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三十一話 多加志の才能開花と戦争と新しい家族❬芥川龍之介視点❭
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芥川家と室生家、全員で暮らし初めてから
月日が経ち、多加志も大学生になった。
比呂志は新しいことに挑戦するんだと
芸能界に飛び込み、俳優のオーディションに
応募したりしながらも夜な夜な、執筆も続けていた。
そして、驚いたことに多加志にも文才があったらしく
四人という作品を僕たちに見せてくれた。
「なるほど、この書き方や言い回しは、
龍之介君にそっくりだね」
犀星君に指摘されて、もう一度、読んでみると
確かに、全体の文章構成は僕に似ている。
「俺の文章構成はパパに似ているけど
多加志は父さんに似たんだな」
比呂志が感慨深そうに多加志の作品を読んでいる。
「兄としても、作家としても、弟に負けていられないな。
俳優業も手を抜くつもりはないけどね」
そんな話をした数ヶ月後、多加志が徴兵されるとは
この時は誰も予想していなかった。
ーー
「大丈夫、ちゃんと帰ってくる。
四人もちゃんと世に出したいし、兄さんの活躍も見たいし。
父さん・パパ、母さん・ママ、
兄さん、朝子ちゃん、也寸志、朝巳、行ってきます」
なぜ、“学生”が出陣しなければならないのか……
政府はなぜ、“戦争”など始めたのか、そして“一般市民”や“若者たち”が
巻き込まれなければならないのか……
妻たちも、犀星君も、也寸や朝巳、朝子ちゃんも
不安や悲しみを湛えた表情をしている。
今や、文学は贅沢だと禁止され、僕や犀星君始め、仲間たちは
収入源がない状態だったが
どうにか、凌ぎ、昭和二十年、八月十五日、終戦。
敗戦したが、これでまた、平穏が戻ってくるだろう。
二週間後、多加志が帰ってきて、家族全員で安堵のため息をついた。
駅には息子や夫、兄弟の帰りを待っていた人々がごった返していた。
そんな中、僕はふと人混みの向こうに多加志の姿を見つけた。
制服は少し色あせ、肩には戦地で使った鞄が斜めにかかっている。
しかし、その瞳は変わらず鋭く、そして温かかった。
「多加志!」
母親二人は多加志を抱き締めた。
「母さん・ママ、苦しいよ。
父さん・パパ、兄さん、朝子ちゃん、也寸志、朝巳、ただいま」
その時、多加志と同じ制服を着た隣にいた男性が驚いた表情をした。
「えぇと、多加志……訊いてもいいか?」
おそらく、多加志の呼び方に疑問を覚えたのだろう。
「呼び方の話か? 大丈夫だ。
無事に帰還できた祝いに家族を紹介させてほしいが
さすがに、駅じゃ他の人々の邪魔だから家に行こう。
戦地で同じ部隊にいた遊馬剛だよ」
遊馬君を紹介してくれた多加志。
「初めまして、遊馬剛です……」
やはり、多加志の呼び方が気になっているのだろう。
「とりあえず、家に帰ろう」
犀星君の合図で僕たちは自宅に向かった。
「剛、いらっしゃい」
多加志が玄関を開けて遊馬君を招き入れた。
「すごい、豪邸だな……」
「九人家族だし、父さんとパパ、兄さんは作家だから
それぞれの書斎があるし、妹は女の子だから一人部屋。
それから、父さんと母さんの寝室とパパとママの寝室。
部屋数からして、これくらい広くないとね」
遊馬剛は少し驚いた表情で辺りを見回した。
「本当に……九人も一緒に住んでいるとは思えないほど落ち着いた空間だね」
多加志が嬉しそうに言った。
「うちの家族は皆、優しくて穏やかだから
家の中も落ち着いた雰囲気になるのかも。
さてと、さっきの話しだが、とりあえず、家族の紹介からさせてくれ。
まず、両親の芥川龍之介と文。実兄の比呂志と実弟の也寸志。
義父母の室生犀星さんととみ子さん。
義妹の朝子ちゃんと義弟の朝巳。
実父と実母を“父さん”、“母さん”。
義父と義母を“パパ”、“ママ”。って呼んでるんだ。
……これは、うん、言ったら剛が混乱するな」
言葉を濁した多加志に僕と犀星君は本当のことを言ってしまっていいと告げた。
「実は、“父さん”と“パパ”は“恋人同士”なんだ……」
「ちょっと待て多加志、恋人同士とは……?」
まぁ、“既婚者”で“男同士”で“恋人同士”と言われても困惑するのは普通だが
僕も犀星君もこの関係を恥だと思ったことはない。
「そのままの意味さ。だけど、これが、俺の家の“家族の形”なんだ。
理解しろとかわかってほしいとか言うつもりはないけど
戦地で死地を一緒にくぐり抜けた遊馬には知ってほしかったんだ」
戦友の“家族の形”に遊馬君は戸惑っている。
「普通なら……嫌悪感を抱くことなんだろう……
けど、多加志が戦地で、“大好きな家族の所に帰るんだ”って
言っていたのを踏まえると、戦友の“家族の形”を否定できない」
多加志の友人が戸惑いつつも、受け入れてくれたことに
僕たちはほっとした。
「ま、この家にいる間は遊馬も“家族”だから
緊張しないでのんびり過ごせ」
多加志は戦友の肩を組み、目だけで僕たちに同意を求めてきた。
「そうだね、多加志君の言う通りだ。
多加志君・遊馬君、よく、無事に帰ってきてくれたね。お帰り」
犀星君は優しい眼差しで二人を見た。
「さあさあ、夕飯にしましょう」
文ととみ子さんが夕飯を作り始めた。
「ママ、バームクーヘン風卵焼きが食べたい」
多加志のお願いにとみ子さんが嬉しそうに笑った。
「はいはい、ちょっと待っててね。うちの家族は
皆、あれが好きよね」
とみ子さんは手際よく卵をフライパンに流し込んだ。
隣では文が煮物と味噌汁を作っている。
「家族っていいな……俺の家族は先の戦争でいなくなってしまったからな」
遊馬君の呟きに多加志は戦友の手を握りながら言った。
「そうだったな……
なら、これからは、この家にいればいい」
「さすがに、それは迷惑だろう?
住む所ならちゃんと探すから大丈夫だ」
遠慮する遊馬君に兄弟の中で唯一、紅一点の朝子ちゃんが言った。
「剛お兄ちゃんも一緒に暮らすの?」
純粋な年下の女の子の質問に遊馬君はたじたじだ。
「提案してるのは俺なんだから剛さえよけりゃ一緒に住もう。
別にずっとじゃなくても、お前が“そんな顔”を
しなくなるまでは、な?」
確かに遊馬君は駅で会った時から心に影があり
家に来てからも所在無さげだった。
「二人とも戦地から帰ってきたばかりで、
遊馬君は先の戦争でご家族を亡くしたから
この場所は居心地が悪いのかもしれないけど、
それは、君がまだ、“人の温もり”を求めている証でもあるんだよ」
犀星君は遊馬君にゆっくりと語りかけた。
「この家には“芥川家”と“室生家”という二家が
一緒に住んでいて、僕と龍之介は恋人同士。
端から見れば可笑しな家だけど、さっき、多加志君が
言ったように、これが、この家の“家族の形”なんだ。
血の繋がりだけが全てじゃない、心の繋がりもまた、“家族”だから
遊馬君も、少しの間、この家で羽休めをすればいい」
“羽休め”という表現が犀星君らしい。
「そうよ、折角、戦地から生きて帰ってこれたのだもの
亡くなった本当のご家族も、剛君が元気で幸せになることを
空の上からきっと願っているわ」
とみ子さんも遊馬君の手を握って語りかけた。
僕も犀星君も“血の繋がった家族”とは縁がなかった。
犀星君は“妾の子”だからと産まれてすぐに寺に預けられ
養母には愛してもらえなかったと言っていたし
僕は実母の死後、伯父夫婦の養子になったけど
やっぱり、愛されなかった。
だけど、僕たちは出会った。年上の犀星君は優しくて包容力があって
いくつになっても、僕を甘やかしてくれる。
「遊馬君が心から笑顔になれる日まで
何ヵ月でも何年でもいてくれて構わない」
僕は心からそう思った。
「龍之介君の言う通りだよ。遊馬君は
今、心が疲弊している状態だから
ゆっくりゆっくり、この家で修復していけばいい」
遊馬君の目にはまだまだ少し、迷いがあった。
「本当に、いいんですか?」
僕と犀星君を交互に見ながらがら訊ねてきた。
「もちろん、僕たちは大歓迎だよ」
“家族”が増えるのは喜ばしいことだ。
「ありがとうございます……」
ーー
夕飯を終え、全員が風呂も済ませて
遊馬君、改め、剛君を客間に案内し
妻たちや子供たちも寝た後、
僕と犀星君は居間に戻ってきた。
「龍之介君、戦争は終戦しても、人々の心する傷は
そうそう、癒えるものではないと思うんだ」
犀星君は湯飲みに目線を向けたまま言った。
「そうだろうね……多加志も剛君も、前線にいたのかはわからないけど
例え、前線にいなかったとしても
戦場にいるだけで精神が疲弊してしまうだろう。
剛君は実の家族を亡くしてしまったから
尚更、心の傷はより深いだろうね」
隣にいる犀星君に寄りかかりながら目を瞑って答えた。
「一時期、文学が贅沢なんて言われていたけど、
“言葉”は心を癒すと思うんだ。
僕も犀星君も“作家”だ。
だから、“剛君のため”に二人で書かないかい?」
僕がそう言うと、犀星君は少し驚いたように目を瞬かせた。
やがて、穏やかな微笑みを浮かべて頷く。
「龍之介君らしい提案だね。
それじゃ、“剛君のため”の僕と龍之介君の共同作品を書こう。
題名は…羽休めにしよう」
僕たちは“新しい家族”のために、二人で筆を執った。
月日が経ち、多加志も大学生になった。
比呂志は新しいことに挑戦するんだと
芸能界に飛び込み、俳優のオーディションに
応募したりしながらも夜な夜な、執筆も続けていた。
そして、驚いたことに多加志にも文才があったらしく
四人という作品を僕たちに見せてくれた。
「なるほど、この書き方や言い回しは、
龍之介君にそっくりだね」
犀星君に指摘されて、もう一度、読んでみると
確かに、全体の文章構成は僕に似ている。
「俺の文章構成はパパに似ているけど
多加志は父さんに似たんだな」
比呂志が感慨深そうに多加志の作品を読んでいる。
「兄としても、作家としても、弟に負けていられないな。
俳優業も手を抜くつもりはないけどね」
そんな話をした数ヶ月後、多加志が徴兵されるとは
この時は誰も予想していなかった。
ーー
「大丈夫、ちゃんと帰ってくる。
四人もちゃんと世に出したいし、兄さんの活躍も見たいし。
父さん・パパ、母さん・ママ、
兄さん、朝子ちゃん、也寸志、朝巳、行ってきます」
なぜ、“学生”が出陣しなければならないのか……
政府はなぜ、“戦争”など始めたのか、そして“一般市民”や“若者たち”が
巻き込まれなければならないのか……
妻たちも、犀星君も、也寸や朝巳、朝子ちゃんも
不安や悲しみを湛えた表情をしている。
今や、文学は贅沢だと禁止され、僕や犀星君始め、仲間たちは
収入源がない状態だったが
どうにか、凌ぎ、昭和二十年、八月十五日、終戦。
敗戦したが、これでまた、平穏が戻ってくるだろう。
二週間後、多加志が帰ってきて、家族全員で安堵のため息をついた。
駅には息子や夫、兄弟の帰りを待っていた人々がごった返していた。
そんな中、僕はふと人混みの向こうに多加志の姿を見つけた。
制服は少し色あせ、肩には戦地で使った鞄が斜めにかかっている。
しかし、その瞳は変わらず鋭く、そして温かかった。
「多加志!」
母親二人は多加志を抱き締めた。
「母さん・ママ、苦しいよ。
父さん・パパ、兄さん、朝子ちゃん、也寸志、朝巳、ただいま」
その時、多加志と同じ制服を着た隣にいた男性が驚いた表情をした。
「えぇと、多加志……訊いてもいいか?」
おそらく、多加志の呼び方に疑問を覚えたのだろう。
「呼び方の話か? 大丈夫だ。
無事に帰還できた祝いに家族を紹介させてほしいが
さすがに、駅じゃ他の人々の邪魔だから家に行こう。
戦地で同じ部隊にいた遊馬剛だよ」
遊馬君を紹介してくれた多加志。
「初めまして、遊馬剛です……」
やはり、多加志の呼び方が気になっているのだろう。
「とりあえず、家に帰ろう」
犀星君の合図で僕たちは自宅に向かった。
「剛、いらっしゃい」
多加志が玄関を開けて遊馬君を招き入れた。
「すごい、豪邸だな……」
「九人家族だし、父さんとパパ、兄さんは作家だから
それぞれの書斎があるし、妹は女の子だから一人部屋。
それから、父さんと母さんの寝室とパパとママの寝室。
部屋数からして、これくらい広くないとね」
遊馬剛は少し驚いた表情で辺りを見回した。
「本当に……九人も一緒に住んでいるとは思えないほど落ち着いた空間だね」
多加志が嬉しそうに言った。
「うちの家族は皆、優しくて穏やかだから
家の中も落ち着いた雰囲気になるのかも。
さてと、さっきの話しだが、とりあえず、家族の紹介からさせてくれ。
まず、両親の芥川龍之介と文。実兄の比呂志と実弟の也寸志。
義父母の室生犀星さんととみ子さん。
義妹の朝子ちゃんと義弟の朝巳。
実父と実母を“父さん”、“母さん”。
義父と義母を“パパ”、“ママ”。って呼んでるんだ。
……これは、うん、言ったら剛が混乱するな」
言葉を濁した多加志に僕と犀星君は本当のことを言ってしまっていいと告げた。
「実は、“父さん”と“パパ”は“恋人同士”なんだ……」
「ちょっと待て多加志、恋人同士とは……?」
まぁ、“既婚者”で“男同士”で“恋人同士”と言われても困惑するのは普通だが
僕も犀星君もこの関係を恥だと思ったことはない。
「そのままの意味さ。だけど、これが、俺の家の“家族の形”なんだ。
理解しろとかわかってほしいとか言うつもりはないけど
戦地で死地を一緒にくぐり抜けた遊馬には知ってほしかったんだ」
戦友の“家族の形”に遊馬君は戸惑っている。
「普通なら……嫌悪感を抱くことなんだろう……
けど、多加志が戦地で、“大好きな家族の所に帰るんだ”って
言っていたのを踏まえると、戦友の“家族の形”を否定できない」
多加志の友人が戸惑いつつも、受け入れてくれたことに
僕たちはほっとした。
「ま、この家にいる間は遊馬も“家族”だから
緊張しないでのんびり過ごせ」
多加志は戦友の肩を組み、目だけで僕たちに同意を求めてきた。
「そうだね、多加志君の言う通りだ。
多加志君・遊馬君、よく、無事に帰ってきてくれたね。お帰り」
犀星君は優しい眼差しで二人を見た。
「さあさあ、夕飯にしましょう」
文ととみ子さんが夕飯を作り始めた。
「ママ、バームクーヘン風卵焼きが食べたい」
多加志のお願いにとみ子さんが嬉しそうに笑った。
「はいはい、ちょっと待っててね。うちの家族は
皆、あれが好きよね」
とみ子さんは手際よく卵をフライパンに流し込んだ。
隣では文が煮物と味噌汁を作っている。
「家族っていいな……俺の家族は先の戦争でいなくなってしまったからな」
遊馬君の呟きに多加志は戦友の手を握りながら言った。
「そうだったな……
なら、これからは、この家にいればいい」
「さすがに、それは迷惑だろう?
住む所ならちゃんと探すから大丈夫だ」
遠慮する遊馬君に兄弟の中で唯一、紅一点の朝子ちゃんが言った。
「剛お兄ちゃんも一緒に暮らすの?」
純粋な年下の女の子の質問に遊馬君はたじたじだ。
「提案してるのは俺なんだから剛さえよけりゃ一緒に住もう。
別にずっとじゃなくても、お前が“そんな顔”を
しなくなるまでは、な?」
確かに遊馬君は駅で会った時から心に影があり
家に来てからも所在無さげだった。
「二人とも戦地から帰ってきたばかりで、
遊馬君は先の戦争でご家族を亡くしたから
この場所は居心地が悪いのかもしれないけど、
それは、君がまだ、“人の温もり”を求めている証でもあるんだよ」
犀星君は遊馬君にゆっくりと語りかけた。
「この家には“芥川家”と“室生家”という二家が
一緒に住んでいて、僕と龍之介は恋人同士。
端から見れば可笑しな家だけど、さっき、多加志君が
言ったように、これが、この家の“家族の形”なんだ。
血の繋がりだけが全てじゃない、心の繋がりもまた、“家族”だから
遊馬君も、少しの間、この家で羽休めをすればいい」
“羽休め”という表現が犀星君らしい。
「そうよ、折角、戦地から生きて帰ってこれたのだもの
亡くなった本当のご家族も、剛君が元気で幸せになることを
空の上からきっと願っているわ」
とみ子さんも遊馬君の手を握って語りかけた。
僕も犀星君も“血の繋がった家族”とは縁がなかった。
犀星君は“妾の子”だからと産まれてすぐに寺に預けられ
養母には愛してもらえなかったと言っていたし
僕は実母の死後、伯父夫婦の養子になったけど
やっぱり、愛されなかった。
だけど、僕たちは出会った。年上の犀星君は優しくて包容力があって
いくつになっても、僕を甘やかしてくれる。
「遊馬君が心から笑顔になれる日まで
何ヵ月でも何年でもいてくれて構わない」
僕は心からそう思った。
「龍之介君の言う通りだよ。遊馬君は
今、心が疲弊している状態だから
ゆっくりゆっくり、この家で修復していけばいい」
遊馬君の目にはまだまだ少し、迷いがあった。
「本当に、いいんですか?」
僕と犀星君を交互に見ながらがら訊ねてきた。
「もちろん、僕たちは大歓迎だよ」
“家族”が増えるのは喜ばしいことだ。
「ありがとうございます……」
ーー
夕飯を終え、全員が風呂も済ませて
遊馬君、改め、剛君を客間に案内し
妻たちや子供たちも寝た後、
僕と犀星君は居間に戻ってきた。
「龍之介君、戦争は終戦しても、人々の心する傷は
そうそう、癒えるものではないと思うんだ」
犀星君は湯飲みに目線を向けたまま言った。
「そうだろうね……多加志も剛君も、前線にいたのかはわからないけど
例え、前線にいなかったとしても
戦場にいるだけで精神が疲弊してしまうだろう。
剛君は実の家族を亡くしてしまったから
尚更、心の傷はより深いだろうね」
隣にいる犀星君に寄りかかりながら目を瞑って答えた。
「一時期、文学が贅沢なんて言われていたけど、
“言葉”は心を癒すと思うんだ。
僕も犀星君も“作家”だ。
だから、“剛君のため”に二人で書かないかい?」
僕がそう言うと、犀星君は少し驚いたように目を瞬かせた。
やがて、穏やかな微笑みを浮かべて頷く。
「龍之介君らしい提案だね。
それじゃ、“剛君のため”の僕と龍之介君の共同作品を書こう。
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僕たちは“新しい家族”のために、二人で筆を執った。
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