室生犀星の後悔

華愁

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第二十一話 露見❬芥川龍之介視点❭

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久しぶりに身体を重ねた翌朝、僕たちは軽い口付けをし、
衣服を整えて居間に行くと若い男性がいた。          
          
「室生先生、おはようございます」          
          
「静原君、おはよう。朝からどうしたんだい?」        
        
彼は誰だろうか?        
        
「龍之介君は初めてだね。        
        
僕の門下生の一人、静原泰生君だよ。静原君、
彼は芥川龍之介君、もちろん、知ってるよね。」      
      
僕はそこまで有名人じゃないんだけどな。      
      
「もちろん、存じ上げております!!

 実は、ご確認したいことがありまして……」      
      
そう言って、静原君は鞄から      
新聞を取り出した。    
    
その見出しには、芥川龍之介の長男・芥川比呂志が
文学賞受賞、落選し、それを妬んだ男が襲いかかるも、
室生犀星が庇い無傷。と一面に載っていた。

あの日の出来事が新聞の一面に載っている。

「状況としては間違ってないけど、
龍之介君とは昔からの仲だし、比呂志君は
僕の弟子でもある。

弟子が襲われて庇わない師匠はいないだろう?」  

犀星君の一切の感情を思わせない淡々とした
口調に僕は黙るしかなかった。            
            
「お弟子さんを庇うとはなんとも、
室生先生らしいですが、 
 お怪我の方はもう大丈夫なのですか?」            
            
「新聞の日時を見たまえ、一ヶ月もなんだから、
とっくに治っているさ。

それで、朝から来たのは新聞の
確認がしたかったのかい?」          
          
「いえ、実は……ある一部で室生先生と芥川先生が……

その……“恋仲”なんじゃないか、と噂がありまして……」

内心、焦っている僕とは裏腹に犀星君は落ち着いている。    
    
「どこから流れた噂か知らないが、間違いなく、
僕と龍之介君は“恋仲”さ。愛し合ってる。

それと、先程の新聞の件だが、
愛する人の子供を庇うのは当たり前だ」

静原君は何度か瞬きをした。      
      
「噂は事実だったんですね……わかりました。

他言無用にいたします」

静原君は一礼して帰って行った。          
          
「龍之介君」          
          
名前を呼ばれて振り向くと、無言で深い口づけをされた。        
        
「ん、犀星君……朝から、また、犀星君がほしくなってしまうから……」  
  
「朝食後、また、身体を繋げようか」

本当に、犀星君には敵わないな。

「昨夜みたいに、ね?」

「それは、昨夜みたいに、激しいのがいいってことかい?」

はっきりと、言われてしまうと、恥ずかしい。

「うん……深い所まで……犀星君がほしい……」

「龍之介君は可愛いね。わかった、朝食後、
今度は起き上がれないくらい、激しくしてあげるよ」

その言葉だけで身体が熱くなる。

朝の柔らかな光の中で、犀星君の目が優しくもあり、どこか艶めかしく光る。

「……もう、朝から我慢できそうにないよ……」

小さな声が自然と漏れ、僕の頬が熱くなる。

犀星君はそんな僕を見て、軽く笑みを浮かべ、指先で僕のあごをそっと持ち上げた。

「我慢する必要はないよ、龍之介君。君が望むなら、僕は君を何度でも抱く」

その囁きに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。

僕の手も自然と犀星君の胸に触れ、心臓の鼓動が早まるのを感じた。

「朝食、早く済ませよう……そのあと、すぐに……」

僕の声は震えながらも、意志は確かだった。

犀星君は軽く頷き、僕の手を握り返す。

二人きりの時間が、僕たちを待っている。

昨日の夜よりも、もっと深く、もっと激しく、
互いの温もりを確かめ合うひとときが――間もなく訪れるのだ。

――

寝室の扉が閉まると、世界は二人だけのものになった。

身体を重ね合うたびに、熱と甘さが入り混じり、息が絡む。

「……もう、我慢できないよ……っ」

僕の声に応えるように、犀星君は唇を重ね、手を僕の背中から腰へ滑らせた。

その動きに合わせ、僕も自然に身体を寄せる。互いの体温が一層強く伝わる。

一度目の快感が体を貫いた直後も、犀星君は優しく、
しかし確実に僕を求め続ける。

「龍之介君、今度はもっと……深くまで……」

その言葉と同時に、僕の奥まで彼の温もりが届き、
体中の神経が歓喜に震える。

「あっ……あぁ……犀星君……」

思わず声を漏らし、息が詰まるように荒くなる。

息を整える暇もなく、また唇が触れ、舌が絡み、指先が肌を這う。

そのたびに甘く激しい波が何度も押し寄せ、
僕はただ喘ぎながら身を委ねるしかなかった。

「ほら……君の声、全部聞かせて……」

彼の低く囁く声が、耳の奥まで熱く響く。

僕は声を漏らし、身体を弓なりに反らせ、彼の動きに合わせる。

「あっ……あっ……んっ……」

快感のたびに短く震える声が漏れ、朝の光が差し込む寝室に、
僕たちの吐息と体温が混ざり合い、空気は熱で震えている。

二度、三度と快感の波を重ねても、犀星君は決して手を緩めない。

「龍之介君、君をこんなにしたい……朝からこんなに欲しいなんて……可愛い」

その囁きに、僕は恥ずかしさと快感で全身が痺れる。

やがて、身体も心も限界に近づく中、二人の動きはさらに激しく、
しかし確かに愛情深く交わり続ける。

甘く、激しく、絡み合う呼吸と声が、
二人だけの時間を無限に延ばしていくようだった。

気づけば、朝の光の中で何度も身体を重ね、抱き合い、
互いの存在を確かめ合った後、僕は彼の胸に顔を埋め、静かに吐息を整える。

「はぁ……あぁ……」

軽く息を漏らしながら、まだ熱を帯びた身体を感じる。

犀星君も僕の背中に手を回し、優しく撫でながら、
少し熱を帯びた眼差しで見下ろしていた。

「龍之介君……君といると、朝からでも何度でも欲しくなるよ」

その言葉に、僕は自然と笑みを零した。

朝から激しく交わり合った二人の身体は、甘くも深い充足感で満たされていた。
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