室生犀星の後悔

華愁

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第三話 やり直しの意味

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「僕は、僕はね、“前世”の記憶が
頭の中に走馬灯のように
流れ込んできた時、泣いた。

何で、あの日、
僕は出張に行ってしまったんだろうと……

だから、今、こうして芥川君と
話せていることが嬉しいんだ」

僕は胸の奥にずっと澱のように
沈んでいたものを吐き出すように言った。

「――君にもう一度会えたことが、奇跡みたいなんだ。

君が生きて、目の前にいる。

それだけで、僕は救われている」

芥川君は静かに僕を見つめた。

その瞳は、疲労と諦めを滲ませながらも、
どこか遠くで光を探しているようだった。

「犀星君……君が泣いたというその走馬灯とやら。

それは“僕が死んだ未来”の記憶なのか?」

「そうだ」僕は頷いた。 

「けれど、それはもう過去じゃなく、
ただの“可能性”にすぎない。

僕は今度こそ君を助けたい。

死ぬなんて……そんな未来を繰り返させはしない」

芥川君は煙草に火をつけ、深く吸い込んだ。
白い煙が静かに流れ、夏の光の中で揺れる。


「……助けたい、か。

だが犀星君、僕はね、長いこと“死”のほうを
救いだと思ってきたんだ。

生きるのが、こんなにも辛いとは思わなかった」

僕は机に両手を置き、彼を見据えた。

「それでも、君がここにいる限り……

僕は何度でも説得する。

芥川君、君は僕にとってただの友ではない。

僕の文学の源であり、かけがえのない同志なんだ」

その言葉に、芥川君の眉がわずかに震えた。

ほんの一瞬、彼の心が揺らいだのを、僕は確かに感じた。

(――まだ間に合う。この世界では、きっと)
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