どうか、僕を嫌いになって

華愁

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エピローグ

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双子が三歳になった頃、寛君と川端君に見つかった。

「龍之介……なのか?」

「おっと、見つかってしまったね」

“雲雀”は焦ることなくゆったりとした口調で話した。

「とうさま、誰?」

“雲雀”の血を受け継いだ娘・凛と
僕の血を受け継いだ息子・澪が
初めて会う大人を不思議そうに見ている。

「こちらはとうさまたちの昔の知り合いよ」

「かあさま~」

双子は母であるとみ子に抱き着いた。

「流石、僕と“雲雀”の血を受け継いでいるだけあって、
子どもたちは母親のとみ子が大好きだね」

「そうだね、娘の凛は僕の、
息子の澪は犀星君の血を分けて
とみ子さんが産んでくれたからね」

“雲雀”は僕の手を握った。

「血を……分けた!?

龍之介がとみ子さんを抱いたというのか!?」

「その名前で呼ばれるのは好まないんだが、
今は気にしないことにしよう。

そうだよ、とみ子さんの希望でね。

寛も川端君も、“潔癖で高潔な文豪・芥川龍之介”は
親友の妻と関係を持ったりしないと
言いたそうだね? 

おや? そういえば、恭には大分前に知らせたけど
寛たちに話さなかったんだね」

くすくすと笑う“雲雀”を僕は抱き寄せた。

「井川が知っていた…?」

「恭には双子が産まれる前にも
産まれてからも手紙を出して
返事も来ているよ。

ふふ、恭はね、僕が居なくなった時、
最初から犀星君の所にいるのを
わかっていたから別段、心配もしなかったし
探し回ろうともしなかったんだよ」

「恭の奴、なんで……」

井川君が知りながら寛君たちに知らせなくことに憤っている。

「恭は僕が“文壇”という高すぎる空を
飛び回“危うさ”と“限界”に気付いていたから
あえて、見逃してくれたのさ。

恭を責めるようなことはしないでおくれ」

雲雀は僕に寄りかかりながら寛君たちを見ている。

「とみ子さん」

川端君に呼ばれたとみ子は優雅な足取りでこちらにきた。

「私が“龍之介さん”に抱かれたことが信じられませんか?

そうですね、“普通”の方には理解しがたいかもしれませんね。

ですが、今の“龍之介さん”は“文壇”という高すぎる空から
“地上”に降りたか弱い“雲雀”にすぎません」

毅然とした態度で言いはなったとみ子に二人はたじろいだ。

「僕が犀星君ととみ子さんに“抱かれる”こともあれば、
犀星君と僕でとみ子さんを“抱く”こともある。

それが僕らの“常識”なのさ」

話していると久米正雄君と松岡譲君が来た。

「やっぱり…… 菊地君と川端君は妙に正義感が強いから
心配して追い掛けてきてよかった……」

「おや、久米君と松岡君も僕を連れ戻しにきたのかい?」

警戒心強めの小鳥の言葉に久米君と松岡君は
気にすることもなく話しを続けた。

「違うよ、龍之介が幸せなら僕も久米も何も言わない」

「久米も松岡も、この状況が異常だと思わないのか!?

友人夫婦の家に居座り、あまつさえ、その友人の妻を抱いて
子を成したなんて……」

「僕たちは全て“同意”の上でしている。

とみ子さんを抱いたのも本人に頼まれたというのはあるが
犀星君が許したから僕はとみ子さんを抱いたのさ。

僕と犀星君に同時に愛されたとみ子さんは
凜と澪を産んでくれたんだよ。

僕を“本当の家族”にしてくれて
ありがとう、とみ子さん」

「改めて、お礼なんて言われると照れてしまうわね。

私は家族が増えるのは大歓迎ですからね」

とみ子は僕と“雲雀”をまとめて抱き締めて来た。

「この後、また、お二人で私を蹂躙してくださいな。

お二人の子を産めるのは至高の喜びなのよ」 

とみ子が“雲雀”に口づけをするのを僕は笑って見ていた。

「全く、いつの間にとみ子まで欲張りな小鳥になったんだい?」

「駄目かしら?」

“雲雀”の唇を離し、今度は僕に口づけした。

「駄目なわけないさ、僕と犀星君で沢山、
愛でてあげるよ。ね、犀星君?」

「もちろんだとも、妻の頼みを聞くのは夫の務めだからね。
 
凜と澪を寝かしつけたら
僕と“雲雀”が余すことなく愛でてあげるよ。

僕たちの雌鳥さん」

「ふふ、あらやだ、雌鳥だなんて、最高で至高な呼び名よ」

うっとりとした表情で喜んでいるとみ子。

「全く、まだ、外なのにそんな表情をして……

“雲雀”、とみ子は我慢できないみたいだ」

「そうみたいだね、発情期の猫のようだ」

「んもう、雌鳥やら発情期の猫やら
二人して、そんなに、褒めないでくださいな」

艶めかしいとみ子の表情に寛君も川端君も顔を真っ赤にし
久米君と松岡君は苦笑していた。
 
「前からとみ子さんは肝が座っていると思っていたが
そんな艶やかさまで隠していたとは……

“雲雀”、二人に沢山、愛してもらいな。

それから、今度は僕と松岡君と恭を交えて“友人”として話がしたい」

「恭はともかく、久米君と松岡君は僕を引摺り出そうとしないのかい?」

「俺も久米もそんなことはしない。

そこの二人が野暮なのさ。菊地、川端、お前らは
いつしか<文豪・芥川龍之介>を神格化して龍之介が“人”だと
忘れかけていたんじゃないか? 龍之介の妻・文さんもしかりだ。

<文豪・芥川龍之介>の妻という地位に拘り過ぎて
龍之介本人が徐々に壊れていっていることに気付いていなかった!!

お前らも、文婦人も、なぜ、龍之介自身を見ない!?

壊れた龍之介の傷を癒したのは
室生先生ととみ子さんだってわかれよ!!

あのまま、書き続けていたら龍之介は自害さえ厭わなかっただろうさ!!」

松岡君の叫びは閑静な住宅街によく響いた。

「龍之介、いや、“雲雀”、この無粋で野暮な二人は
さっさと連れて行くから、いつか、久米と井川と友人として話してくれ。

室生先生・とみ子さん、
友人を救っていただきありがとうございました」

松岡君は僕たちにお辞儀をした。

「わかった、友人としてなら歓迎だよ」

四人を見送り家の中に入った。

「松岡君と久米君が味方だとは気付かなかった……」

「井川君や松岡君、久米君のような人が
本当の友人なんだよ。

さて、些か外に居すぎてしまったね。

凜と澪を寝かしつけたら僕たちの雌鳥さんを
たっぷりと可愛がってあげないとね」

数十分後、凜と澪が寝たのを確認した。

「やっと、雌鳥さんを愛でられるね。

ほら、僕たちの雌鳥さん、全部脱いで」

従順な雌鳥さんは“雲雀”の言葉に素直に従って裸体を晒した。

「犀星さん・“雲雀”さん、早く……

お二人の楔を打ち込んで乳嘴にゅうし
いじめてください!!」

せっかちな雌鳥さんの右側の乳嘴にゅうし
僕が噛み、左側の乳嘴にゅうしを“雲雀”が指で
力一杯ぐりぐりと捏ねた。

乳嘴にゅうし、もっと、強く……

それから、お二人の楔を同時にほしいの!!」

「せっかちなだけじゃなく貪欲でもあるとは
少々困った雌鳥さんだ。

“雲雀”、準備はいいかい?」

「もちろんだとも」

僕たちはとみ子の膝を左右に割り、望み通り、
蜜壺に僕たちの楔を同時に押し込んだ。

「ぁぁぁぁぁ!!」

二人分の楔を受け入れている蜜壺は大変だ。

「気持ちよさそうでなによりだ」

とみ子の呼吸が整わないうちに“雲雀”が楔を押し込んだ。

「んん!!ぁ、ぁ、は、ぁ、“雲雀”さん、
子宮口、沢山、叩いて……

犀星さんにも、沢山、子宮口、叩かれたいの!!」 

「んぎぃ~ 子宮口潰される……!!潰されてる~

お願い、お二人の子種を余すことなく
私の胎内なかにください!!

お二人の子を生み育てたいの!!」

「それはますます、僕の筆の走りが早くなりそうだ」

“雲雀”に目配せをして二人同時に果てた。

「嬉しいわ、今度も双子かしら? 三つ子かしら? 楽しみだわ」

母親の勘だったのか、一年後、とみ子が産んだのは
女の子二人と男の子一人の三つ子だった。

「今度は四つ子かしら?」

三つ子の出産も終えたばかりだというの、全く……

「それは流石に、僕の筆で一本じゃ養いきれないよ……」

「なら、久しぶりに僕も書こうかな」

雲雀”の言葉に僕も出産を終えたばかりの通りみ子も驚いた。

「“龍之介”が筆を執るのかい?」 

久しぶりに“名前”で呼んだ。

「うん、僕も家族の一員だし
新しい家族が増えたからには
犀星君にばかり
負担を背負わせられないよ」

三つ子で唯一男の子を
抱っこした”雲雀“は
かつての<文豪・芥川龍之介>ではく
家族のために再び筆を執ることを選んだ
<父親の龍之介>がそこにいた。

三つ子の名前は美紗・花菜・朔也にした。

美紗と花菜は僕の、朔也は龍之介の血を引いている。

“龍之介”が再び筆を執り早数ヶ月。 

無名の出版社から刊行した長編小説は
瞬く間に人気を博し三ヶ月で
一万部を越える売れ行きだった。

しかし、これが、“龍之介”の本来の家族に
見つかる呼び水となってしまったのだ。

龍之介の書いた、温かくも歪んだ物語。

刊行して半年、文さんが室生家に
怒鳴り込んできた。

話したのは寛君だろう。

「全く、近所迷惑な上に子どもたちが
昼寝から起きてしまうだろう」

玄関を開けると鬼の形相の文さんと
申し訳なさそうな顔した比呂志君がいた。

「おや、文、久しぶりだね。

比呂志も久しぶり」

「やっぱり、父さんは最初から
室生さんの所にいたんだね。

わぁ可愛い、“父さんととみ子さん”の子なんだね。

目元が父さんや俺に似てる」

「そうだよ、とみ子さんは僕と犀星君の子を
産んでくれたんだ。

この子はこの子は三つ子の末っ子だよ。

上の二人は双子だよ」

「とみ子さんは凄いね、
朝子ちゃんと朝巳君も産んでるわけだから
七人も産んだんだね。

母さんのことは気にしなくていいし、
父さん、ずっと、お金振り込んでくれてたでしょう?

だから、俺たちが貧しい思いはしなかった。

あの頃より顔色も肉付きもよくなったし
何より目に光が宿ってて安心した」

「比呂志、あんた、何を言っているの!?

父親を奪われたのよ!?

あまつさえ、親友の妻となんて
不潔で不義理な行為……」

龍之介は三つ子の末っ子を僕に預け
文さんの正面に立った。

「確かに“世間”から見れば不潔で不義理なんだろうけど、
僕たちは“三人”で愛を育み
その過程で子どもができたに過ぎない。

もっと不潔で不義理なことを
教えてあげると僕が犀星君に
“抱かれる”時もあるんだよ。

比呂志、本当にすまない……」

「いや、いいんだよ。

だって、どこに居ようと室生さんに“抱かれ”ようと
とみ子さんを“抱こう”と父さんが
俺と多加志と也寸志の父親なことは
変わらないんだから。

母さんは父さんを動物園の動物たちみたいに
柵に閉じ込めて<文豪・芥川龍之介>という
偶像を作り上げて、
【見て、私が作ったの。綺麗でしょう?】って見せびらかしたいの?

そんなだから、気付かないんだよ。

睡眠薬の空き瓶にも
ごみ箱から溢れかえる書き損じの原稿にも。

母さんが父さんの書斎に
最後に入ったのはいつ?

いつだって、家の中の掃除は女中任せだったじゃないか……

一日でも自分で父さんの部屋を掃除していたら違和感に気付いていたはずだし、
結局、母さんは父さんの“気持ち”を
知ろうとせず、“心”を見ず
<文豪・芥川龍之介>の妻という
地位に酔いしれていただけなんだよ。

父さん・室生さん・とみ子さん、
今度、多加志と也寸志を連れて
妹と弟たちに会いに来てもいい?」

「僕は“そっち”は帰れないけど
比呂志も多加志も也寸志も愛してる。

いつでも待ってるよ」

「ありがとう、父さん。

室生さん・とみ子さん、お騒がせしました」

放心状態の文さんを連れて比呂志君は帰って行った。

数ヶ月後、比呂志君が多加志君と也寸志君を連れて室生家に来た。

更に数年後、也寸志君が五人きょうだいの三番目で
三つ子一番上の美紗に恋をするのはまた別の話。
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