがとう。
だけど、犀さんと恭、河越風骨先生のおかげで全て解決したから大丈夫だよ」
数時間後、宴はお開きとなり、皆が帰って行った。
僕は“西園寺龍之介”として生きていく。
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