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番外編① 再会は残酷にも突然に……
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僕の名前は芥原桜龍。
十八歳の高校三年生。
“芥川龍之介”の生まれ変わりで
前世で願った通り、“女性”になった。
だけど、犀星君の生まれ変わりには出会えいない。
……犀星君は多分、僕に会いたくないのだろう。
前世、犀星君が“共に歩く権利がほしい”と
言っていた意味を本当は理解していた。
だけど、僕は犀星君に何度も“所有権”をと迫った……
最後、犀星君の❰声❱が聴こえなくなった時、絶望した。
だから、あの瞬間、無理やり、点滴を抜いて非常階段に向かった。
ーー
そして、今世でも、
前世と同じく❰心の声❱が聴こえる。
クラスメートには<クール>とか
<何考えているか分からない>とか言われている。
「お前ら、席につけ。
今日は教育実習生の先生を紹介する」
担任の伊角先生が呼び、
入ってきた若い男性。
「室野彩流です。
よろしくお願いしますね。
❰え、龍之介君? でも“女の子”だし……❱」
ふいに聴こえてきた❰声❱に僕は泣きそうになった。
犀星君……
あんなに、恋い焦がれていた人の
生まれ変わりに会えたのに、僕は怖くなった。
今の僕は“女性”で高校生で……
犀星君が<田端の王様>と言ってくれた“芥川龍之介”じゃない……
「室野先生、すみません、体調が悪いので
保健室に行ってきます……」
性別も外見も変わった僕に犀星君は
会いたくないかもしれないし……
前世から変わらないのは“年の差”だけ。
逃げるように保健室に向かう途中で
僕は前世の自分の最期を思いだして苦笑した。
旅行先の病院の非常階段で手摺に寄りかかって、
春風にあたりながら目を瞑ったことを。
再会できて嬉しいはずなのに、僕はまた、逃げてしまった……
保健室に入ると保健医の花野井先生が
驚いた顔をした。
「芥原さん、真っ青よ!? 大丈夫!?」
「大丈夫です……
ただ、ずっと会っていなかった“好きだった人”と
何の前触れもなく再会して僕は逃げるように
保健室にきてしまいました……」
実は保健医の花野井先生は、
前世での姉でやっぱり、前世の記憶をもっている。
一応、保健室だから敬語で話しているけど
二人きりの時は前世の話し方だ。
「逃げてきたってことは、
今日きた教育実習生の先生は“室生さん”なのね?」
「うん……❰声❱もはっきり聴こえたし
前世の知り合いで、僕を“龍之介君”と
呼ぶのは犀星君だけだったから……
だけど、怖いんだ……
きっと、犀星君は怒ってる……
記憶があるなら、尚更、
僕に会いたくないかもしれないし……」
あんな、勝手な死にかたをした僕を犀星君は……
「記憶があるからっていうのもあるんでしょうけど、
あんたは姿形が変わっても、
性格が前世のままね……
“龍之介”の最期は“室生さん”が
伝えにきてくれたから知っているけど
“室生さん”は怒ってはいなかったし、謝られたわ。
‹‹大切な弟である龍之介君を
不本意な形で死なせてしまって
申し訳ありませんでした››ってね」
「犀星君が姉さんに謝った……?」
犀星君の❰声❱が聴こえなくなって、
“所有権”を拒まれたことに絶望して
“死”に逃げたのは僕なのに……
「えぇ、“室生さん”はずっと“龍之介”のことを愛していたわ」
「姉さん、嘘だよね?」
花野井先生は首を横に振った。
「ねぇ芥原さん……んん、“龍之介”、
室野先生が“室生さん”なら
きちんと、話した方がいいわ」
わかってるけど……
「たとえ、“犀星君”が怒ってなかったとしても
僕はやっぱり、怖い……」
「怖い気持ちはわかるけど、
話さなければ始まりもしないし
終わりもしないわよ」
花野井先生もといい、姉さんの言うことは間違っていない。
「前世、生まれ変わったら
“女性”になって、“犀星君の生まれ変わりの
“お嫁さん”になりたいと願った……
十八年間、“犀星君の生まれ変わり”を
待っていたはずなのに、
実際に現れたら怖くなったんだ……
“芥川龍之介”として見てほしいのか
“芥原桜龍”として見てほしいのか
わからなくなってしまった……
ただ、“犀星君の生まれ変わり”が
現れなかったら、一生独身で誰とも
付き合わないって決めてたんだ……」
その時、保健室のドアがノックされた。
花野井先生が僕に訊いた。
「開けていい?」
「うん、怖いけど……
姉さん、職員室戻らないでね」
しょうがないわね、と苦笑した姉さんが
保健室のドアを開けた。
「室野先生……」
「芥原さん、先程、かなり真っ青な顔を
していたけど、大丈夫?
❰女の子だけど、やっぱり、龍之介に似てる❱」
「大丈夫だよ。
“犀星君”、久しぶりだね……」
声が震えないよう意識して、あえて、“犀星君”と呼んだ。
「……え!?
❰やっぱり……?❱」
「ほら、“丸聞こえ”だから
全部、言葉で言ってほしいな。
今世も❰心の声❱が聴こえるんだよ。
前世、“犀星君”を困らせて
あんな身勝手な死に方をしてごめん……
魂は“芥川龍之介”だけど、
今世は“芥原桜龍”っていうんだ。
また、初めましてから始めたい」
「もちろんだよ。
“龍之介君”……違うね、“桜龍さん”、
“結婚”を前提にお付き合いしてください」
け、結婚前提!?
嬉しいけど、怖い……
「本当にいいの?
前世、“犀星君”を散々、困らせたのに?
僕が“犀星君”に“所有権”をもらってほしいと言ったのは
“犀星君だけのものになりたかった”からだ……
確かに“犀星君になら支配”されてもいい”という気持ちも
少なからずあったけど、
一番は、“繋がって”いたかったんだ……
ただ、“繋ぎ止め方”がわからなかったから
“所有権”という言葉で縛ろうとした……
前世の僕は臆病で後ろ向き思考で
“犀星君”だけが唯一の光だったんだよ」
僕は“犀星君”に依存していた。
「“龍之介君”……
僕の方こそ、“所有権”という言葉を
頭から否定するんじゃなくて、
ちゃんと聞けばよかったと
君が死んでから後悔したよ。
もう一度、言う。
僕と“結婚”を前提にお付き合いしてください、“桜龍”。
できれば、僕のことも名前で呼んでほしい」
「うん、
“彩流くん”の“婚約者”にしてください。
前世の“犀星君”も
今世の“彩流くん”も愛してる」
僕たちの時間が再び動き出した。
十八歳の高校三年生。
“芥川龍之介”の生まれ変わりで
前世で願った通り、“女性”になった。
だけど、犀星君の生まれ変わりには出会えいない。
……犀星君は多分、僕に会いたくないのだろう。
前世、犀星君が“共に歩く権利がほしい”と
言っていた意味を本当は理解していた。
だけど、僕は犀星君に何度も“所有権”をと迫った……
最後、犀星君の❰声❱が聴こえなくなった時、絶望した。
だから、あの瞬間、無理やり、点滴を抜いて非常階段に向かった。
ーー
そして、今世でも、
前世と同じく❰心の声❱が聴こえる。
クラスメートには<クール>とか
<何考えているか分からない>とか言われている。
「お前ら、席につけ。
今日は教育実習生の先生を紹介する」
担任の伊角先生が呼び、
入ってきた若い男性。
「室野彩流です。
よろしくお願いしますね。
❰え、龍之介君? でも“女の子”だし……❱」
ふいに聴こえてきた❰声❱に僕は泣きそうになった。
犀星君……
あんなに、恋い焦がれていた人の
生まれ変わりに会えたのに、僕は怖くなった。
今の僕は“女性”で高校生で……
犀星君が<田端の王様>と言ってくれた“芥川龍之介”じゃない……
「室野先生、すみません、体調が悪いので
保健室に行ってきます……」
性別も外見も変わった僕に犀星君は
会いたくないかもしれないし……
前世から変わらないのは“年の差”だけ。
逃げるように保健室に向かう途中で
僕は前世の自分の最期を思いだして苦笑した。
旅行先の病院の非常階段で手摺に寄りかかって、
春風にあたりながら目を瞑ったことを。
再会できて嬉しいはずなのに、僕はまた、逃げてしまった……
保健室に入ると保健医の花野井先生が
驚いた顔をした。
「芥原さん、真っ青よ!? 大丈夫!?」
「大丈夫です……
ただ、ずっと会っていなかった“好きだった人”と
何の前触れもなく再会して僕は逃げるように
保健室にきてしまいました……」
実は保健医の花野井先生は、
前世での姉でやっぱり、前世の記憶をもっている。
一応、保健室だから敬語で話しているけど
二人きりの時は前世の話し方だ。
「逃げてきたってことは、
今日きた教育実習生の先生は“室生さん”なのね?」
「うん……❰声❱もはっきり聴こえたし
前世の知り合いで、僕を“龍之介君”と
呼ぶのは犀星君だけだったから……
だけど、怖いんだ……
きっと、犀星君は怒ってる……
記憶があるなら、尚更、
僕に会いたくないかもしれないし……」
あんな、勝手な死にかたをした僕を犀星君は……
「記憶があるからっていうのもあるんでしょうけど、
あんたは姿形が変わっても、
性格が前世のままね……
“龍之介”の最期は“室生さん”が
伝えにきてくれたから知っているけど
“室生さん”は怒ってはいなかったし、謝られたわ。
‹‹大切な弟である龍之介君を
不本意な形で死なせてしまって
申し訳ありませんでした››ってね」
「犀星君が姉さんに謝った……?」
犀星君の❰声❱が聴こえなくなって、
“所有権”を拒まれたことに絶望して
“死”に逃げたのは僕なのに……
「えぇ、“室生さん”はずっと“龍之介”のことを愛していたわ」
「姉さん、嘘だよね?」
花野井先生は首を横に振った。
「ねぇ芥原さん……んん、“龍之介”、
室野先生が“室生さん”なら
きちんと、話した方がいいわ」
わかってるけど……
「たとえ、“犀星君”が怒ってなかったとしても
僕はやっぱり、怖い……」
「怖い気持ちはわかるけど、
話さなければ始まりもしないし
終わりもしないわよ」
花野井先生もといい、姉さんの言うことは間違っていない。
「前世、生まれ変わったら
“女性”になって、“犀星君の生まれ変わりの
“お嫁さん”になりたいと願った……
十八年間、“犀星君の生まれ変わり”を
待っていたはずなのに、
実際に現れたら怖くなったんだ……
“芥川龍之介”として見てほしいのか
“芥原桜龍”として見てほしいのか
わからなくなってしまった……
ただ、“犀星君の生まれ変わり”が
現れなかったら、一生独身で誰とも
付き合わないって決めてたんだ……」
その時、保健室のドアがノックされた。
花野井先生が僕に訊いた。
「開けていい?」
「うん、怖いけど……
姉さん、職員室戻らないでね」
しょうがないわね、と苦笑した姉さんが
保健室のドアを開けた。
「室野先生……」
「芥原さん、先程、かなり真っ青な顔を
していたけど、大丈夫?
❰女の子だけど、やっぱり、龍之介に似てる❱」
「大丈夫だよ。
“犀星君”、久しぶりだね……」
声が震えないよう意識して、あえて、“犀星君”と呼んだ。
「……え!?
❰やっぱり……?❱」
「ほら、“丸聞こえ”だから
全部、言葉で言ってほしいな。
今世も❰心の声❱が聴こえるんだよ。
前世、“犀星君”を困らせて
あんな身勝手な死に方をしてごめん……
魂は“芥川龍之介”だけど、
今世は“芥原桜龍”っていうんだ。
また、初めましてから始めたい」
「もちろんだよ。
“龍之介君”……違うね、“桜龍さん”、
“結婚”を前提にお付き合いしてください」
け、結婚前提!?
嬉しいけど、怖い……
「本当にいいの?
前世、“犀星君”を散々、困らせたのに?
僕が“犀星君”に“所有権”をもらってほしいと言ったのは
“犀星君だけのものになりたかった”からだ……
確かに“犀星君になら支配”されてもいい”という気持ちも
少なからずあったけど、
一番は、“繋がって”いたかったんだ……
ただ、“繋ぎ止め方”がわからなかったから
“所有権”という言葉で縛ろうとした……
前世の僕は臆病で後ろ向き思考で
“犀星君”だけが唯一の光だったんだよ」
僕は“犀星君”に依存していた。
「“龍之介君”……
僕の方こそ、“所有権”という言葉を
頭から否定するんじゃなくて、
ちゃんと聞けばよかったと
君が死んでから後悔したよ。
もう一度、言う。
僕と“結婚”を前提にお付き合いしてください、“桜龍”。
できれば、僕のことも名前で呼んでほしい」
「うん、
“彩流くん”の“婚約者”にしてください。
前世の“犀星君”も
今世の“彩流くん”も愛してる」
僕たちの時間が再び動き出した。
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