室生犀星の後悔

華愁

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第二話 僕の秘密

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「実は僕には“前世”の記憶があるんだ。」  
  
芥川君が訝しげに眉間にしわを寄せた。  
  
「前世……?」  
  
「“前世”では僕が上野に出張に行っていた間に
君は自ら死を選んでしまった後だった……」

僕は思い切って言葉を続けた。

「信じてもらえないかもしれないが……

僕は、君の死を知っているんだ。

新聞で、そして駆けつけた時には
もう……間に合わなかった」

芥川君はしばらく黙り込み、煙草の箱を指で弄んでいた。
細い煙が揺れながら立ち上る。

「――奇妙な話だな、犀星君。

だが、君がわざわざこんなことを口にする以上、
冗談ではあるまい」

その声音には嘲りも冷やかしもなかった。

ただ疲れきった心が、
僕の必死さを受け止めようとしているのが分かった。

僕は身を乗り出した。

「だから、今度こそは君を止めたいんだ。

君の苦しみも、絶望も、すべて理解できるわけじゃない。
でも、僕は……“君を失った痛み”を知っている」

芥川君はふっと笑みを漏らした。

だがその笑みは、どこか諦念に似ていた。

「なるほど。前世で僕はもう死んでいたのか……

君がそんな記憶を持っているというなら、
僕の終わりもまた、定められたものなのかもしれん」

「違う!」僕は強く首を振った。

「定められてなどいない! 

僕は歴史を変えるためにここにいるんだ」

芥川君の目が、はじめてわずかに揺らいだ。

その瞳の奥に、かすかな迷いの色が
見えた気がした。
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